クマコラム
19990405
半月前近所で解体が始まった。
一部上場企業の所有物。
ひと気もなく最後は息絶え絶えだった。
作者はわからない。
ただ気持ちの入った風情ある洋風建物だった。
一年前、隣に住宅を設計した。
街並みと建築家の心意気を残したく軒裏のデザインをそろえた。
古参の洋館と新米がお揃いで並び私は密かに気に入っていた。
雨の中解体が終わった。
昨日久しぶりに晴れ、ネクタイ正装した人たちが裸にされた敷地に群がっていた。
お客様と建築業者。
それぞれ嬉々として縄を張っていた。
半世紀以上葉山の海を見続けてきた建物の存在を知っているのだろうか。
その息吹が隣の軒裏に息づいていることも。
浮き世の景気が悪い中、葉山の企業所有地が次々と裸にされ粉々にされていく。
建築家の心意気も同時に粉砕されていくのは見るに忍びない......
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