以下は、「シックハウスを考える会」のMLに報告した内容です。
MLのみなさんこんにちは。
佐山@葉山と申します。
下記学会に出席しましたので概要を報告します。
全貌を明らかにすると膨大になりますので各研究内容、研究者と簡単な概要を報告します。
詳しく知りたい方や報告資料の入手に関しては問い合わせ先をお知らせいたしますのでDMにて私まで問い合わせ願います。
<化学物質による室内空気汚染の現状と対策>報告会
ー室内化学物質による室内空気汚染に関する研究の先端ー
1999年7月21日
社団法人 日本建築学会
室内化学物質空気汚染調査研究委員会
●プログラム趣旨説明から
科学技術庁科学技術振興調整費ー生活者ニーズ対応研究ーの助成を得て平成10年度からの3ヶ月間、日本建築学会を中心に室内化学物質汚染を解明するための研究がスタートしました。化学、医学、社会科学分野の研究社も含んだ大規模な学際的共同研究です。今回は一般市民、研究者、技術者、本会会員の方々を対象として初年度における研究成果を報告し、研究内容に対するご意見をいただくことを目的として、この報告会を企画いたしました。
●1、開会の挨拶〜烏帽子田 彰(科学技術庁)
3年間で基礎研究から現場での実用レベルまでの成果を求めている。プロ向けだけではなく、一般生活者に向けての指針書の作成を期待している。各省庁を横断的に組織できるのは、本庁の強みで本組織が可能となった。
●2、研究全体のフレームワーク〜村上周三(東京大学)
略
●3、化学物質汚染に関する居住環境の実体
〜赤林伸一(新潟大学)
アンケートや一戸建ての測定調査などで実態調査を行う。44.6%が「家の中にいて空気が悪いと感じることがある」と申告。約60%が「シックハウス」、「化学物質過敏症」の言葉を知っている。測定結果から住宅の気密性能が向上すると室内のホルムアルデヒド濃度が高くなる傾向がみられる。築年数が増えるとホルムアルデヒド濃度が低くなる傾向がみられる。
〜池田耕一(国立公衆衛生院)
実態調査を進める上でのサンプリング方法の基礎研究を行っている。
●4、人体に対する汚染負荷の実体と医学的影響
〜柳沢幸雄(東京大学)
化学物質過敏症患者の症状を発現させるカルボニル類の種類と濃度を測定するための手法とフィールドサーベィを行う。化学物質過敏症患者が生活している空間は、健常者の生活している空間よりもカルボニル濃度が低いということがみられた。過敏症患者は視力に異常を持ったり、つかれやすい人が多いことがわかった。なかには、ご主人が帰宅されると症状が出る方もいた。(笑)
〜石川 哲(北里研究所病院)
化学物質過敏症の最初の頃は、大気汚染が原因で引き起こされた症例であった。その後、室内汚染による患者などが加わった。現在、化学物質過敏症患者のもっとも重要な役割を果たしているのはシックビルディング、シックハウスの空気汚染である。北里研究所では、動物用クリーンルームをつくり基礎実験を行う。
5、汚染物質発生量の測定法と評価法
〜久保田紀久枝(お茶の水女子大学)
建築材料より室内に揮発するVOCを含めた有機化合物の分析に効率の良い機器の改良研究を行う。
〜田辺新一(早稲田大学)
建材・施工材からの汚染化学物質放散速度を測定・評価する方法を確率する。実験のなかで、ゼロホルマリンと表示されているクロス用接着剤が F1、F2の規格のものより放散量が多いものがあった。商品表示と実体が結びついていない例がありメーカーは真摯に受け止めることだ。
〜岩下 剛(鹿児島大学)
建材から放たれるVOCの時系列濃度を調査することにより建材のラベリングを行うというプログラムがヨーロッパで提案されている。個々の濃度を下げるだけでは問題が解決できないと考える。複数のVOCが存在している空間を人間の感覚を用いて評価する方法を研究する。
6、空気汚染の抑制対策手法
〜本橋健司(建設省建築研究所)
