ピロティ

今年の正月明けに、日本で唯一のル・コルビジェの作品を体感しに行きました。
上野公園の一角にある1959年竣工の「国立西洋美術館」がその作品です。
竣工後45年を経過するとは思えないくらいシャキッと屹立していました。


040226.jpg関係雑誌に来日当時の新聞記事が出ていました。
「肩幅が広く倒三角形を感じさせる体、そしてその三角形の上にある血色のいい顔と白髪をきれいにすいた頭が、黒い太ぶち眼鏡でカキッと区切られている。いかにも建築家らしく構成されたル・コルビジェ氏である。」
かたわらの挿入写真に彼が出ているのですが、彼を取り巻く日本の建築家達も蝶ネクタイ、オールバックに黒縁眼鏡で写っていて、それが当時の建築家ファッションだった様子がかいま見え何ともこっけいでした。


040226-3.JPG作品そのものは、とても丁寧に造られていました。
雑誌で見る彼の作品は、ごつごつとしたラフなコンクリートの肌があらわになって見えることが多いのですが、日本のそれは神経質なほど丁寧に造られていました。
ベニアではなく板によるコンクリート型枠の模様がとてもきれいで、うっとりと見とれてしまいました。
もしやして、コルビジェはもっと荒々しい仕上がりを想定していたのではないかと思えるくらいでした。
内部空間をひととおり体感し、休憩コーナーにたどり着いた時に思わずなんだなんだとシャッターを切ってしまいました。


040226-2.JPGそこにはただイスが置いてあるだけなのですが、とても考えさせられる面白い光景だったのです。
残念ながらコルビジェデザインのイスではないのですが、今にも光に向かって飛び立とうとして鳥たちが羽を広げているように見えませんか。
もし、鳥達がコルビジェのデザインによるもので、美術館巡回ルートの最後に、意図してそのように配置していたのなら、そこまでやるか!と感嘆したところですが、どうやら偶然の産物のようで少しほっとしました。
コルビジェによって、雄弁な美術作品に圧倒されたであろう来館者に用意していた最後の空間的仕掛けが、「あなたも明るい未来にはばたいてみませんか?」であるとするならば、あまりにもクールすぎて、逆にかっこわるくなってしまうところだったからです。


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