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このイラストのタイトルは『倦怠期の朝食』。事情を知らなくてもくすりとさせられる。大学の卒業論文の挿絵に使った。テーマは、「心理的密度」。人間は見えない固有の領域を持っていてそこに他人が入り込むとストレスを感じる。それを建築計画の規模計画に応用出来ないかという論文。面と向かって相対するときの領域距離が一番大きい。横並びではそうでもない。ビジネスでうまく相手に取り入ろうとするときは面と向かうのではなく、横並びあるいは直角に座ると警戒感が薄れる。また、高額商品を売ろうとするとき、たとえばジュエリー売り場のような場合、ケースに向かって横並びに応対し客に心理的ストレスを与えることなく「やる」のがうまい。夫婦間でもうまくいかなくなったら、間に壁を立ててしまえば「ええぞ!」という漫画だ。


住まいの設計で、クライアントと打ち合わせを行っていると「夫婦の問題」に出くわすことが多い。面白がってはいけないのだが、千差万別。百人百様。十人十色。オンリーワン。いろいろな嗜好がある。それが本来であり、夫婦だから遠慮無く意見を言い合える方が望ましい。少なくとも設計者としては、お互いの主張を目の前で展開してもらった方がありがたい。どう矛盾していてもかまわない。その方が真意を探れるというもの。普通の場合は、意見が食い違ってもそのうち夫婦の力関係で、あるいは思いやりで、はたまた我が強い方の意見に…収斂していくものだ。その収斂していくプロセスを拝見させてもらうと良いアイディアも浮かんで来るというもの。


たまたま、asahi.comで面白い記事を発見。「夫婦の寝室は別々?それとも一緒?」というもの。現在は一緒に寝ているか、別々に寝ているかというアンケート。次に将来はどっちにするかというアンケート。結果は将来的には別々にしたいと思っている男女が多いという結果。詳しくは記事を参照頂きたいが、面白い。理由は、時間帯のずれ、生活のクセの違い、いびき、心地よい温度などなど。新婚のあまい関係のうちは許せるが、経年変化で許容範囲が狭くなってしまうものらしい。また、ふとんとベッドどちらかというアンケートでは、男性は畳、女性はベッドと嗜好がわかれている。日本人的伝統から抜けきれない男と洋風文化にあこがれる女性という構図。それらの悩みを解決するアイディアとして一室の中に和室&ふとんと洋間&ベッドを置き、それをガラスで仕切り「まあ、なんと素敵な解決案」なイラストが紹介されていた。これは、冒頭の『倦怠期の朝食』と同じにしかみえない。まるで、ギャグ。風刺イラストならばそれで良い。

夫婦別室が最終形であり、子どもも含めて全員同じ屋根の下でばらばらに寝るのが、現代日本の家族のある形なのだろう。そしてその先はどう変態していくのか。縄文弥生の竪穴式住居の住人、イヌイット、あるいはパオに住むモンゴル人から見て、現代日本の住居は豊かな状態に見えるのだろうか。いろいろ考えさせられる。


 ■ 非言語コミュニケーション
  エドワード・T・ホール/かくれた次元、ほか

■ かくれた次元
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