化学物質発生量の観点から建築材料を分類するための基礎データを収集する。溶剤系塗料から放出されるVOCは時間とともに減少するが、塗装後30日でも600μg/m2認められた。一方、水系エマルジョン樹脂塗料から発生するVOCは溶剤系塗料より少なく、時間の経過とともに放散量が減少した。放出される揮発性有機物質の測定には、活性炭などの吸着濃縮操作が有効であった。揮発性有機物質放散量は、測定時の温度上昇により増加した。
〜坊垣和明(建設省建築研究所)
施工現場での空気室環境と日常生活にかかる発生源の把握その対策手法の確立を目的とする。開放型燃焼石油ストーブを実験室内で燃焼させ汚染物質濃度を計測。燃焼に従い、酸素濃度の低下に伴い、ホルムアルデヒド濃度は上昇し、開放型燃焼機器によるホルムアルデヒド汚染の危険性が高いことが示唆された。
〜小峰裕己(千葉工業大学)
汚染質放散特性に適応した設備機器や生活用品にかかわる最適な室内化学物質空気汚染抑制対策手法の開発を目的とする。
7、放散・拡散過程の解明と人体吸気濃度の予測
〜村上周三(東京大学)
建材・施工材内部→建材・施工材と空気境界面→室内空気中→吸脱着効果に関する化学物質輸送現象の数値モデルを作成する。設計段階における室内化学物質濃度を予測する上で大変有力なツールとなる。
〜加藤信介(東京大学)
室内で発生した汚染空気が室内気流によりどのように人体に輸送されるかを解明。立位では、あごの下の胸のあたりにかけての空気を吸うことが多い。寝位では、寝ている頭の付近の空気を吸うことが多い。どちらも人間の周りには体温による上昇気流が発生しているためである。
8、省エネ型ハイブリット換気による汚染濃度の低減
〜吉野 博(東北大学)
室内汚染を低減する大きな柱は希釈換気である。自然換気と機械換気を統合した省エネ型換気・空調システムを考案する。家一軒分に相当する実験箱を用意してデータを測定した。
9、化学物質汚染防止対策の実用化と住まい手マニュアルの作成
〜森川泰成(大成建設)
本会調査分析結果を専門者ならびに一般生活者に具体的に利用してもらうことを開発する。インターネット上で利用できることを目指す。
・基礎知識編
・問診票による住宅のチェック
・化学物質の発生を低減した住宅をつくるために
・住まいの簡易診断
これらの具体化に向けて3年間をかけて開発する。
10、都市計画からみた室内空気汚染の防除に関する課題
〜久米良昭(那須大学)
建築設備用語で外気のことをフレッシュエアというが、外気が汚染されていれば外気を新鮮空気ということも難しくなる。そこで、車による大気汚染を押さえるための手法を開発提案。
・ピークロードプライシング導入
・鉄道混雑料金導入+通勤費課税
・都市計画・建築規制の適正化
・土地税制・所得税制の適正化
※職住接近型のコンパクトシティの形成
また、屋外環境整備支援システムもあわせて開発。
<佐山所見>
建築学会始まって以来の報告会参加者だったらしい。
200名定員の会場は満席状態でこの問題への関心の高さを実感した。
本課題の研究は始まったばかりである。
基礎研究から実務応用までを3年間かけて一気に進めるという。
各研究者の連携があってはじめて成果が上がる難しい課題である。
化学者、医者、建築関係者、等々。
各省庁が横断的に取り組まなければならない国家プロジェクトだ。
実務者としての私も日々の取り組みのなかで本研究成果を実践したいと考えている。
草の根的な取り組みしかできないが、ストレスのない豊かな暮らしを求めて実践したい。
私はまず具体的に二人三脚が組める医者とプロジェクトを取り組んでみたいと思っている。
一軒の小さな住宅でも良い、小さな医院でも良い。
まず、具体的に始めることが肝心であろう。
それがたとえ手探りであっても。
本研究会はそういう意味でも大きな第一歩であることを実感した。
19990728
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