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このすまいは、福岡県博多から南へ約15Kmほど離れた山間部に位置する。別荘や家庭菜園用の用地として8区画ほどに造成された1300坪ほどの敷地は、国道から3分ほどで、敷地内から隣家が全く見えないという桃源郷の様相を見せる。冬は雪が多く、福岡市内は雨でも、計画地では雪が降るということが想定された。家族構成は、近い将来熟年となるご夫婦とジャーマンシェパード3頭である。犬たちとの豊かな暮らしを求めて、この土地に移り住むことにしたとのこと。計画の骨子は、「犬達との無理のない暮らし」であった。3頭のシェパードはそれぞれ個性的で、同じシェパードでも階段の得手不得手など皆バラバラだった。


山間部を造成している関係で、区画間には2M〜4Mほどの高低差が存在した。加えて、南に大きな造成法面(のりめん)がそびえていた。冬の日当たり、崖からの離れを考慮して、一番北側の3区画を居住用ゾーンとした。その居住用ゾーンにも、それぞれ高低差があり、ゾーンを広く使うには、建築的解決が必要だった。熟年生活に向けて、個性的な犬たちの快適な生活を考慮し、加えて、太陽光のダイレクトゲインを狙い、居住ゾーンの中で一番高い土地を生活高さに設定した。


建て主は、計画が始まるまで生活していた住宅は既に売却決定で、仮住まいを余儀なくされた。そのため、限りある予算を有効に使おうと決心し、余りある敷地を使って仮住まいも計画した。母屋ができた後は、ゲストルームとして利用する方が、予算を有効に使えるという判断だった。敷地上部にゲストルーム、下の敷地に母屋を計画し、デッキ空間で連結した。生活高さは、母屋で2階部分、ゲストルームで1階部分である。母屋の1階部分に内部空間はほとんど必要なかったので、収納部屋、薪ストーブ部屋とし、他の空間はピロティとした。薪ストーブ部屋は、熱の性格を考慮すると、最下階が最もふさわしいと考えている。内部欲求から出現したピロティも、薪作りや薪の乾燥場所としては最もふさわしく、両者がとても密接な関係で幸せに解することができた。


最終的に、犬たちが周辺住民に迷惑をかけることなく、思う存分運動できるように周囲にドッグラン・エッジを設ける必要があった。既成のアルミフェンスでは、桃源郷が台無しになるので、松丸太とネットフェンスでデザインした。完成後、まるで西部劇の牧場のような桃源郷に変身した。

2002年12月、雪の降る中、「犬たちとの豊かな暮らし」が始まった。


■ 物件概要

設計・設計監理:(株)生活空間研究所 一級建築士事務所 佐山希人 鈴木香住
構造     :地上3階木造軸組工法
設計期間   :2002.04〜2002.07
施工期間   :2002.08〜2002.12
施工・施工監理:(株)藤匠住宅(福岡市)


● デザインコンセプト

『怪しい居酒屋』

● このすまいの特徴

犬猫との暮らしピロティ木造打ちっ放し近くの山の木を使おう薪ストーブ船舶用照明丸太庇囲炉裏柿渋ペイント、造作敷地境界松丸太フェンス、オール電化住宅

※ 計画開始からプランがまとまるまでのいきさつはこちら


▼ 木造打ちっ放しの癒しの空間

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▼ 小上がりと囲炉裏は『怪しい居酒屋』必須アイテム

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▼ すべての空間が折り重なって一体となるワンルーム

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▼ 緑に映える柿渋ペイントの赤と黄

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▼ デザイン的に消したい線は柿渋ペイントの黒

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▼ 外部の照明は質実剛健ローコストの船舶用照明

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▼ 百メートル以上に及ぶ焼いた松丸太とネットフェンスは西部劇を彷彿とさせる

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● プロセス・ドキュメント

※ 計画開始からプランがまとまるまでのいきさつはこちら


▼ 幾多の難関を乗り越え地鎮祭を迎える

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▼ いよいよこれから工事が始まる

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▼ まずは、仮住まいの工事から

※ 仮住まいを建設することに至るいきさつはこちら

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▼ 夏の暑い日、母屋の鉄筋組みをこつこつと。丁寧な仕事だ

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▼ 仮住まいが完成し、母屋が上棟を迎える

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▼ 和やかに現場がすすむ。工務店の社長も愛犬家だ

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▼ 建て主自ら、かけやを振りかざし棟を納める

※ 『今日は胸あげ〜♪』とおおらかに祝う(女性陣)

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▼ 母屋も全貌が見えてきた

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▼ 工務店社長夫人が仮住まいに陣中見舞い。社長夫人も大の愛犬家

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▼ 外壁の塗装は、建て主ご夫婦で完遂した(おみごと)

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[2005.05.25]追記:

当地は、2005年に入って福岡県西方沖地震にみまわれた。
近隣では、家屋の倒壊などもあり、相当の被害を受けた模様。
幸い、このすまいはほとんど被害を受けなかったそうだ。
しかし、仮住まいの方は大きく揺れ、中の物が損壊したらしい。
これから、梅雨と台風の季節がやってくる。
地震の後の地盤のゆるみで、被害が出ないことを祈るのみである。

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