●2000.03.11

確認申請は、請負業者未定で出した。
しかし、住宅金融公庫の設計審査の書類は、嘘でもいいから工事業者を書いてくださいとあった。
もとえ!嘘でもいいからではなく、決まっていなくてもいいからでした・・。
(しかし、決まっていなくてもかいて!というのは嘘でもいいからと同じだと思うのだが・・)

まだ、S建設とY建設工業どちらとも決められないでいた。
悩んだ末に、嘘でもいいならと決意し、Y・・と書いて提出しておいた。
というのは、平野さんとの出会いは、S建設よりもY建設工業の方が早く、息が合っているように感じたからだった。
すまいは、その道のプロが結集してつくるものであるが、結局、ニンゲンがよってたかって造り上げるものである。
ウマが合うか、合わないかは、とても重要なことなのだ。
いろいろとお話をしているうちに、Y建設工業の担当者、ハリキリ二人組と平野さんの息が合っているようだったのだ。

とはいうものの、実際につくっているものを見なければなるまい!
いくら、ウマがあっても、お金が合っても、しっかりとしたものをつくっているかが肝心だ。
ということで、現場を見せてもらうことにした。

平野さんと私で小田原に行き、現場を見せてもらった。
左官やさんが、内装を仕上げていた。
霧島何とかという、OMソーラー協会の加盟工事店でもある高千穂が開発した左官壁を塗っていた。
「これは、いいねぇ、のびもいいし、なかなかいいよ!これは、健康壁だ!」
と、高千穂のまわしものか?とも思えるような感じだったが、研究熱心、仕事熱心そうな左官屋さんだった。
生き活きと仕事をしている様子は、元請け業者であるY建設工業の職人さんに対する姿勢も感じられた。

結構大切なのだ。職人さんの、仕事ぶり。
社会人成り立ての頃、ある住宅メーカーに所属していた私は、おもしろくなさそうに仕事をしている職人さんを何人も見てきた。

現場を見て、設計者としての心が決まった。
いつまでも、S建設とY建設工業を天秤に掛けているわけにはいかない。
そろそろ、工務店も本格的に気持ちを入れてもらいたいのだ。
現場を見たあと、平野さんと帰りの車の中で、意見を交換した。

今の時点で、S建設とY建設工業と見積もりの開きが、まだ200万ほどあった。
この開きがなければ、設計者としても平野さんとしてもYという気持ちを確認した。
それは、これまでの、見積もりの内容と平野さんとの人間関係が、幾分Yの方が勝っていたからだ。
ん?見積もりが高い方が、勝っているとはどういうことか・・

それは、Yの見積もりが詳細にわたって、明快にひろわれているからだ。
詳細にひろわれている方が、高くなるに決まっている。
単価を見ると、SもYもほぼ同じ。
ということは、打ち合わせを詰めていけば詰めて行くほど、コストダウンできる可能性が残っているということ。
こまかく、図面に忠実に見積もってある分、些細な仕様の変更で、じりじりと詰めていくことができるのだ。

単価は、同じ。拾いは詳細。設計者としての、公平な立場からすると、Yに軍配が上がるか・・。
ただし、S建設とは、いくつかの仕事をしてきていて、担当者のIさんが、全面に出てくれば可能性はある。
技術的にも、信頼性も申し分ないのだ。
しかし、別の現場にかかりきりで、今回の平野邸の打ち合わせには、出てこない。
S建設に依頼するが、無理のようだ。

勝負あったか・・

平野さんに、工事費の支払いの件を翌週、Yに確認して、平野さんの都合で動いてくれるようであれば、Y建設工業にお願いしたいとお話しされて結構ですよと伝え、別れた。

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