2003年夏、岡山に帰省中の我々は、妹夫妻とラーメンを食べに行こうと尾道に出掛けた。4年ほど前にも一度、わざわざラーメンを食べに尾道を訪ねたことがあった。その時行ったお店は、行列ができるほどの有名店なのだが、平打ち細麺、濃いめのスープで、ほとんどカップヌードルをラーメンどんぶりで食べているようだった。そんな経験があり、おそらく尾道にはもっとうまい店があるはずだと、道中携帯インターネットで情報をかき集めていた。
ラーメン情報ほど、わかりにくいものはない。記事を書く人によってそれぞれで、うまいという人の味覚の嗜好まで情報開示されていない。行列ができる店と書かれているとつい足が遠のいてしまうものだ。そんな中、手がかりになりそうなキーワードを頼りに「感」を働かせていた。
一般情報を頼りに決めたお店は「つたふじ」という老舗だった。岡山を出て1時間半ほど走り、尾道に到着しかかった時、4年前に同行した「日本全国津津うらうらうまいもの食べ歩き中毒患者」の加藤博士が尾道商店街をうろつき廻り、あるラーメン店を探していたのを思いだした。
思わず、携帯を握り、コンタクトを試みた。
「RRRRRRRR」『加藤です〜』
「おひさしぶり、今何やってんの?」『名古屋で仕事〜(泣)』
「そう、今尾道なんだけど、前に加藤さんが探していたラーメン屋なんて言ったっけ?」
『ええ?尾道?いいなあ〜。その店名前わかんないんだけど、商店街にあって、間口のせま〜〜い店なんだよ。それしかわかんない。』
「ありがとう。じゃあ、探してみるよ」
こころは「つたふじ」と決まっているのだけど、その加藤博士もたどり着けなかった「まぼろしの店」を探したくなってしまった。
JR尾道駅から延びる商店街のはずれに車を止め、アーケードがかかる商店街を観光気分で歩き始めた。8月旧盆のせいなのか、ほとんどのお店は閉まっており良くある地方都市のさびれたアーケード街そのものだった。観光気分の私は、古いファサードに出くわすとうれしくなりシャッターを切るが、地元の人にとっては深刻なのだろう。なにしろ活気がないのである。
横町きょろきょろ、間口の狭い店はどこだと、歩き続けていた。ここのアーケードはかなり長い。30分ほどふらふらしていると、おそらくここだろうとぴんとくる店があった。しかし、むむむ、天ぷらうどん、ざるそば、などのPOPと同列で「中華そば」とあった。店構えだけでは、そそられるものはないが、怪しい迫力が感じられ、羊の皮をかぶったオオカミ的ラーメン店やもしれぬ・・・。
同行していた他3名は、全くそそられないらしく、やはり目星をつけておいた「つたふじ」に行こうとあいなった。というのも、念には念を入れた義弟が、尾道を地元としている知り合いに携帯でおすすめ店を探り入れてくれた。やはりその情報では、数ある中でも地元の人は「つたふじ」とのことだったのだ。私の第六感はくたびれていなかったようだ。
歩くだけの尾道商店街観光を済ませ、商店街中程から海寄りにある「つたふじ」に向かう。途中、雨が降ってきて急ぎ足で、10分ほど歩く。途中、カップラーメン的尾道ラーメン屋の前を素通りするが、雨にも負けず、やはり大行列ができていた。我々も雨にも負けず、傘も差さず、すたすたと目的地にむかう。そこも、小行列ができていて、雨の中でしばし呆然と回転を待つことにした。
20分ほど待ち続け、やっと入ったお店は、カウンターのみで10人も入ればいっぱいのお店だった。一人ずつ、ばらばらにあいたところに通されるためか、ラーメンを待つ客は黙り、ラーメンをつくるおばちゃんおじちゃんも黙り、淡々とした空気が厳かに流れていた。しかし、厨房には、老舗独特の重みある職人的なやる気の地場ができていた。茶髪の兄ちゃんが、同僚と世間話をしながら、タイマー頼りに麺をゆで、あいた隙にたばこをくゆらしている、まるでやる気のない厨房とは全く違った。ラーメンが出てくる前に、がっかりし勝負がつく店も多いものだ。この店は、ラーメンを食べたくなるような食前時間を醸し出していた。
中華そば(並)450円
中華そば(大)550円
うれしい価格設定である。
ラーメンといえども、やはりラーメンなのだ。並モリで1杯500以上のラーメンは、うまくて当たり前。大盛り1杯600円以下のラーメンで、うまいと感服する。ラーメンは美味くて安い庶民の味であってほしいと思うのだ。
しかし、中華うどんって??なんだろう。
やっと登場しました。大盛り中華そば550円。
これが正当派尾道ラーメンなのだろうか。背脂たっぷり、しかし、味さっぱりの醤油ラーメン。見た目は、脂っこそうなのだが、口にすると割とさっぱりとしている。背脂以外、強烈な特徴はないものの、しっかりとだしがきいててシンプルに、美味しい正当派醤油ラーメンだ。
麺は、中細細やや縮れ麺ってところか。この太さの麺だと、茹で加減が勝負で、のびてしまうと全く美味しくなくなってしまう。適度な堅さがあって、美味しく食べられる。このお店の茹で具合も絶妙で、最後の一本まで美味しく食べられた。この街に住んでいたら、二日に1回は、足を運ぶことになるだろう。それくらい飽きのこない味である。
私のラーメンランキングにはかなりの高順位に割り込んできたのだった。
店を出て、この旅の目的は終わり、岡山に向かった。
合計約5時間ほどのラーメン放浪記・尾道編でした。
お気に入り度:★★★★☆(現在不明:★5つで満点)
▼ コメントする