解体現場は示唆に富んでいる。
地域にあった工法の適正、材料の強度・耐久性、など無言で多くを語っているものだ。
今後もチャンスがあれば、解体現場に出向いていきたい。
今回は、神奈川県三浦郡葉山町で32年間、共同住宅として現役を続けてきた木造2階建ての解体現場記録である。
<手壊し>
近年、解体ゴミは分別回収が義務つけられており、リサイクル可能な材料は再利用される。
<基礎と土台>
基礎に若干亀裂が見られる。
建物が崩壊するほどではない。
土台は、いたって健康そのものである。
床下は乾燥しており、シロアリや木部のくされは、まったく見られない。
<建物西側床下換気口>
正常に機能している。
<建物東側床下換気口>
ほとんど破壊しており、防虫、防鼠機能がない。
同じ建物であるが、場所によりこれほど状態が異なる理由がわからない。
周辺環境、湿度環境はほとんど同じである。
<水回り床下状況>
4世帯すべて状態はすこぶる良い。
水処理がしっかりされているのと、通気性がかなり良いと見受けられる。
<水回り周辺状況>
浴室廻りも、状態はかなり良い。
特に杉の小幅板が見えるが、まだまだ完全に機能しており、使用材料と工法が適正であることがわかる。
<構造金物>
さび付いてはいるが、緊結状況は問題なく、木部と金物との間にゆるみなども見られない。
<外壁下地>
断熱材は入っていない。
冬寒く、夏あつい、とても住みにくい住宅だったであろう。
しかし、そのため、壁体内結露もなく躯体はいたって健康そのものである。
<外壁下地2>
ひさし部分が内部から見ると空洞になっている。
特に壁体内を通気させる工法は、採用していないが、いたるところから通気していたと見られる。
そのため、外壁全てにおいて、結露の跡は見られない。
<ラワンベニア>
積層状態を保つ接着剤がまったく効いていない。
手で触ると簡単にバラバラになる。
やはり接着剤は信用できないのか。
<考察>
32年間、様々な家族を包み込んできたであろうこの共同住宅の躯体は健康的だった。
地域環境的な条件、採用された工法の適正、など、好条件が重なって良い状態を保っていたと考えられる。
しかし、ラワンベニアの耐久性は疑問を感じた。
今後の解体現場でも注意深く観察していく必要がありそうだ。
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