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■ 概要

工事内容/一戸建て中古住宅リフォーム
所在地/神奈川県三浦郡葉山町
主要用途/住宅
家族構成/夫婦+子供2人

■ 設計

(株)佐山建築研究所 一級建築士事務所
佐山 希人

■ 施工

(株)佐山建築研究所 一級建築士事務所
佐山 希人

■ 工程

設計期間 2009年5月〜2009年10月
工事期間 2009年9月〜2009年10月

■ 設計趣旨

はじめて建て主とお会いしたのは、2007年4月でした。私のWebSiteをご覧いただきメールをいただきました。当時は、土地探し中で設計者のパートナーも探されていました。娘さん二人と奥様が私のところにいらっしゃり、いろいろとお話をお聞きしました。その後、気になる土地が出てきたら私も同行し設計者の目でアドバイスしましょうということでお付き合いが始まりました。その後、数度気になる土地が出てきたら同行し、善し悪しをアドバイスするということを重ねていきました。それから、約2年が過ぎようとした頃、「佐山さんに見ていただく前に物件を決めてしまいました」とメールが入りました。決まるときはそんなものです。誰がなんと言おうとこれしかない!という瞬間があるものです。やっとそんな物件に巡り会えたようでした。当初は、土地を探し新築のすまいをつくることが大前提でした。しかし、そんな条件で探してゆく中で、予算のほぼ9割という中古付き土地と出会ってしまいました。私への要望は残りの予算でなんとか住めるようにしたいという内容でした。

私が設計者としてできることをすべて出し尽くして、残された予算を最大限に使うことを考えました。幸い建て主ご夫妻は、以前住んでおられたすまいでプロ顔負けのDIYを経験済みであり、やる気も満々でした。従って、お化粧は建て主に住みながらこつこつと仕上げていってもらうこととしました。このリフォームの設計趣旨はただ一点「地震で死なない家にすること」。これに最大限の予算を配分しました。築後約35年木造2階建て。1階床面積は約33坪、それに2階が12.5坪乗る2階建て。1階の外壁や間仕切り壁には2階の外壁が乗っていない変則的なものでした。。地震で大きく揺さぶられると2階が乗っている1階部分が倒壊してしまう可能性を感じました。従って1階の外壁や間仕切り壁を固めても意味がないと判断し、2階の直下部の構造補強を目指しました。元々ある構造躯体は信用せず、既存空間に独立した構造体を挿入したいと考えました。それを挿入することで万が一の大地震でもその下にいる限り死ぬことはなく、また2階の直下を強化することで2階の倒壊も防ごうという趣旨です。鉄骨でシンプルな構造体を挿入したいと考えました。簡単なスケッチを構造家とやりとりしその方法を探りました。ポイントは、重機が使えないということ。手運びですべて組むことが可能な材料寸法で設計することでした。構造家とのブレストでその方法を決定し、全体の予算計画をにらみました。与えられた予算では、工務店の経費が出ないと判断し、設計者の私が自ら職人さんをコントロールしてゆくプロジェクト方式としました。鉄骨屋さんから構造の見積もりをとり、旧知の葉山の大工さんに解体と復旧を依頼し、材料は直接私が発注することで予算内に納まるかどうかを検証しました。やはり簡単には予算内に納まらず、現場で発生するゴミ処分なども建て主自らやるという荒療治のすえやっと工事にこぎ着けることができました。

様々な要因が錯綜した結果、築35年の木造2階建ての1階心臓部にスチールバーを入れて「地震で死なない家にすること」に焦点が絞られました。さしずめラリーカーの内部にロールバーを入れ車が大破しても最低限ドライバーの命は守るというあのスタイルに近いものとなりました。私は、その鉄骨構造躯体のデザインに腐心しましたが、建て主は構造設計者がモデルとして描いた無骨な機能一点張りのデザインが良いということで質実剛健な構造体をそのまま現すこととしました。


■鉄骨構造で2階の外壁面を受けるスタディ

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■1階外壁と2階外壁がそろっていない

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■既存の構造は断熱材が入っていないのが幸いして割と乾燥状態を保っている

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■しかし、以前タンスが置かれていた部分に蟻道を発見

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■そばの床をはがすとやはりシロアリがみられた

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■床下を見ると直接地面に木部が接触しているところがあり、そこからシロアリが上がっていた

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■リフォーム開始。天井をはがし床をはがす。壁は既存のまま下地として利用予定

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■2階の外壁直下を鉄骨フレームで受け止める予定

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■既存の基礎はあてにせず、鉄骨フレームを受ける基礎を手作業でつくる

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■重機はいっさいはいれない

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■手で持てる限界の鉄骨部材を運び入れ組む

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■なんとか峠を越える

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■杉の無垢材で床を復旧し、設計および工事監理の仕事は終了

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■ここから先は建て主による作業で住みながら工事をしてゆく

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リフォーム工事の場合、財産を築くという意味合いよりも、「より安全に」あるいは「より快適に」という視点が大切になると考えます。従って、個人の財産あるいは街の財産となる建築というよりも、安全に住む、あるいは衛生的かつ健康的に住むということに注力することが肝要だと考えます。今回のケースでは、シロアリこそ一部繁殖していたものの、構造躯体はそれほど痛んでいませんでした。しかし、35年ほど前、大工の手により、構造的な判断がなされないままに建てられたであろうことが容易に判断できました。そのため検討の結果、「地震で死なない家にすること」を最優先させることにしました。その方針は間違っていなかったと思っています。


佐山建築研究所 一級建築士事務所

佐山 希人


▼ コメント(2)

建て主Kでございます。
久しぶりにブログを覗かせてもらってびっくりしました。
いろんな意味で、Vivid-style.com始まって以来の絵ですね(笑)

引っ越して1年と3か月がたちましたが
相変わらずえんえんとDIY続行中です。
今は夫の事務所部屋を作っています。ロフト作りました。
まだまだお見せできるような状態ではありませんが
あと1年くらい経ったら「Before/After」的に
こちらのページに写真を追加していただきたいです(笑)

なかなか迫力のある絵ですよね。
是非、Before/After/Afterの様子をアップしたいです。
DIY引き続き頑張ってください。
楽しみにしております。

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