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元旦。頭の片隅に仕事のことがうずうずしているが、やはり正月くらいはのんびりしたい。昨年夏に仕入れておいた真空管アンプキット(SV-3488)を製作する。このタイミングを逃すとまた日常の渦に巻き込まれてしまいそうだったから。アルコールは断ち、ハンダコテを握ることにした。しかし、陽の昇っている間は落ち着いて部品と格闘することができず、陽が暮れてから集中する。夜明け前までハンダコテを握り、8割方終了しあとは明日のお楽しみとした。

翌日、正月二日。午後再開。2時間ほどで全行程終了。電源を入れ所要部分をテスターでチェック。チェック行程道半ばで、『ボンッ!〜〜〜〜(きのこ雲)』。コンデンサが爆発。顔の直撃は避けられたが、顔横15cmで爆発。唖然とする。今まで、真空管アンプ製作は簡単なものから始めて5台つくってきた。今回で6台目。割と集中して慎重にやる方なのでほとんど一発で仕留めてきた。しかし、今回は爆発したのだ。気を取り直し、冷静に状況を見つめた。組み立てマニュアルを見直すも原因わからず。販売した「キット屋」は1/8まで正月休み。しかし、店主とは顔の見えるお付き合いをしているのでダメ元で状況をメールで送る。休みにもかかわらず技術担当の方から返信。おとそ気分だっただろうに申し訳ない。

正月四日。爆発した代替部品が届く。あらかじめメーカーが配線してあったコンデンサのプラスマイナスが逆だったのだ。早速、取り替える。今度は爆発しないが、ノイズが大きい。気になって仕方がない。ここからが本当の苦難の始まりだったのである。そして、やっとその苦難を乗り越え先ほど本来の音を出し始めたのだ。正味、完成まで9日。はじめて味わった苦難のアンプ作成。私自身の忘備録、そして同胞への失敗事例として、そのプロセスを克明に残しておきたいが、もうしばらく落ち着いてから記録することにする。その道のりはあまりにも険しくも楽しい趣味の道なのだ。


●2006.12.30

私の相棒となって2年目を迎えようとしているiMac(G5、20inch)が全く起動しなくなる。前兆は2週間くらい前からあった。暮れなのであきらめモードでマックサポートに電話。すると気持ちよく対応してくれる。馬鹿がつくくらい丁寧な対応にあきれながら長時間受話器を握る。最後の最後に、私のiMacは、リコール対象のマックだったと聞かされる。「ロジックボードとパワーサプライ」に問題があるらしい。APPLEのサイトに行くと対象シリアルナンバーが掲載されていて、みごとに該当していた。さるこのiMacも可能性があるようだ。年明け1/4に宅配業者が引き取りにくるということで手続き終了。メールもネットも全く音信不通になるのが嫌だった。受話器を置くと、かねてから物色していたMacBookを仕入れに走る。年末商戦真っ盛りのヨドバシカメラで大人買い。店員を一人捕まえて、あれがほしいこれがほしいとアドバイスを求める。突然出費は痛いが、電脳生活がライフラインとなっていることをあらためて知る。


●2006.12.31

最低限メールとネット環境、そして直近の仕事環境だけでも構築しておかなければならない。仕入れた夜から夜更けまで最低限の構築をする。新しいマックの頭脳は、PowerPCからインテルへと変わっていた。そのために今までのMacOSX対応のアプリケーションでは動くものと動かないものがある。せっせとそれらを確認し、動かないものはダウンロード購入。世の中便利なものだ。真夜中でも必要なものは購入できる。それにしても、クロック周波数1.8GHzと2.0GHzでは大きく違う。なにしろ、起動が早い上、アプリケーションの起動もすこぶる早い。数字上では、たった0.2GHzの違いだが、体感的にはずいぶん違う。20inchの画面で仕事をしていたのだが、おニューのMacBookは13inch。こいつが私のビジネス相棒になる可能性が大きい。一夜明け、残っていた大掃除をする。しかし、起き抜けから腰が痛い。寝ている間にひねったのだろうか。つらい。窓掃除を終えたところでギブアップ。陽が暮れて、北海道式の大晦日宴会が始まる。おせちは私の母がつくり、カニすきを私たちが用意した。除夜の鐘を聞きながらWelcom2007のサイトを更新。


●2007.01.01

お昼過ぎ、歩いて10分ほどの近所の森戸神社に初詣。朝一番で行った父曰く、「がらがらだったよ〜」。に気をよくして午後から行くと大行列。あえなく、引き返す。翌日、午前中のうちに仕切り直し。家に戻り、半年以上寝かした真空管アンプを製作開始。これまではネットで購入して到着するやいなや製作開始していたのだが、諸事情が重なって手をつけられずにいた。おいしいワインをじっくり寝かせるがごとく、常に大きな段ボールを横目にこの日を待っていたのだ。いよいよ開封。


●2007.01.02

初詣リベンジ。神社では「2礼2拍手1礼」が基本。二組前の30代くらいのおぢさん。柏手を4〜5回打つのに感心。いろいろお願いしたかったのだろう。おみくじを引くと私は小吉。何事も用心してかかれとある。ここ10年くらい大吉を引いたことがない。大凶もない。毎年、用心するようにと言われている。やれやれと家に戻ると、真空管アンプの着地点で大爆発。やはり、神のお告げは間違っていなかったようだ。


