今年の夏、真空管アンプ好きが乗鞍に集まる機会があった。物好きな大人の林間合宿だ。8月初旬の平日ということもあり、精鋭10名ほどが集結した。明るい時間に着いたのでペンションのまわりをちょいと散歩。帰ってきて外のガーデンチェアに腰掛けているとヘレンメリルの「ユード・ビー・ソ〜」としっかりとした音が聞こえてきた。音はペンションの中から。良く通るボーカルだなあといたく感心。
ペンションに入ると米松合板打ちっ放しでつくられた素っ気ない箱からの音らしい。その中にはアルティックの403Aが。真空管アンプはサンバレーのSV-9T。低域や高域はほどほどなのだが、ボーカルが生々しい。とても印象に残った。
生々しい中域が頭から離れず、ペンションから戻り、早速アルティックの403Aを手に入れてしまった。Mac用にBoseのMM-2というアクティブスピーカー(アンプ内蔵スピーカー)を5年ほど常用してきた。PC用のスピーカーは別物と割り切ってつきあってきたのだが、なんとかあの乗鞍で聴いた生々しい音をMacから出したくなってしまったのだ。
スピーカーユニットが手にはいると早速音を出したくなるのが心情。手持ちの材料で箱をつくってしまおうと思いたつ。物置に以前自作した移動用組み立て式サウナが眠っていた。もうほとんどそれで遊ばなくなっていたのでスピーカーに変身させることに。
まずは、手っ取り早く平面バッフル(板に丸穴を開けるだけ)を造り天井に固定した。もともとこのスピーカーユニットは、ホテルや劇場など建築の天井や壁に埋め込まれることを想定している。とにかく中域が生々しくMacからの音は激変した。Macの音源はiTuneのラジオ。そこからUSBオーディオインターフェイスで真空管プリアンプにつなぎ、真空管のパワーアンプでスピーカーに。デジタル音源とは思えない人間味あふれる音が出てきた。もう、Boseには戻れなくなってしまった。
やはり、80cm角程度の平面バッフルではジャズベースの足取りが物足りない。しっかりとした箱をつくることにした。乗鞍のペンションで印象深かった米松合板打ちっ放しをまねることに。どうせなら、アルティックのビンテージものを再現することにした。幸い、手元の雑誌で特集が組まれていた。その1940年代のオリジナルの箱が紹介されていたのでサイズをコピーすることに。
オリジナルは9mmの米松合板で、前面のバッフルのみ15mmとあった。オーディオの世界、特にアルティックでは米松合板が珍重される。我々建築の世界では、現場のそのへんに転がっている材料。私のすまいでは内装材が全部米松合板。おそらくそのラワンほど緻密でもなく、シナほど柔らかくない米松独特の質が音に好影響を与えるのだろう。ちなみに米松合板の内装では残響音が少なく、会話も自然に聞こえる部屋になる。米松合板が適度に音を吸い、かつ適度に反射するようだ。
中学生以来のスピーカー製作。当時は道具も少なく、丸穴を開けるのに苦労した。スピーカーのラインに沿ってドリルで小さな穴を開けていきギザギザになった丸穴を丁寧にヤスリでなでるのだ。根気のいる仕事だった。今回は「自在錐(じざいきり)」なる道具を仕入れた。5000円ほどで建築関係の職人の店(プロショップ)で手にはいる。
この自在錐で穴を開けるこつは、一気に板を抜いてしまわないこと。ある程度刃が入ったところで中断し、反対側から開けると切り口がきれいに仕上がるのだ。今回は手元にあった米松合板12mmで造ることにした。スピーカーが取り付くバッフル面は二重とした。これで少しはオリジナルに近くなるだろうと考えた。
だいたいの刻みと下ごしらえを丸一日で完了。翌日、それらを組み立てる。たっぷり付けた木工ボンドを乾かすためにまた一日寝かせる。三日目、全体をペーパー掛け。いかんせん、素人の日曜木工なので図面通り刻んでもでっこみひっこみが発生する。特に丸鋸を使って刻んだので、のこ刃の3mm程度のでっこみひっこみが出るのだ。この計算は素人に難しい。
しかし、粗めのサンドペーパーでざくざくでっこみひっこみを取り、細かいサンドペーパーで仕上げるとそこそこ見られるようになってくるのだ。塗装をかけるともっとそれらしくなるだろう。塗装をすると音もずいぶん変わるらしいのでまずは米松合板打ちっ放しでつきあってみることにする。
さあ、音だし。平面バッフルよりもグッと中低域に実体感が出てきた。ジャズベースの足取りも明瞭になった。仕事中のBGMとしては一級品。あくまでもBGM用なので大きな音は出さない。そのまま電話に出ても電話の相手に失礼にならない程度の音量で聴くことが多い。この小さな音で心地よく明瞭に聴くことができるシステムは難しいだろう。真空管アンプは、小さな音にしても音痩せしないらしい。この自作の箱に入れたアルティックも相乗効果を発揮しているのか、小さな音がとても良い。
MacのiTuneラジオを音源としたこの真空管+アルティック403AのBGMシステムはとても素晴らしい。製作後これを天井に固定し1ヶ月を過ぎようとしているが、ますます好きになってきている。全体のバランスはA7のシステムよりも優れているかもしれない。毎日毎日、そばで鳴っているのでそれが私の耳の基準音になってきているようなのだ。
つづく。
うーん、すごいオタク、失礼、マニアな人だー!!
