前回の『葉山の街並み[ネットコンペ03]』のつづき。

このネットコンペの建て主の希望はRC造である。総予算3500万円で、できる限り60坪に近くも条件。単純に工事費だけに絞るとざっくり3000万円。ということは、50万円/坪で実施。木造だとしてもかなり厳しい予算。RC造となると、気が遠くなる数字だ。その上、RC造の場合は外断熱(そとだんねつ)に限る。内断熱(うちだんねつ)は不幸の館になるので採用しない。さらに予算的に厳しくなるのだが、こればっかりは仕方がない。

木造の場合一般的な予算であれば、外断熱は予算的にもったいない。一般的な予算とは、50万/坪〜80万/坪程度。それ以上予算をかけられる場合は、外断熱を視野に入れても良いだろう。しかし、そうでない場合は他に予算を割り当てた方がお金の使い道としては良い。

それは、木造の場合、通常の充填断熱よりもコストをかけて外断熱にするメリットが少ないからである。木造の躯体すなわち土台や柱、梁などを厳しい熱環境(夏の暑さや冬の寒さ)から守り、断熱の切れ目無く、内部環境を外気と遮断する性能は高まるとしても、それ以外の何者でもないのだ。それ以上に、施工不良による外壁の脱落や断熱材と躯体の間にシロアリが住み着くといった副作用の方が現状では怖いのだ。


では、RC造の場合はどうなのか。

まず、内断熱による不幸の館は避けなければならない。これは外壁をコンクリート造としてその内側に断熱材を取り付けるやり方である。関東以西のマンションの多くは内断熱で造られている。住んでいる方はご存じだろうが、北側の壁は冬になると結露が発生し、カビだらけ。そんな環境で健康に暮らそうとするのはいかに大変なことか。何故そのようなことになるのかは、簡単。外気にさらされて冷たくなったコンクリートの外壁に、生活していて当然発生する生活蒸気が部屋側のコンクリート外壁に冷やされて水滴が着くのである。夏の暑いときに冷たく冷えたビールが入ったコップのまわりに水滴が着くのと同じ理屈。いくら部屋側に断熱材が貼ってあろうがなかろうが生活蒸気はコンクリート壁に簡単に到達してしまうのだ。

これを外断熱にすると、コンクリートの外壁は外気温から遮断される。つまり、外が寒くても断熱材で遮断されているので、コンクリート壁は冷たくならない。ということは、北側であっても結露が生じにくい。さらに、外気温と遮断されたコンクリート壁は、一度暖まると冷めにくく、冷たくなると暖まりにくい。このことを専門的には、蓄熱容量が大きいという。これは、冬はコンクリートの壁に直接太陽光をあてたりする建築的工夫で熱エネルギーを蓄えることができたり、夏はできるだけコンクリートに太陽光があたらない工夫をすることで、ひやっとする空間を造り出したり、エアコンの冷たさをコンクリートに蓄熱させたりと、なにかと都合が良い点がたくさん出てくるのだ。
木造の場合は、躯体の蓄熱容量が小さいために、外断熱にするメリットがここまで大きくならない。


だから、RC造は外断熱にしなければならないし、木造の場合はその必要はあまり無いのだ。私が生まれ育った北海道では、この外断熱の歴史が古くかなり研究されている。マンションであっても、外断熱は当たり前。温暖な葉山であっても、RC造は外断熱しかない。

※参考

 ●北海道立北方建築総合研究所〜『住まいづくりの基礎知識』
 ●ブロック造、鉄筋コンクリート造のポイント(外断熱のすすめ)

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