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家造りというのは、社会の動向と強く結びついているものです。
最近、設計への要望として上位になっているのが「コミュニケーション」と「防犯」と感じています。
いくつかの物件でこの条件がだされてくるので、やはり社会的な問題であると感じています。

コミュニケーションについても、いろいろありますが、コストにダイレクトに響いてくるのが「防犯」です。

簡易な門塀から、本格的なセキュリティシステム、シェルター化までありますが、一軒の住宅でハードを構築すると、数十万円〜数百万円の費用がかかります。
高いものですが、現在の犯罪では金品だけではなく、生命の安全が問われているので、ここにコストをかけたいという要望は高くなっています。

防犯に対する要望から、ハウスメーカー、建材メーカー、ハイテク機器などで防犯用具の開発がすすめられ、専門書なども多くでています。

一番、進入経路として多いのはガラス破りですが、(戸建て住宅の7割)
その対策として一番効果が高いのは「防犯ガラス」(ガラスに中間膜を挟み込んだあわせガラス)だろう、と考えていました。しかし、実際にはドライバーなどによる「こじ破り」 、ハンマーなどによる「打ち破り」には効果があるものの、最近急増している「焼き破り」には効果が薄いという実態のようです

たしかに、中間膜=フィルムが、炎に対してどれほど強いのだろう?とは思います。
そうなるとやはりガラスに穴は開けられるという仮定で計画する必要がありそうです。

 ※焼き破りにも効果のある防犯ガラスがでていますが
  価格は通常の防犯ガラスの3倍〜の価格となります。

さすがに、ガラス全面を破壊して侵入するケースは少ないので
・シャッター、雨戸、面格子・補助錠・センサー器具(照明、音声、録画)
・死角のない計画・登れない雨樋、音の鳴る外構、番犬・入りにくい開口サイズ
などの複数の防犯対策をいくつか重ね、侵入までに10〜15分かかるようにしたい。

10分以上侵入に時間をかけるケースは10%以下なので、この時間が基準になるでしょう。
次に、なんらかの方法で入られてしまったとしたら、最低限命を守らなければなりません。

現在の犯罪では、
・帰宅者を待ち伏せして、口座やカードの暗証番号まで聞き出すケースもあります。
・また、命は奪われなくても被害者の発見が遅れたために、出血や窒息などで命を落とす可能性もあります。

そうなると
・侵入者がいることを外部に連絡する(携帯、セキュリティサービス、非常コール)
・侵入者の入れない避難場所をつくる(侵入できないドアのある個室)
という想定も必要になります。
防犯問題については最悪のケースを考えていくとどこまでも深まっていく・・・ですが
逆のケースで、厳重な開口部対策をすると、今度は火災時などで救助しようにも入れない!という状況が生まれます。

このことを考えると、完全な要塞住宅を造ることは危険でもあり、どこまでの防犯レベルを設定するか?というジレンマがあります。

そして、費用をできるだけ安く抑えなければならないという大きな課題があります。殺風景な牢屋をつくるわけではありませんので、閉めきることばかりではなく庭や近隣に対してつながりのあるプラン、光や風を内部にとりいれられるプランも同時に成立しなければなりません。

家庭のなかでも、一人一人が個室にとじこもっていたり、自由に出入りしにくい状況をつくるわけにもいきません。

「防犯」と「コミュニケーション」が快適に同時に成立していなければなりません。これへの一番近い解答は一つではなく、施主の数だけ違うスタイルがあります。悩みどころです。

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