●2000.01.31

予算調整を考慮しながら、さらなる哲学を形にするべくプランを練りに練った。
前の晩から明け方にかけて、基本の骨子が見えてきた。
早速、形が見えたところで、ヒガシカタ氏にファックスを送った。

すると先方は待ってましたとばかりに6時間後見積もりのファックスが来た。
地下工事900万、出生値引き115万、計785万円也。
う〜ん。早まったか。
予算を言ったのが、良かったのか、悪かったのか。
ぴったりにあわせてきた。

しかし、これで地下工事の予算はずいぶんと絞ることができた。

●2000.02.08

平野さんと、建て主と設計者の哲学を現実的にするべくプラン変更の打ち合わせを行った。
1/22の合い見積もりの提出時に各元請け業者としての平野邸に関わる姿勢は、感じ取ることができたので、今後は全社に合い見積もりを取るのではなく、2社程に少し絞って依頼しましょうと提案する。

そのための資料として、4社の中項目の比較表を用意して、説明した。
それを参考に、一番見積もりが高い業者と対応力に欠ける業者さんには、再見積の依頼をしないことで話がまとまった。

2社に絞られたのである。
S建設とY建設工業だった。
その2社に再度変更プランの見積もりを依頼することになった。


●2000.02.11

まだまだ、プランは1/100であり、ラフプランなのだが、より詳しくシビアな見積もりを依頼するためには、構造図を書かなければならない。
私の設計するすまいは、ほかのすまいに比べて1.5倍以上は構造材に使う木の量が多いとよく言われる。
経済効率最優先で設計することよりも、神々が宿るすまいにしたいと考えているので、コストパフォーマンスよりも、木遣いを大切にしたいと考えているから、そうなるのだ。
第二段階の見積もりでは、それをしっかり伝えなければならないのだ。

構造図、コーゾ−ズ、構造図〜。
この作業は、事務所の所員が5〜6人居たころでも、私が自ら図面を書いた。
一番肝心なところでもあり、一番楽しい作業でもあるのだ。

頭の中で、プラモデルを組み立てるように構造を決めていく。
建築の構造そのものは、どんなに華美にデザインされたうわべのデザインよりも美しいと信じている。
屋根を支え、風や地震に耐え、しっかりと堪え忍んでいる姿は、美しいではないか。
ビニールクロスや、印刷の木の目模様の天井なんかの厚化粧材で隠したら、申し訳ないではないか。
そして、ちょっとでもくたびれてきたり、水が進入してきたりしても、回復手術ができるのだ。
壁や天井をはがさないと状態がわからないというのでは、怖いのだ。

ちょっと、力が入ってしまったが、構造は美しいものなのだ。
しかし、美しく構造を決めていかなければならないのも事実だ。
隠れてしまえばわからないやり方であれば、経済性を追求し、風雨に耐えるぎりぎりで造ってしまえばよいのだが、そういう蓋をしなくても安定感のある構造にするためには、やはりしっかりと構成する必要があるのだ。

話が、少し横道にそれるが、「坪単価いくらでやってください」とよく言われる。
当然なのだが、坪単価30万円台は30万円台のやり方、坪70万は70万。
建築は手品ではないので、それ相応のやり方になるのだ。
しかし、素人の方は、当たり前だが安くできる方がよいと思っている。
我々も予算に合わせることは、簡単だ。
しかし、仮に建築にモラルがあるとしたら、そのことを包み隠さず建て主に話すべきだろう。

以前、「お風呂の排水溝から臭いにおいがあがってくるのですけど、今度建てるときには大丈夫でしょうか?」と聞かれたことがある。
床下を見ると、断熱材が入っていない。
冬、寒くありませんか?と聞くと、家の中でじゃんバーを来てセイカツしているということだった。
おそらく、「坪○△万円でやってください。」「ハイわかりました。」ぐらいの会話しかせずに、出来上がったのだろうと推測する。
生活排水を下水に流す前に、排水トラップというものを取り付けるのが、ごくごく一般的なのだが、たかだか数千円を削るためにそれをやっていないのだ。
床下の断熱材もしかり、数万円ですむのだ。

この話を聞き、現場を見て、やはり建築には手品はないと確信した。
そして、ローコストを依頼するには、依頼する方も相当の覚悟とリスクを直視して進まないといけないとも思った。
医者の世界では、インフォームドコンセントが、当たり前。
建築の世界ももっと見積もり内容を正確に説明し、双方合意の上で進めていくことが、是非とも必要だと思う。

建築業者は今までブラックボックスだった見積もりを真摯に建て主に説明するべきだと思う。
坪○△万といわれたから、その範囲で造りました、臭くても寒くてもそれは仕方ありません!じゃ、申し訳ないじゃあないですか!
ローコストと言っても総額では、やはり数百万から数千万の買い物なのだ。
買う方は、人生をかけて買うのだ。
依頼を受ける方も、人生をかけて、請け負ってほしいと思う。

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