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『シックハウス症候群』という言葉をご存じでしょうか?
その症状をご存じでしょうか?

全く知らなくて、毎日健康に生活できているとしたら、それはとても幸せなことだと思います。建築家の社会的責任を全うする上で、シックハウス症候群のことを知らない生活者がたくさん出てくることもひとつの役目だと思っています。シックハウス症候群については、『シックハウスを考える会』≫『会の目的』で詳しく説明されています。すでに、この言葉が使われ出して、10年を超えようとしています。開設後6年を経過した私のサイトでも、『サイト内検索』で「シックハウス」を検索すると12記事ほど出てきます。


では、言葉が造られて10年。現在は当時に比べて大きく変わったのでしょうか?残念ながら、そうは思えないのが現状です。

国がこのシックハウス症候群の対策に着手したのが1998年頃。その日本建築学会による第1回研究報告会に視聴参加しました。当時は、まったく未知の学問分野で、建築学のみならず、医学、社会学など、縦割り行政にしては珍しい学術横断的な研究でした。これは、原因が多方面にわたり一筋縄ではいかないことを意味していました。それから、2002年に国会でシックハウス問題に対する建築基準法改正が議決され、2003年7月1日に施行されています。

改正内容は、

  • 有害物質を含む建築材料に等級を付ける
  • 使われる建材の等級とその量によって必要換気量を義務づける

たったこれだけです。
ようするに、人体に害を及ぼす危険性のある材料を多く使う場合は、換気扇をいっぱい付けなさい。それも一年中換気することを義務づけています。寒い冬でも要換気なのです。まるで『常時換気というしばりをやぶって体に被害が出たとしても国はそれに対して関知しません。生活者がそれに関して無知の場合は、設計者・施工者の説明義務違反です。』とでもいっているようです。

等級は、良いグレードから順に

  • 指定無し(例:無垢の木、ガラス、コンクリート、珪藻土、などなど
  • F☆☆☆☆
  • F☆☆☆
  • F☆☆
  • F☆

現在では、ほとんどの材料にF☆☆☆☆(フォースター)の印が付いています。まあ、乱暴に言えばこの印がついていれば、安心はできるのですが、そう単純でもありません。無神経な問屋さんでは、F☆☆☆☆からF☆まで混在在庫させているために、有害物質がF☆☆☆☆に移ってしまったということも耳にしています。

使用材料に等級を付けて、換気量を義務付ける。1998年から始まった研究がここまで実を結んだという前向きな評価はできますが、それですべて良し、問題解決とはいかないのが現実です。この法改正の原因を正しく知っていて、現時点が通過点でしかないことを知っている建築関係者はどれだけいるでしょうか。おそらく、ほとんどいないと思われます。

2003年5月、法改正にあたり、各都道府県の建築士会で運用説明会がありました。まずその説明会の冒頭『シックハウス症候群という病気があります。その病気とは〜』という説明から始まったことに驚きました。そうなのです。建築に携わるプロに対してそのような説明からしなければならないのが現状だということです。住宅に限って言えば、プロジェクトのトップは、建て主を除くと、設計者であったり工務店の社長、あるいは監督です。その役割を担うプロ集団に対し『シックハウスはすでにご存じでしょうが〜』と始められないのが現状なのです。このような状況だと、まだまだシックハウス症候群は増えていくかもしれません。現実的には、すまいを造るときに、完了検査を受けない建築業者が多い。そうすると、いくら法律で網をかけても、するするとすり抜けていく。私の設計した建物は必ず完了検査を受けますが、「そんなの受けたこと無いですよ。ははは」「え!完了検査受けるんですか?」などと鼻高々に豪語する工務店をいくつも知っています。

この法改正後、完了検査で検査員からよくこんなことを言われます。
『みんながこんな家をつくってくれると、シックハウスにならないんだけどねえ。』
正直、うれしいです。
建築に携わる人は、もっともっと真摯にシックハウスにおおいに過敏になるべき。
そして、生活者はもっともっと鈍感になっても安心できるように。
なにも難しくないんですけどねえ。
ちょっとだけ、50年ほど前の家の造り方をするだけでできちゃうんですから。
それに、今のエッセンスを少しだけ振りかけるだけで、現代ならではの快適なすまいが手に入れられる。

長くなりましたが、『ミカン山で秘密基地を造ろう!〜化学物質過敏症』の記事を見て、シックハウスに関する今の現状を見つめてみました。
というわけで、リンさんにトラックバック送らせてもらいます。
いざっ!


[2005.06.21追記]:
シックハウスに関して、私がラジオで話している記事があります。
興味を持たれた方は、是非お聞きになってください。
目次 ? メディアリリース ? 生き活き素材フェア[FM放送]?健やかなすまい[No.6]

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ミカン山で秘密基地を造ろう! - 建築家の目からみたシックハウス (2005年6月21日 13:41)

昨日の記事に、生活空間研究所のgoronさんがトラックバックして下さいました。とても参考になる内容でしたので、皆様にもお知らせいたします。ぜひぜひ、ご覧になって... 続きを読む

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