クマコラム
19990818

少しだけ風に秋が入ってきた。
でも海はまだ青々している。
今朝、久しぶりにアメリカン・モーニング(R・ヴァンウォーマー)を聞く。
20年あまりの歳月を飛び越え気持ちが洗われる。
ポパイを読みあさり、愛車のオンボロ・ビートルにボードをくくりつけ波を求めて房総半島をさまよっていた。
ある暑い夏の大原のポイント、白い砂は熱く焼けてジッとしていられない。
焼け付く砂浜を走り抜け、海に飛び込みパドリングを始める。
ウッと息を飲み込むほど水が冷たかった。
照りつける太陽と裏腹に寒流が入り込んできていたのである。
手足が痛くなるほどだった。
ボードにまたがり波を待つ上半身は太陽に照りつけられ、水に浸かっている下半身は冷やされて、不思議な感触だった。
波は小さかった。
寒流のせいであろうか、水は澄みきっていた。
小さな波が踊るとその中で小さな魚がアクリル板に封印されているように透明に浮かび上がる。
とても美しい空の青と透明の水が織りなす生きた水族館のようだった。
波に揺られ、美しい光景のなかに自分もとけ込んでいた。
しかし、大波にもまれて、死にそうな思いもしたこともある。
自然はとてつもなく懐が深い。
過信してはいけない。
恐怖感を常に持つことが外遊びの鉄則。
今回の大雨の事故はその教訓だ。
その反面、大きな懐に優しく包んでくれることも多い。
自然のなかでは素直におびえ、素直にとけ込み従うことが、楽しむコツだろう。
20年経っても、焼ける砂浜とアクリル水族館は鮮明に記憶されていた。
さわやかな歌声とともに。

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