午前中、Y邸の実施設計。構造を決め込む。構造のひとつひとつを決めていく作業は楽しい。全体デザインの本質はここにある。本来、スケールが1/100レベルの基本プランを決めると流れ作業で構造を決めていくことができる。場合によっては、構造設計者とコラボレーションする。懇意にしている工務店さんはプレカット業者が適切(経済的?)に構造を決めていくから大丈夫とも言う。しかし、基本プランが決まったあとの1/30〜1/50レベルの構造設計をするのが楽しくて仕方がない。好きなのだろう。台風が来て予想以上の風が吹いたらどうするか。地震が来て予期せぬ部位に破綻がきたさないか。想像を遙かに超える自然との闘いは脳内を活性化させる。

昼飯は外で食うことが多い。今日は野菜が食べたかった。だから、サンマー麺。麺好きの私が野菜をたくさん食べたいと思うときは、サンマー麺、もやしそば、タンメン。ちと番外で、レバニラ定食。相棒のさるこに聞くと、「一番」でもいいという。めずらしい。で、サンマー麺なら「一番」しかないと思っている私は即決。軽トラで5分くらいか。「一番」に着くとスポーツ新聞は出払っていた。サッカー・ワールドカップを目前にしてスポーツ新聞が楽しみで仕方がない。手持ち無沙汰にしていると、スポーツ新聞が空いた。読みふけっていて何気なく顔を上げると元所員のKさんだ。続いてTくんも来たようだ。声をかけてきた。

所員の入学を断り始めて7〜8年になるだろうか。独立した13年ほど前は、千人の設計事務所にするぞ!と思っていた。しかし、その思いとは裏腹に自分の目の行き届かない細かいことが多くなることに危機感を感じるようになった。ひとまかせにできない性格なのだろうか。うまく所員を使うことができない性格なのだろうか。いろいろな想いが交錯して卒業生は出ても新入生は受け入れなくなった。卒業生は5人。ある時期、35歳の船長に船員が6人。それでも7人の船は毎日が楽しかった。暗夜行路ながらも全員いきいきしていたような気がする。舵取りを躊躇して卒業生はそれっきり増えることはなかった。

T君はまるで変わっていなかった。二人が「一番」に入ってきてから、スポーツ新聞に読みふけるふりをしていながら、なんて声をかけようかと考えていた。「建築、うまくなったか?」「一級は取れたか?」「忙しいか?」。食事が終わり席を立つとT君から声をかけてきた。「ホームページ新しくなりましたね。」「...?。ああ...一年前にサイトデザインを変えたからね。」「前のも良かったですよね。犬・猫とか佐山さんらしくて...」「どんなんだったっけ?!」。ぶはははは、T君は相変わらずである。ホッとする。卒業した5人がどうなっているかはたまあに気になるものだ。数年だけだが、ともに同じ釜のメシを食ったのだ。船長としてその後の道しるべとしてきちんとした背中を見せることができたのか。気になるのだ。相変わらずのT君の天然さを心配する筋合いではないのだが、心配してしまうのは正直なところだ。建築うまくなれよ、田中君。

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