毎日食べても飽きないものを一つだけあげよと聞かれたら迷うことなくラーメンをあげるだろう。
また、無人島にもっていく唯一の一年分の食べ物はと聞かれてもやっぱりラーメンがまず浮かぶ。
何故そこまで私を惹きつけるのかわからない。
あえて理屈っぽく解明を試みる。

第一ポイントは一杯のラーメンでいかようにも腹ごしらえができること。
普通の腹の空き具合で大盛り、小腹がすいているときは並。
それも腹の空き具合でスープを全部飲んだり、少し残したり無段階の調整が可能だ。

また、TPOでラーメンが主役になったり脇役になったりと、都合よくスタンスを変えることができるのもラーメンならではだ。
ラーメンライスは、らーめんんが主役。
ラーメン餃子もこの部類。
スキー場のゲレ食(ゲレンデ食堂)の定番、ラーメン&カレーはラーメンが脇役に回ると考える。
カレーで体力を回復しラーメンで体を温めるのである。
このように立場を七変化させるラーメンだがその存在感はやはり大きい。大飯ぐらいのクマにとってはまことに都合の良い食べ物なのだ。

第二に一つのドンブリでいろいろな味が楽しめるのも魅力。
まず「へい!おまちっ!」とドンブリが出てくるとおもむろに蓮華でスープをすくいとる。
ずずっ一とひとすすり。
『おお!』『よしよし!』『こんなもんかな!』『ん!』『まあいいか』店によってまちまち。
そのあと味によっては胡椒やとうがらしをぱらぱらドサドサいれる。
さらに麺に箸をくぐらせ薬味をまんべんなくスープに馴染ませた後、さりげなく麺を口にする。
麺も店によって千差万別だ。
細麺、ふと麺。ストレート麺、縮れ麺。
かたゆで、やわらかめ。
スープとのマッチングで全体の味も変わってくる。
麺を三箸ほど口に運んだあたりで、そのへんに添えられて『私はまだですか...と』こちらの箸をうかがっているチャーシューやメンマなどの様子も気になってくる。
同じ店でもその時の具合でそれぞれ微妙に味が変わるから無防備に口にすることはできない。
さて、今日のチャーシューのできはどうかなとか、今日もやっぱりおまえはいい味を出してるねぇとか、しっかりとその名脇役の存在を認めながら食い尽くしていくのである。
無人島なんかでは、手に入れられるあらゆる食材が、一つの鍋で食すことが可能になるだろう。
その辺の海にころがっているいろいろな魚介類、山でとれる野草、もし猪なんかが手に入ったら、猪ラーメンである。
考えただけでよだれがでてきて止まらない。
クマと出会ったら熊ラーメン?しかし、さすがのくまごろうでも死んだ振りをするしかないのだろう。

第三に日本全国つづ浦浦にラーメン店があること。
仕事があれば日本全国どこへでも出かけていく。
現地に着くとその土地のラーメンが気になってくる。
出張先の宿に鞄を置くとすぐに飛び出し、自分の嗅覚を頼りにのれんを見て歩く。
当たりはずれはあるものの、当たれば儲け、はずれれば授業料とあきらめる。
一番びっくりしたラーメンは博多のラーメンだ。
まだ、この道に入って間もない頃、博多で何気なく立ち寄ったラーメン屋で『ラーメン!』と頼むといきなり真っ白いスープのラーメンが出てきた。
関東では、ラーメンは醤油味で、九州ラーメンとか豚骨ラーメンとかうたっていない場合は間違いなく醤油なのだ。
『おっ?』と思いながら、箸を進めるとこれがうまかった。
まだ、関東に豚骨ラーメンが進出してきていない20年程前の話である。
事前情報が無く、出会い頭においしいラーメンとはちあわせることほどうれしいものはない。

記:goron (m.sayamaのHN)

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