2年ほど前、毒された牛乳を回収し他の乳製品原料に転用しようとしたY印の報道を見て「いかれているな」と思った。
次に報道されてたのは「詐欺事件」だ。
「前からこわれていたんだ・・・」と思った。
Y印製品の売上が85%減少しているらしい。
それでも記者会見で社長は「Y印ブランドは守りたい」と臆面もなくしゃべった。
生活者の顔が見えていないのだろう、社長含めて社員全員。
道産子の私は、小さい頃からY印ブランドに慣れ親しんだ。
Y印といえば、大手メーカーの安心ブランドだった。
ここに問題があるのだろう。
大企業を支えるがためのゆがんだプライド維持工作、ブランドにあぐらをかいた質の低下。
「大企業のモノだから安心」という神話は見事に崩れている。
しかし、これは今に始まったことではない。
起業→成長→成熟→崩壊、の企業の一生を顕著に表している。
建築専門雑誌「日経アーキテクチャー2002、2-4」にこんな記事もあった。
////「窓のカギに手が届かない」安易な約束が瑕疵の根拠に////
大手住宅メーカーSハウスが告訴されたのである。
原告の小柄な女性は営業担当者に「たいていの要望には応じられる」と言われた。
できあがった住宅は換気扇のスイッチや窓のクレッセントに手が届かないといったもの。
女性は不満をSハウスにぶつけた。
本訴でSハウスは、「プレハブ住宅は、規格の範囲ないでの変更しかできず、身長に合わせたきめ細かい設計や施工はできない」反論したらしい。
また昨年暮れ、ある建て主は大手住宅メーカーS住宅のベテラン営業マンにこんなことを言われた。
「なんでもご要望に応えられます。今すぐに仮契約金100万円を入れてほしい。気に入らなかったら、あとから返金します。」
その話を聞いて「ん?おかしい」と思った。
とりあえず、その営業マンとの接触を断るようにアドバイスした。
不信を感じていた建て主は、何度もしつこく迫る彼を断ち切った。
年が明けると「殖産住宅が民事再生法の適用を申請」と紙面をにぎわせた。
大企業は、企業を成長成熟安定させるために、最大限の営業を行う。
企業活動としては、当たり前のことなのだ。
しかし、当事者は売上本意になってしまうのも事実。
現場担当者は「生活者のためのすまい」よりも、成績、昇進、昇給、リストラ対象外が大切なのだ。
経営者は、「生活者のためのすまい」よりも企業存続、競合企業打倒が、大切なのだ。
Y印、Sハウス、S住宅、根底に同じにおいを感じる。
社内のなかで、生活者に腐心になる社員はどれだけいるだろうか?
そんなことをしたら、真っ先にリストラ対象か?
ブランドに弱い日本人にとって、これらの事件は本質を見極める良いきっかけになるだろう。
住宅建設というジャンルに大企業が存在するのは、日本しかないと聞く。
積水ハウスが20年ほど前にドイツに進出し、撤退した。
地域にあった地域の素材でつくる生活者のためのすまいに企業が参入できなかったのだろうか。
やはり、すまいづくりは誠意ある顔の見える関係の中でしか成立しないだろう。
究極は、近くの手にできる素材で、納得行くまで自分で造ることだ。
そのことが、豊かな地域社会を造り出すことも50年ほど前の日本に学びたい。
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