クマコラム
19991207

東北のある民家の天井に大きな男根がぶら下がっていた。
10M以上もある棟に近いところにあるのだが、それでも大きいと感じる。
おそらく竿は1.5M、玉は直径50cmはあっただろう。
それはいろりの煙でりっぱに黒光りしていた。
「火伏の男根」というらしい。
くわしい意味は確認していないが、火から家を守る意味が込められているのだろう。

プラスターボードと不燃クロスに包まれている今の家はとても火災に強いと思う。
機能的には昔の民家に比べてとてつもなく人間を守るという意味では進化している。
構造的にも強く、火にも強く、外気との縁切れもしっかりしている。
ただ、機能一点張りの住むための機械になってしまいつつあるのは否めない。
モダン建築が大手をふるっていた30年ほど前は「住宅は住むための機械だ」といいきっていた。
それが新しい建築形態の旗手であり、みんながこぞってそれに向かって走っていた。

今でも、その路線でやっている潮流は確かにある。
しかし、クマとしては味気なさが感じられ「住むための機械」と割り切れない気持ちでいるのが本音だ。
すみかとしての機能は確実に手に入れたその上で、「神々が宿るようなすまい」をつくりたいと思っている。
男根をそのまま祭る気にはならないが、命みなぎる住まいをつくりたいとおもう。
大黒柱がその家と住み手をいつも見守るような住まいは今でも充分可能である。

その東北民家の帰り道、あるペンションに立ち寄ったところ玄関が大きく吹き抜けていた。
ふとその天井を見上げるとそこにもまた大きな大きな男根がぶら下がっていた。
それは、大きい立派なものなのだが、最近つくられたものらしく、青白く輝いていた。
それはなんともいえず、ペンションオーナーの気持ちは確かなのかと思わせるくらい不思議な光景だった。
男根は使い方と場所によって、難しいものらしいのだ。

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