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・2012.09.04(火)

はじめて事務所に伺い全体の構想をお聞きする。このプロジェクトの目的は、事務所内に防音ルームを併設することと現在地よりもビジネスに都合の良い立地へ移動する2点とのこと。事務所には常時10人前後が在籍しパソコンに向かって執務している。そのベースとなるのは築40数年経過した木造2階建ての個人住宅、1階床面積は約10坪、2階床面積約10坪の合計20坪。はたして要求を全て満たせるのか即時には判断がつかなかった。しかし、知恵を出し検討を繰り返すことで見えてくることは確信していた。

また、不動産契約時、契約後2ヶ月の間に4点の不具合が見つかった場合は売り主が修理改修の義務を負うという一般的な中古物件売買契約の取り決めを結んでいたので、それらを重点的に調査することも依頼された。それらは「構造木部の不具合(腐れ)」「シロアリ被害」「雨漏れ」「排水不良」の4点である。いずれかを発見した場合、9月末までに売り主に通知しなければならない。調査のみを依頼された場合は有料業務となるが、リフォーム全般の設計を依頼された場合は設計業務の一部として行うこととしている。

一通りお話をお聞きした後、現場に向かった。翌週に施工業者同行で現場調査に入るための下見を行う。7月に初めて訪れたときと見え方が違った。それは、不動産物件のアラを探す視点からリクエストに応えるための空間素材としての視点へと見る方の気持ちが変化したのだ。

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・2012.09.12(水)

施工業者と同行し、一部解体して「4点の不具合チェック」とプロジェクトの全体計画に必要な調査を行う。4点の不具合チェックの他に、建物の構造がそのまま使えるのか、どの程度補強することで事務所としての使用に耐えうるのか、どの程度要求条件を満たすために改造することができるのかを総合的に判断するために調査を行った。

まず、4点チェックの一つ目は、シロアリ被害のチェック。設計者や施工者が経験で判断するよりもプロの判断がより正確と判断。シロアリが繁殖し駆除が必要であれば見積もりしてもらうためにシロアリ駆除のプロを現場に呼んでいた。浴室脇の和室の畳をあげると明らかにシロアリが繁殖していた様子が見えた。が。プロが判断するに、かつて繁殖しようとしてシロアリがやってきた形跡はあるが蟻道やその周辺が乾燥しているため現在は生息していないだろうという。他の想定しうる部位を一部解体しながらシロアリを探すも繁殖している様子は見られなかった。ただ、大がかりに解体して調査しているわけではないので、全てのシロアリ被害状況は確認できていないが、一部目視する限り現時点で手を打つ必要性はなさそうだと判断した。

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次に、4点チェックの雨漏れチェックと構造体のを行う。2階天井の一部を開口し、天井裏を目視調査。小屋裏を方々にヘッドライトの明かりを当てて木部の腐れや雨水のあとがないかをチェックする。3人の目で確認するも、それらは見当たらない。次に外壁にひび割れが入っている部分の内壁を一部解体する。外壁のひび割れから内部に水が入り内装で覆われていて漏水がわからなくても解体すればその様子は目視確認できるのだ。あやしいところ数カ所の壁を壊してチェックするものの漏水は確認できなかった。結果、雨漏れと水による構造木部の不具合(腐れ)は見当たらなかった。

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4点チェックの最後に排水不良の確認。水洗トイレ、キッチンの水を流すも異常は確認できず。それまで、何度かトイレは使用していたけれど不具合は無かったので、問題なしとした。

次に、懸念していた不等沈下の調査。一番高そうな床レベルを基準として、レーザーレベル測定器を使用して計測する。床レベルの傾斜を足の裏で感じていただけに、測定結果がとても興味深い。1階床で9ポイント計測。基準点を±0として、そこからポイント地点のレベル差を水平ポイント距離で割る。その値が大きいところで8.5/1000。2階は5ポイント計測。大きい値で4.87/1000。1階よりは2階の床傾斜が緩い。この数値の意味するところは、私のブログ「中古住宅を買うときに【不等沈下】」の記事で詳細に説明している。ポイントを拾っておく。

3/1000 未満の勾配:構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性(以下A)は低い
・3/1000 以上 6/1000 未満の勾配の傾斜:Aは一定程度存する
・6/1000 以上の勾配の傾斜:Aは高い

つまり、1階の床レベルを測定する限り、構造的な欠陥のある可能性は高いという想定ができる。不動産の売買契約では4点チェック以外は売り主に責任は無く現状渡しという契約となっている。この不等沈下についての責任は全くグレーゾーンなのだ。
また、壁の倒れも測定した。1階壁面で、17.8/1000。2階壁面で、11.4/1000。柱の倒れ具合は、新築時点でもいくらか存在する。どんなに厳格に施工しても多少の倒れはつきものだ。しかし、数字が意味するものは、建物が傾斜していることをはっきりと示している。設計者として、この現象は前提とした上で、計画していく必要がある。次にはもう少し詳しい調査を行い、この不等沈下が途中なのか終了しているのか。建物を使用していくにあたってどういう手当が適切か。適切な判断が必要になってくる。そのまま放置で、見なかったことにして前に進むというわけにはいかない。

4点チェックと不等沈下の調査が終わった。その内容を包み隠さず、レポートにして依頼者に報告することになる。

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