●2000.04.20

「佐山さん好みの大工さんを用意しました!」
「ううう・・・」
その大工さんのところに平野さんと同行した。

結構勘違いされることが多い。
木をいっぱい、それも、荒々しい木の肌を露出することが多い私の設計は、ひとつ間違うとそば屋の成金趣味に勘違いされることが多いのだ。
私の基本は、やはりモダンだ。

モダン建築の歴史は、地面からいかに軽やかに離陸できるかということだったと思う。
細く、シンプルに、構造にとらわれない、伝統にとらわれない、新しい何かができないかと苦心する・・・。
これが、モダン建築だと思っている。

しかし、やっぱり、建築って、大地にしっかりと根を下ろし、その土地にしかできないバナキュラーなものであると思う。(バナキュラー=土着)
形がバナキュラーなのではなくて、たまたまそこにいた建築家が、そんなことを考えていたから、その近辺はそうなった!
でも、いいと思うのだ。
バナキュラーでない建築家は淘汰されるし、それでいいと思う。

だから、基本はモダンを目指しつつも、大地に根を下ろす建築をつくりたいと思っている。
だから、一家に一本、ぶっとい大黒柱だし、外壁の色は、そこの土の色。
そして、屋根には土を乗っけて、大地の代わりに屋根が、緑をはぐくんでいる。

Y建設工業が紹介してくれていた大工さんは、私とウマが合うのかもしれない。
というのは、生きていくための仕事をやるだけの大工さんではないようだったからだ。
生きていくための仕事と、生きてゆくための仕事を自分なりに割り切って、バランスをとっている大工さんのような感じがした。

生きていくための仕事と、生きてゆくための仕事は、違うと思う。
勝手に、理屈をつけるが、い:ゆ=パッシブ:アクティブ=しかたなく:みずから=まあいいか:やるぜ!、のような感じがしている。
今回の仕事は、大工さんの気持ちが入るかどうかで大きく変わってくるような気がしていた。
普通の家の1.5倍多く構造材を使う、ということは、大工さんの仕事が多いということなのだ。

大工さん次第で、この工事は大きく変わる。

どうやら、「桃太郎、キジをつかまえて、いざ鬼ヶ島へ!」となったようだ。

●2000.04.20-2

おおむね、役者はすべてでそろったようだ。
すこし、ホッとして、夕方事務所に平野さんと帰ってきて、いきなり焼酎モードに切り替わってしまった。
午後6時頃、つまみなしで、焼酎をくぴくぴ。

勝手にしたら・・という事務所の鈴木を横目に入れながら、くぴくぴ。

Y平野さんは、私たちが大工さんのところから、引き上げたあとも、いろいろと交渉していた。
いつこちらに戻ってくるのか、ちょっとだけ心配しながら、くぴくぴやっていた。

午後7時半頃、当くぴくぴ隊に合流した。

Y平野氏も交じり、くぴくぴはじめて、いろんな話をした。
それは、施主である平野総理に官房長官である私がお伺いをたてて、Y平野建設大臣に話しているようであり、単なる酔っぱらいが、しらふではいえないことをこのごに及んで、言いッ放しているようでもあり、不思議な、しかも熱い議論だった。
涙を流して、官房長官は総理に訴えたような気がするが、その内容は今定かではない。
どうやら、熱い、総理、官房長官と青ざめた建設大臣、秘書官は、夜更けの午前2時過ぎまで、同席していたようでした。

「なにやってんだかね〜〜」と鈴木秘書官から翌朝きかされた。
「ふ・〜〜〜〜・・・?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

もとえ!
その官房長官と総理のやりとりは、やはり、生きてゆくためのすまいづくりの核心なので、書くことにする。

血のにじむようなコストコントロールを私とY平野氏でやり遂げた。
それに対して、まだ、コストアップになる要素をぶつけてくる、施主の平野さん。

困ったもんだ!と思っていた。

見方を変えれば、大きな人。
底なしに、大きな御施主さんとも見ることができる。
我々のあくせくしている姿を見ても、ひるまない!
ひるむどころか、さらなる要求をぶつけてくる!

しかし、そんなあくせくしている我々に正面切って、「泣いてくれ!」というのだ。
泣くって何だろうと思った。
もっと、努力してくれということなのか?
あんたのために、努力しているにもかかわらず、もっと努力せよと言うことなのか?

官房長官としての、堪忍袋の緒が切れた!
これだけ、建設大臣が努力しているのに、その下のものたちが気持ちが入ってきているのに、それはいったいどういうことなんですか!と食ってかかったのだ。

総理は大きく見えるのだが、実は、大臣以下に無理を強いていたのだ。
というよりも、契約書にはんこを押していたのだが、そのはんこの内容を無視して、支払時期を自分の都合のいいように変更を強いていたのだった。
そんな、総理の姿を見ていて、官房長官としては、大臣たちに申し訳がなかった。
だから、そんな総理では誰もついてきません!官房長官の私でさえ!と直訴したのでした。

涙ながらに!

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