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この計画地は、東名高速大井松田ICからほど近い農林業地域に位置する。
建て主は、先祖代々伝わる屋敷、田畑山を所有しており、旧母屋は築後100年という。
母屋の古民家改修の選択肢もあった。
しかし、手を加え続けているために原型を有していない。
今後の生活スタイルに合っていない。
などの理由で建て替えを望まれた。

お話を聞くと、ヒノキとスギの山を所有しておられた。
建て主のお父様が若い頃一生懸命植えた木々で60年は経過しているらしい。
山に行く。
手入れが行き届いており、目の高さで直径60cmはある立派なヒノキ群だ。
早速、自前のヒノキですまいを造ることを提案する。
奥様は半信半疑なご様子だった。

プランが固まる前に伐り旬を迎えてしまう。
伐採は冬至の前々日、2003年12月19日。
近頃は『新月の木』として重宝されている。
皆で御神酒を捧げ、建て主自ら伐り倒す。
春まで、葉枯らしさせ、機が熟すのを待つ。

翌年梅雨前、ヒノキは山から降ろされる。
大黒柱と千本格子に生まれ変わった。
とても贅沢なすまいづくりだ。
ご先祖様もとても喜ばれているだろう。
今では貴重なドキュメントだ。
機会があれば何度でも関わりたい有意義な仕事だ。


■ 物件概要

設計  :(株)生活空間研究所 一級建築士事務所 佐山希人 鈴木香住
構造  :地上2階木造軸組構造
設計期間:2003.10〜2004.05 
施工期間:2004.06〜2004.12
施工  :自分ノ家工房 江藤浩光 渋谷光春

● デザインコンセプト

『ギャラリーを持つ現代民家』

● このすまいの特徴

近くの山の木を使おう薪ストーブ、玄関土間、囲炉裏船舶用照明丸太庇犬猫との暮らし、富士見の千本格子、田の字プラン、OMソーラーシステム


▼ 玄関土間に薪ストーブ

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▼ 来客の多いこのすまいでは、この土間スペースが大いに活躍する

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簡単な用事は玄関先。
立ち話では失礼でも、靴をぬぐまでもないときは小上がり。
きちんと応対するときは、座敷。
この玄関→土間→座敷には、目に見えない結界が3段階に仕掛けてある。


▼ 田の字プランの一角に土間と薪ストーブは、現代民家の基本

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▼ 2階はギャラリー兼お孫さん達の宿泊スペース。大阪障子は解体前の財産を再利用

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※ 大阪障子〜障子紙が貼ってある部位をはずすことができ、夏は格子状になる職人技の障子


▼ まるい千本格子の開口から富士山を望む

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▼ 西側の全景

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● プロセス・ドキュメント


▼ 2003年10月、建て主にはじめてお会いする。建て主は9月2日の神奈川新聞で私のことを知っていた。

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▼ 2003年12月の新月、自己所有の山に入る

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▼ 素性のいいヒノキを探す

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▼ ご家族がお清めの塩をまく

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▼ 関係者で御神酒を捧げる

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▼ 建て主自らチェーンソーをにぎる。日頃から山を管理しているため扱いが慣れている

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▼ 関係者全員で記念撮影。伐った木はそのまま春まで葉枯らしする

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▼ 2004年9月、無事に上棟を迎える

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▼ 建て主と職人が建物四方を清める

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▼ 鳶さんから建て主ご家族にさかずきを渡す

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▼ 建て主からなみなみにそそがれた返しのさかずきを受け、一同大いに盛り上がる

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▼ 建て主と左官職人で壁にアートを仕掛ける(↓親方『まかしとけ!』)

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▼ 建て主は、二科会を代表する現代アーティスト

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▼ さすがにアーティスト。私が指定した壁画の範囲をどんどん超えてゆく

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▼ ほぼ完成。細かい左官仕上げはプロが仕上げていく

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▼ アーティストと左官職人とのコラボレーションが見事に決まる

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▼ 約1年半にわたるすまいづくりを終え、2005年1月無事にお正月を迎えた

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