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・2013年02月20日(水)

前日鎌倉の現場では雪が降っていた。葉山から渋谷まで行けるかどうか。設計者が行けなくても、職人さんたちが現場で仕事ができれば良いと思っていた。葉山を出ると思っていたほど、雪による交通傷害は無く1時間強で現場に到着。やれやれ。寒い中、現場は生き活きと動いていた。

昨年末までに、建物の傾斜を修正する工事の方法は様々に検討していた。ひとつめは、基礎の下に現場発泡ウレタンを注入し建物を持ち上げてしまうという方法。これは基礎が無筋基礎かつ布基礎のために、基礎がばらばらになる、かつ想定通りに建物をあげられない。との理由で早々に断念。残念。

次に、曳き屋さんによる揚屋。曳き屋は一般的にはほとんどなじみがない。裏方さんの仕事。最近の事例では、横浜銀行の曳き屋工事。建物を原型そのままにひっぱって移動してしまう仕事だ。建築の中でも特殊中の特殊でなかなかお目にかかれないが、実は特異なだけに引っ張りだこらしい。一昨年、東日本大震災で被災した南三陸町の古民家を再生させたいという支援させていただいていたお父さんからの依頼で、葉山の曳き屋さんとプロジェクトを組もうと思っていたが、勝手に南三陸町がその建物を解体してしまいお流れになったという悲しい結末もあったことが思い出される。建築をそのまま動かす曳き屋さんというプロの手で、傾いた建物を天に向かってまっすぐに直してしまおうという計画を企てた。

それも難航。きちんとした基礎であれば、基礎の下にたくさんのジャッキを入れ持ち上げるのだが、無筋の布基礎なのでそれをやったら基礎がばらばらになり、建物をあげられないという。なので基礎はそのままでレベル修正しないこととし、土台から上をジャッキで上げてそのまま新しい基礎で固めてしまおうという結論になった。その方針には、基本的にわたくし設計者も賛同し、新しく造る基礎の耐圧盤と既存基礎の緊結方法を充分検討することで再生の道を正しく方向付けることとした。昨年末までにはほぼその方針が決まっていた。

様々なスタディを経て、沈下抑制の杭工事が終了し、次のステップである傾いた木造2階建てを修復すべく揚屋が実行された。



職人さんが皆、建物のきしみ音で動くミュージシャンのようだ!




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