本日、竣工を迎えた「葉山。木・風・ガレージのある家」は、OMソーラーと薪ストーブを併用したすまいです。
ようやく春めいてきましたが、やはり今の時期計画している建て主は暖房計画が気になるところです。
私自身、北海道出身ということもあって、暖房計画はかなり熱心であるという自負があります。
それというのも、大学で建築を学ぶために北海道から東京に出てきたのですが、その時の第一印象は、「東京の家はなんて寒いんだろう!!」ということでした。
『日本の家は夏をもって旨とすべし』という吉田兼好の言葉が残っているのですが、どてらを着てコタツで丸くなるのが東京のライフスタイルだった1970年代後半、それはとても貧しいスタイルとしか感じなかったものです。
なぜなら、ちょっとほら吹き混じりですが、当時の北海道では、真冬にがんがんストーブを焚き、暑い暑いと言いながら部屋でTシャツを着ているような生活だったからです。
寒い寒い学生時代を過ごした道産子大学生が抱いたことは「あったかい冬のライフスタイルを関東で!」という小さな野望でした。
今もその想いは同じです。
自然の中で遊ぶのを最高のご馳走と考えている私にとって、自然を利用しながら人間本来のすまいかたを模索するのは自然の成り行きです。
その基本は、直接熱取得(ダイレクトゲイン)となります。
太陽の光を最大限に家の中まで取り入れ、熱を逃がさないように工夫するだけで、内部空間はぐんぐん快適になります。
その仕掛けとして、吹き抜けやハイサイドライト等を多用します。
吹き抜けって、空間を贅沢にする「贅沢品」と思っている方もいらっしゃるようですが、私にとっては冬暖かくする仕掛け以外の何者でもありません。
とにかく光を入れようとします。
しかし、軒の出や簡単な工夫で夏の日差しを遮ることも、同時に考慮していきます。
関東では、夏のライフスタイルも重要ですからね。
私は、大きく風が通り、風鈴がちりんちりん鳴り、五感で涼しさを感じるしつらえが粋なスタイルかと思っています。
暑いときは暑いと体が反応して、汗が出て、新陳代謝が促進されることが、健康的だと思っています。
冬の話に戻りますが、薪ストーブも私にとって自然と会話するための生活道具として、大好きな暖房アイテムです。
それは、今のご時世、生活を営むときに自給できるものはあるでしょうか?
電気、水、食料、衣料、いわゆる衣食住、すべてお金を出して買わなくてはなりません。
そんな他人頼りで生きていかなければならない世の中で、唯一都市生活者が可能な自給インフラは、薪による冬の暖房だと思っています。
お金を出して買わなくても、冬の暖かさくらいは自分で調達できるさ!と粋がることが可能なのです。
しかし、それとてなにかしら他の仕組みに頼って薪を仕入れることになるので、全てではないのですが。
まあ、「廃棄される木々を自分の労力で集めてきて、それを薪にして冬の暖房にする」ささいな自給ですが、自分の手で生きてゆきたいというアホなわがままは少しでも満たされるのは事実です。
そんな思いを抱いている設計者が設計すると、ダイレクトゲインと薪ストーブを有効に使い分けたすまいができあがるのも、なんとなくわかっていただけるでしょうかねぇ。
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