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「サービスをはき違えているらしい」
先日、現在私がすまいを設計している建て主であるBさんが言っていた。
私と出会う前に折衝していたある住宅メーカーの営業マンは、「日々のお茶の差し入れから、上棟式など、いっさいやらなくて結構です。」と言っていたらしい。

挙げ句の果てには、「契約したら、しっかりと工事させますので、いっさい現場に来なくても結構です。」とも言っていたらしい。
「どういうことだろうか?現場の末端まで教育が行き届いていないから、ぼろを出したくないと言うことだろうか?」

Bさんは不審がっていた。
『お茶だし、上棟式なし、現場に顔を出さなくても良い』ということが、最高のサービスと勘違いしているのではないだろうか。

昨日、Cさんのすまいが上棟した。
雪のちらつく小田原の山に入り、一緒に大黒柱を探しに行ったのは、今年の冬のことだ。
普通の住宅建築のプロセスでは味わえないプロセスをできる限り、体験してもらいたいと思っている。
プランニングの段階での試行錯誤に参加してもらい、コストを調整する段階での悪戦苦闘にも参加してもらう。
伐り旬にタイミングが合えば、山に主要な構造材を一緒に伐り出しに行く。
できるかぎり、プロセスをクリアにして、建て主にも参加してもらう。

面倒くさがって、嫌がる人もいるだろうが、できるだけ私は参加してもらいたいと思っている。
それは、本来自分で住む家くらいは、自分で造るのが一番いいと思っているからだ。
自分の生活のくせを知っているのは自分しかいないし、本当の予算を知っているのも自分だ。
工事が始まって、違いに気がついたときは、自分の裁量で変更すればよい。

上棟式しかし、現実的には、技術的に時間的に予算的に理想どうりにはいかない。
そこで、プロに参加してもらい、自分のすみかを構築していくということになるのだ。
そうしたときに「お金を渡して、プロに全てお任せ」でいいだろうか?
自分の気持ちや考えをしっかり伝えていく必要はないだろうか?
工事請負契約して、そのあとは全てお任せでは、無責任では無かろうか?
工事が始まってからが、正念場である。
現場に入る職人さん達の気持ちの入れ方ひとつで、現場は良くも悪くもなる。
そんな職人さん達に建て主の気持ちを伝えなくていいものができるはずはないと思う。

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