クマコラム
19991122

先日、地方に行ったときに自在鈎を手に入れた。
自在鈎ってなに?とおもうかたもいると思うので簡単に説明する。
囲炉裏の火どこの上になべかま鉄瓶などを吊すための長さ調整が簡単自在にできる棒状のもの。
ってところだろうか。

形は地方によっていろいろあるが、仕組みと機能は同じである。
おそらく人間が火を使いだしてからまもなく考案されたのではないだろうか。
ヨーロッパでも使われていて、よくみると「アルプスの少女、ハイジ」のアニメにも出てくる。

クマの家に囲炉裏を仕込んだときからいい自在鈎がないか地方に出るたびに気にしていた。
浅草の合羽橋に探しに行ったこともある。
普通よく見るものは、魚がついていたりしてごてごてしていてぱっとしない。
クマにとって「いい自在鈎」とは、シンプルであきのこないもの。
囲炉裏居酒屋にあるような演歌っぽいものではなくて、機能優先の単純なものがいいと思っていた。
ハイジに出てくるような。

福島にある「古木屋」に立ち寄ったときに期待をせずに自在鈎なんてありますかねと聞いた。
あるかもね、と言って倉庫を案内してくれた。
それはそれは、お店なんだか、倉庫なんだか、漬け物小屋なんだかわからない古物であふれた空間だった。
雑然とした空間に置かれているものをよく見ると値札がついているものもあるのでお店なのかもしれない。
そのなかにすすとタールでガチガチになった一本の棒を見つけた。
「おおっ、これは!」っと手にすると、すかさず主人が「こっちのほうは筒が竹じゃなくって箱形なんだよ」と弁解じみたやる気のない説明をはじめた。
箱形で魚なんかついていない、ごくごくシンプルなものだった。
やっと探していたものに出会えたのだ。

迷わず「これください。」というとそれまで風邪気味なんだと言って愛想のない態度がうって変わってにこにこし出したのだった。
古材、古道具なんて興味のない人にしか価値がないものなのだ。
いろんな人がやってきては、けちを付けて、去っていく人のほうが多いのだろうと思ってしまった。

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