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現在リノベーションの計画を進めている。進行中は集合住宅ワンフロアーのリノベーション。動き出しそうな案件は戸建て住宅のリノベーション2件。リノベーションについて考えをまとめてみる。

住宅は大きく分けて二つにわけられる。集まって住むか、家族だけで住むか。集合住宅か戸建て住宅か。どちらのスタイルでも、「安全に」・「自分らしく」・「末永く」住み続けたいという視点は同じだろう。

この中の「安全に」という視点は「すまいは生命を守るための器」であるというあたりまえの視点。阪神淡路大震災以降、構造的に建築基準法が大きく変わった。2000年。それ以前は1982年に改正されている。細かい改正は他にもあるがリノベーションの際は1982年と2000年がキーになると考える。それは、阪神淡路大震災の調査では、マンションやオフィスなどのビル物は1982年以降建設されたものに被害が少ないと報告されている。戸建て住宅にもその傾向があったが、死者が出た建物の多くは瓦が乗った筋交いの少ない古い木造住宅だった。現時点では築27年。それより古いか新しいか。古い場合は最低限地震が起こったときに家の中で息絶えるようなことにはならないように努めなければならない。戸建ての場合は比較的やりやすいが、集合住宅の場合はかなり難しい。一戸のリノベーションのために他の住人に費用負担を強いるわけにはいかず、まして1世帯がすべてを負担することは現実的ではない。設計者としては、現実的に計画を進めるしかなく、運を天に任せて大地震が起きませんようにと祈るしかない。本来建築を本業とする建築家は、建築基準法の第一条を全うしなければならない。非現実的であっても、最低限危険がないかどうかの視点は必要だ。


建築基準法
第一条  この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。


限られた予算を配分する場合、危険を察知した時点で最大限「安全に」という視点に割り振らなければならない。「自分らしく」「末永く」は二の次だ。安全に生きていくことが一番大切だと考える。集合住宅の場合は非現実的と考えざるをえないが、戸建ての場合はもっとも留意したいところ。一番先に予算配分しなければならないと考える。阪神淡路大震災では、死者の80%の5000人は古い木造住宅の下敷きになって即死したと報告されている。何はさておき、安全かどうかをチェックすることが私の仕事になる。自分の住まいが「築27年」以前か以降か。チェックしておくのは肝要だ。

また、構造以外にもこの時期はアスベストが使われていた時期。1970年代以前のビル物建築に住まう場合は気にしておきたい。現在進めているリノベーションも現場を見させてもらったときに真っ先にサンプルを入手した。検査機関に送ったところ、混入無しとの速報が届き、まずは安心した。アスベストが混入していたら、多くの予算をそれに取られていたかもしれないのだ。リノベーション計画の第一歩は、「まずは安全に」からスタートすることを心がけている。


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