建築地は、湯の街、湯河原町を見下ろす高台に立地する。
建て主との出逢いは、1999年夏にまで遡る。
その夏、自然素材をテーマにした3ヶ月間の企画展示会を共催した。
(左下の「このサイト内を検索」で"生き活き素材フェア"を入れて検索すると関連記事が多数表示されます。)
そこでは、毎週、左官材の塗り壁体験や、柿渋塗り、木工教室などを行っていた。
その体験イベントに熱心に通ってこられていたのである。
イベントが終わり、建て主ご夫妻は、本格的に土地探しをはじめられた。
熱海からはじまり、小田原より南の伊豆半島東海岸を、熱心に探されていた。
これはと思う土地があると、私も同行して、望まれているすまいにふさわしいかを判断させていただいた。
いくつか候補が挙がっては流れるということが続いた。
しかし、最終的に決められたこの場所は、よほど縁があったのだろう、私の判断を仰ぐこともなくご夫婦で即決されたようだ。
つくづく、土地との出逢いは縁であると痛感させられた。
迷い無く決められる出逢いこそ、縁がある証なのだろう。
若い建て主ご夫婦は、自分たちでできるところはDIY(Do it yourself)を希望された。
体験イベントでの学習が実るときである、私も積極的にDIYを取り入れることにした。
まず必要最低限の空間を用意し、家族の成長に合わせて、すまいも成長し続けるプランを考えた。
建ちあがった空間は、可能性に満ちあふれ、どんな家族変化にも対応可能な、豊かな空間となった。
湯河原を見下ろすそのロケーションにも負けないパワフルな空間が、より一層生活を豊かなものにしてくれるだろう。
「竣工時に全てを完成させない。」(未完=みかん ∴ みかんの家)
「家族の成長と共に、変化し続けるすまい。」
簡単なことだが、これほどまでに可能性を感じさせる生活の舞台になるとは、設計時点で想像し得なかった大きなうれしい誤算である。
出会ったときは、かわいい坊やとの3人家族だった。
すまいができあがったときは、娘さんが家族の一員として増え、4人家族になっていた。
ますます、変化していくだろうこの可能性に満ちた家は、家族の波瀾万丈をどこまで包み込んでいくのか、永い目で見守っていきたい。
[2003.01.31] 追記:
先日、内装壁の珪藻土がずいぶん仕上がったので、遊びに来てくださいとのメールがあった。
久しぶりに、成長したその姿を愛でに遊びに行きたいと思っている。
■ 物件概要 |
設計 :(株)生活空間研究所 一級建築士事務所 佐山希人 鈴木香住
構造 :地上2階木造軸組工法(簡易ラーメン構造+壁式構造)
設計期間:2000.10〜2001.08
施工期間:2001.09〜2002.03
施工 :自分ノ家工房 清水雅示
● デザインコンセプト |
『みかんの家』
● このすまいの特徴 |
パノラマ大広間、木質系簡易ラーメン構造、屋上テラス、ガレージ、フィリップ・スタルク、ガルバリウム鋼板(外壁)、船舶用照明、船舶用丸窓、丸太庇、業務用キッチン、柿渋(DIY)、珪藻土(DIY)、浴室タイル張り(DIY)、バスルームFRP防水素地仕上げ(のちにDIYで一部仕上げ)
▼ 業務用キッチン、船舶用丸窓、みかんの壁 |
▼ ダイニングキッチンからパノラマ大広間を見る |
▼ ダイニングキッチンからガレージ屋上テラスを見る |
▼ パノラマ大広間から湯河原を見下ろす |
▼ ガレージ屋上から湯河原を見下ろす |
▼ ガルバリウム鋼板、木そして船舶用丸窓。それ以上何も足さない何も引かない潔さが粋 |
▼ 周囲からは『アルミの家』と親しまれている |
● プロセス・ドキュメント |
▼ 上棟 |
▼ 上棟(ご主人がお清め、奥様はカメラマン ※お二人の本職はグラフィック系のデザイナーです) |
▼ 引き渡し後、DIYが始まる |
▼ みかんのバスルームとフィリップ・スタルク |
● [2003.04.08] 追記:1年半ぶりに訪問する |
▼ しっかり珪藻土が仕上がっていた。柿渋を塗った柱も良い感じ |
▼ 湯河原が生活の一部にとけ込んでいた |
▼ 住み心地をお聞きする |
▼ フィリップ・スタルク |
次のステップは薪ストーブ設置の予定。
どんどん、進化する『みかんの家』からは目が離せない。
生活を楽しむ姿勢が好循環を生むようだ。
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