今年の夏、葉山の海のそばに建てたすまいの点検に行く。
大きな問題はなく、2〜3カ所の不都合を確認し、手当の方法を説明した。
最後に『このカビはどうしたものでしょう』と言われるので見上げると完成時の美しさはすっかり無くなっていた。
軒裏の垂木(たるき)や野地板(のじいた)をあわらしにすることは私のデザインでは多い。基本的に耐候性のある塗料(シッケンズなど)を塗ることが多い。若干着色することで紫外線による木部の色変化を目立たなくするのと防虫防腐が目的だ。しかし、建て主はあくまでも色を付けることに反対した。
工事中、いろいろ検討した結果、木の色をそのまま生かしつつできる限りの方策を試すことにした。その方法として、防カビ目的にオスモカラーのウッドプロテクターを下塗りし、仕上げにオスモカラーのエキストラクリアを使うことにした。どちらも内装用なので外部での使用は基本的には適しない。そのことは建て主も承知の上でチャレンジすることにした。しかしながら1年後、思いもよらないカビの猛攻撃にあってしまった。やはり、外部では耐候性のある防虫防腐目的の塗料の方がよいようだ。
工務店の担当者と私で原因を模索した。塗装が適しなかったのか。建築場所によるものなのか。手がかりはなかった。工務店はカビに関しては免責であり、カビ取りとそれ以降の塗装は有料だというので、設計者の私と建て主で模索解決すことにした。
まずは、カビを取り去ることにチャレンジ。木部のカビ取り専用の薬品を手に入れ水で希釈する。基本的には漂白剤なのだが、木部を痛めず本来の色合いと風合いを再現するらしい。しゃぶしゃぶ状態の液体をコテばけに染み込ませ垂木と軒裏に塗る。
塗るとしたたる薬剤がカビで真っ黒になる。全体に塗った後、1時間待って水拭きするのだそうだ。本当にカビが取れるのか全く信じられない。薬剤を染み込ませたはけでこすっても落ちるようなカビではないのだ。
1時間経ったので、水をかける。なんとなく、黒い色は薄くなったように感じるが、まだ、きれいにはなっていない。もう一度、全体の水を拭き取り、薬剤を塗布する。
2回目の薬剤を落とし、水拭きをすると場所によってはきれいな木部が再現されてきた。同じ軒裏でもカビの強いところと弱いところがあったのだろう。弱いところは2回の薬剤塗布できれいに戻ったのだ。
カビの強いところには、3回目の塗布時サランラップを巻いた。こうすることにより、薬剤が乾燥しにくく、かつ木部により浸透するらしいのだ。左の写真は、薬剤塗布とサランラップ巻き付け後1時間ほど経過したもの。もうすっかり、カビの黒さは抜けているのがわかる。
午前中からはじめて夕方に終了。この手の仕事は基本的に塗装屋さんの仕事だ。プロに頼むともっときれいに仕上がるのだろうが、お金もかかる。材料費だけだと5千円ほど。私は自分の経験のためと思い建て主と一緒に作業した。思った以上にきれいにカビを取ることができて建て主共々喜んだのだ。
次は、きれいになった軒裏と垂木にやはりシッケンズを塗ろうということになった。
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