ニュースタイトルワードが当初の『姉歯設計事務所』から『耐震偽装』に変化してきた。
事件が一個人の設計者の問題ではなく、組織犯罪という見解のあらわれだ。

奇しくも、日本建築学会が発行する『建築雑誌2005.11』で建築関連法とその問題点なる特集が組まれている。それらをあらためて読み返してみると、今回の事件は想定内の事件なのだとあらためて思い知らされる。一部抜粋する。

○専門家資格のあり方〜

建築士制度と建築確認制度は表裏をなしており、社会システムとして様々な法制度とのかかわりのもとで建築の業態ができあがっているために、「責任の所在が見えない」「性能規定化が表面的な煩雑さを生むだけになっている」などの問題点が指摘されているにもかわらず、解決に向かった動きが見えない。第1項目でのべたような社会システムの中で建築実務にかかわる専門家としての資格のあり方について、本会としても責任の所在が明らかとなり、ユーザーにとっても信任しうる専門家のあり方について、法律を含めたシステムの検討を推進すべきである。

○建築設計者の倫理〜(一部抜粋)

米国では、医師、弁護士、建築家といった職業はあくまでも個人として業務に当たるものと考えられ、日本でも弁護士がそうであるように会社組織にはなっていない。また、違法行為やクライアントや社会の不利益になるようなことは職業倫理で厳しく禁じられている。
しかし、日本の現状は、違法建築への加担、金品やサービスの供与、入札での談合などが根絶されてはいない。法の整備とともに、職能団体によるきめ細かな対応のもとに倫理の徹底をはかることも必要になる。

※建築雑誌2005.11、「法律に対処するための枠組み造りに関する特別調査委員会」最終報告より抜粋


事件が起こるまでもなく、想定内の闇の部分を根絶しなければならないという時期に来ていたようだ。最終的には一個人が手を下した事件なのだが、それに群がる金目当ての組織人、その違法建築を生み出した社会システム、全てにおいて歪んでいた部分が露呈した形だ。建物が大きくなればなるほど、建築専門家が個人としてかかわる度合いが薄れてくる。群がる金目当てのヤカラも増えてくる。そんな状況でこそもっとも重要なのは、個人個人の道徳倫理だろう。構成する個人個人が職業人として人の道に反しない心構えがもっとも大切だ。とくに、社会資本、個人資産を扱う建築という業態は、特別に意識してかからなくてはならないのだ。

今回の事件の関係者の動きがあきらかになるにつれ、なんとも見苦しい場面に遭遇する。
「俺は知らなかった」
「姉歯には逢ったこともない」
「個人的な営業経費を確保しただけだ。」
「(建築確認で)『大丈夫』とされたものを建ててきたが、耐震基準にあわないマンションが出来てしまった」

まあ、黒となった政治家からは何度も聞いたワードだが、なんとも見苦しい。
今後、どのように事件が明るみになり、解決されていくのか興味深い。
直接の被害者であるマンション住人は、一刻も早い解決が望まれるであろうが、国民の税金でもって解決されるのはごめんこうむりたい。仮にそうなったとしたならば、金に群がったヤカラは救済されて、まじめに税金を払って働いている国民はバカを見るのか。
民間企業の不始末は、自ら責任を取って対処してもらいたい。

▼ コメント(2)

今回のこの事件、氷山の一角と言われています。
だとしたら、想像するだけでそら恐ろしい気がします。
今回はマンションという集合住宅が舞台になったので、いろんな意味でことの重大さに注目が集まっていますが、個人住宅でも同じような裏の取引や無責任な仕事がたくさん行われているんじゃないでしょうか。

「直接の被害者であるマンション住人は、一刻も早い解決が望まれるであろうが、国民の税金でもって解決されるのはごめんこうむりたい。仮にそうなったとしたならば、金に群がったヤカラは救済されて、まじめに税金を払って働いている国民はバカを見るのか。
民間企業の不始末は、自ら責任を取って対処してもらいたい。」

には全く同感。当事者の経営者は、さっそく資金不足を理由に公的資金の利用等、逃げの姿勢を見せている。
もしそんなことを許してしまったら、この手の現状は間違いなく悪化していくことが明白。
「このような事態を引き起こしたら、どうなるのか。」かが、身にしみてはっきりわかるような責任のとり方をぜひさせてほしいものだ。

今回の事件は、当初『建築基準法違反』と扱われてきていましたが、それだけではいかがなものかということを感じています。
たとえば、住宅が完成したときの完了検査で、「違反が5つあります。それらを是正したら完了検査済証を出します。」と言われたとします。
そのままにしてしまったら、『建築基準法違反』です。しかし、それらのダメ部分を直して再検査してオッケーだったら『建築基準法違反』ではなくなります。

今回の「姉歯」「耐震強度偽装」などは、放火犯に近いくらいの重い罪があると思うのです。簡単に人の命が多く犠牲になるのをわかっていてやる。これって、『建築基準法違反』だけではすまされない大きなシグナルを含んでいると思うのです。
組織で仕組んだ大きな人命無視の詐欺事件と扱って、かかわった人間が皆平等に裁かれてしかるべきだと思うのですが。

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