ってか、移動用組立式サウナ
こっちもかなーり気になりますがー!
移動式サウナ。これ結構良かったですよ。
折りたたんで車のルーフに積んで野営地まで持って行く。
それでおもむろに組み立てて、中には薪ストーブ。
薪ストーブの上に溶岩性の石を置いて、薪ストーブをがんがんに焚く。その上に葉っぱで水をかける。すると葉っぱのアロマと蒸気が合板サウナ内に充満して、香りも良いし体もあったまるし。
栃木や九州にまでこれを持って行って遊んでました。
葉っぱは白樺がいいらしいけど。
御お久しぶりです。
以前から気になっていた家のSV-91Bのハムを
消そうとはんだ付けの悪い部分やアースの取り方の
雑な部分などを見直したりし、何とかハムが無くなりました。
嬉しくなって、iPoDをつなぎ、 JBL model 1をセッティングし試聴。
イヤイヤ、エラとサッチモが目の前で歌っています。
声が生々しくなりました。
それにベースラインもはっきりと、低音が伸びるようになりました。
今まで、ハムに隠れていた音が出るようになったみたいです。
MILESのPLUGGED NICKELの演奏も、tpも前に出るようになりました。TONYのdsも良いです。バンド全体のリズムを彼が引っ張っています。
お久しぶりです。濱さん。
ハムがあったですか。そっかー、ハンダのつけ直しで改善できるんですね。ハンダ握りたくなったらリフォームすればいいのか〜。
501のコンデンサーをビタミンQにするといいとおととい先輩に言われました。今度、やってみようと思っています。
91Bって筋骨隆々、501はしゃなりしゃなりってよくO橋さんが言ってますよね。やっぱりそんな感じなんでしょうか。
実は9Tを製作したんですが、PPの特徴なんでしょうね、しっかり低域を制動しているような感じです。今は9TがA7。501がBGM用の403Aに繋がっています。
>嬉しくなって、iPoDをつなぎ、
わかります。真空管を通すとデジタル音源でも音が活きてきますよねえ。
こんにちは
91Bは一音一音が力感を持って音離れよく飛んでくる感じです。
JAZZの緊張感はよく再現されるような。
低域はシングルですので、プッシュプルのようにゴリッゴリッと芯をもって筋肉質に鳴るような感じには聞こえませんでした。
自宅試聴しています。
対する501SEはふわっと柔らかく、距離を置いて聞いているような感じです。くつろいでカクテルジャズ風に聞くような。
ご自身で廃材?からSPBOXを綺麗にとはスゴイですね。
上記のとおりですけど、プリアンプとの組み合わせでも千変万化するのですね。
SV-63は単独では結構パキパキした音なんですが、管球王国17号是枝プリが最近アース回路が変更されて、配線材も1本だけ好みに合わせた交換がされました。
これと組み合わせると、フワーッとガルネリの外へ奥へとオケでの包まれる感じがよく再現されるようになりました。うっとりしながら聴いています。
91Bにも是枝でしょうか。
他方501SEでは、大西プリの切れ味鋭いJAZZマニアの大西さんのパキッとした音調が締める作用もあって好適であったり。
>ご自身で廃材?から
ぷっ!そのとおりです。
もともと父が何でも造ってしまう北海道の黒板五郎(爆)だったんで、小さいときから工作少年だったんです。その流れで、建築デザインの道に。だから、電気のことはまったく不得意なんですが、造作モノはだいたいのことはやりくり出来ますねえ。道具もそんな父と一緒に住んでるんでだいたいのモノはそろっているのですよ。自分の道具もありますが。
KOBAさんも父上からの血統をずいぶん引き継いでいるようですモノねえ。血は争えないようです。
>501SEはふわっと柔らかく、距離を置いて聞いているような感じです。
9Tと比べているだけですが、まさにそのとおりですね。
きっと、私はKOBAさんの20年後ろをよたよた歩いている感じですね。きっと。(爆爆
最初、91Bを聞いたのは2,3年前キット屋さんの
物作りコンテストのデモでシングル、PPを聞き比べ大会あり、
聞いたのが最初です。
他の真空管キットメーカーで2A3、300Bの聞き比べを
したことがあったのですが、
その時は踏み切れず購入しませんでした。
中学の技術家庭科の授業でラジオを作って以来、
半田コテを握った事が無かったし(20年以上!)。
しかし、、、、、キット屋さんのデモで91B聞いてから、
300Bにはまってしまい、買っちゃいました(ああ、恐ろしい)。
何とか組み立て聞いて居ましたが、また、半田コテが握りたく
なり、今度はプリです。
今度は去年真空管オーディオフェアーで722のマッキンとラックス・タイプの聞き比べがあり、一番気に入ったのが91Bと722(マッキン)の組み合わせで、ホール全体の中で聞いているライブ感が心地よく感じられました。フワッと音が浮いていて、それでいて楽器の定位がはっきりしている。
キット屋さんのアンプで他にいいなと思っているのが、
SV?2です。あの巨大なプレミアム845は大味かと思っていたのですが、豪快にして繊細な感じがしました。
機会がありました、ご試聴下さい。KT88とも又違った感じで
僕は845の玉が気に入ってしまいました。