梁の木口に「1935」ときざまれている。
記録によると、設計期間は1934〜1935とある。
70年近く経っている現役の木造建築だ。
感服する。
大好きな建築のひとつなので、軽井沢に行くと必ず訪れる。
好きな理由は、元気がもらえるからだ。
すみずみまで、丁寧に建築家の意志が感じられる。
機能と知性と実用性、全てを兼ね備えている。
いわゆる建築家がつくった写真映りのいい、そらぞらしいモノではないが、祈りの空間にふさわしいいい空気に満ちている。
造り手である大工の顔は見えてこないが、そうとう苦労したはずである。
建築家がスケッチした丁寧なディテールは、しっかりと造り手に伝わったのだろう。
苦労のあとが、ありありとわかる。
発注者の意志、建築家の意志、造り手の意志、みごとに結集されている。
空間を発想するときに、大切にしたいことは「意志」である。
工法、材料、しつらえ、情報が氾濫している現在、誰でも簡単にまねごとはできる。
いいと言われる工法、目的にあった材料、素敵な演出、雑誌の切り抜きを編集することは簡単だ。
外断熱にすると素晴らしい空間ができると勘違いしている工務店経営者もいる。
自然素材を使うと健康な暮らしができると早合点している建て主もいる。
どれも一要素ではあるが、それが全てではない。
使い手と建築家も含めた造り手の「意志」がないと生きた空間は生まれない。
この聖ポール教会は、質素な材料を使いながら見事にそれを物語っている。
▼ コメントする