●2007.01.03

さるこの旧友がさくらの顔を見にやってくる。私も旧知の仲。話を聞くと、広島でアトリエ付き住宅を計画しているらしい。もうすでにいろいろ始まっていて進んでいる模様。海の見える山の上『ぜひ遊びに来てね〜』と。国際的に活躍するご主人画家とのすまい。デザインしたかったが声がかからなかった。残念。日本全国どこまでもMacと一緒に行くのになあ。釣り竿持って。とにかく業者にうまいことだまされないように祈るばかり。入れ替わりに静岡の友人夫婦が遊びに来る。和牛、和豚ですき焼きパーティー。わいわいがやがや夜が更ける。


●2007.01.04

宅配業者が12:00〜15:00にマックを引き取りに来る予定。待てど暮らせど業者は来ない。夕方電話。「手続きが遅れた関係で今さっき連絡が来ました。今から伺ってもよろしいですか?」やれやれ。つまづきながらも私のiMacが引き取られていく。無事にハードディスクだけは初期化されないで戻ってくることを祈るばかり。最低限のバックアップしかとっていなかったので、初期化されたら一貫の終わり。大変なことになる。


●2007.01.05

暮れには終わっている予定のプランができていない。頭の中では発酵しているのであとは形に描き出すのみ。もんもんとしながらイエロートレペに赤鉛筆で絞り出す。なかなかうまくまとまらない。この時期にいつも思うこと。「いつも最後には納得いくデザインに仕上がるじゃないか」。それを信じて赤鉛筆を走らせる。たまに、完成していない真空管アンプをいじる。そして、また赤鉛筆。そんな繰り返し。すると、さるこのマックも起動しなくなる。2年前に使っていたiBookを引っ張り出し設定。やれやれ。いろんなことがやってきては足を引っ張ってゆく。いったい今年はどうなるのだろうか。小吉のおみくじが頭をよぎる。くじけるな。


●2007.01.06

マックサポートに電話。暮れに入院したマックと同じ時期に買ったiMacなんですけど。さくさく手続きが進む。真空管アンプの店主とメールでビジネス談義。小さな会社を大きくする過程で悩む組織論と個人の裁量。10年ほど前、私の事務所に所員が6人いた。私がサラリーマンをやめたきっかけはどんなに一所懸命やっても、個人よりも会社をほめられることに嫌気がさしたこと。しかし、6人所員時代は佐山の分身が6人いてほしかった。あたりまえだがそれはできなかった。千人の設計事務所にしよう!という野望は、私の仕事に対するこだわりで達成できなかった。ひとつひとつの仕事のディテールに首をつっこまず経営者になりきることができれば、可能だっただろう。しかし、それができない自分を知ったときに目から鱗が落ちたのである。そんな話の一端を真空管アンプの店主とあれこれ。


●2007.01.07

さるこのいとこ家族が二組来葉。さるこの母と叔母同士でお年玉はやりとりしないようにと事前打ち合わせができていたらしい。いとこ家族の子供は4人。気を遣わないようにという配慮らしい。しかし、子供にとってお正月の楽しみはなんと言っても「お年玉」である。それを合理的な判断で無しにしてしまうのはどうか。年に一回の大収入の時期なのだ。私が子供の頃、お正月に来たお客さんが何もなしで帰るときほど落胆したことはない。夕方、にぎやかな子供たちが帰って、明日のプレゼンに向けて最終仕込みに取りかかる。


●2007.01.08

葉山を出て一路藤沢へ。思ったほど道は混んでいない。が、鎌倉から大仏、鎌倉山へ抜ける裏道を通って江ノ島に出る。順調。しかし、朝まで、ねばっていたこともあり、おなかの調子が今ひとつ。予定時間に間に合うも近くのコンビニへ走る。少し遅れて到着。今後の方針を見いだすためのたたき台を説明。無事にプレゼン終了。帰りは葉山まで大渋滞。由比ヶ浜を過ぎる頃、雨雲と夕陽。不思議なコントラストを堪能。暮れから気にかかっていたひと仕事を終えた安堵感からか周りの景色がよく見える。薪ストーブが気になっていた葉山堀内の家に寄ろうと思っていたが、あまりの大渋滞に時間が無くなる。ご主人と薪ストーブの焚き方について雑談したかった。


●2007.01.09

気持ちの余裕ができたところで、真空管アンプの最終調整。一昨年ペンションで同じ釜の飯を食ったN響の横山さんが同じ機種の製作記をかかれていた。それをじっくり拝見すると見えてきた。メーカーがあらかじめやっている予定の配線が正しくなされていなかったのだ。早速ハンダごてをにぎり改修。我ながら会心のでき。まったくノイズが消え、すがすがしい音が出てきた。やれやれ。今回のアンプ製作はメーカーの下請け業者のミス3連発で右往左往させられたようだ。中国にも「魔の金曜日」があるのだろうか。早速、完治のメールを店主に送る。アンプの電源を入れ放しにして、昨年横浜にできたイケアに行く。さすが正月明けの平日。ゆっくり見ることができた。我が家に必要なもの。今週末プレゼンに必要な資料。あれやこれや見ているとすっかり予定時間オーバー。暗くなりかけの第三京浜をすっとばす。やっと、正月モードから抜け出すことができそうな気配である。

▼ コメント(2)

佐山さん

こんにちは。とうとう完成しましたか。早く製作記をUPしてください。楽しみです。SV501SEとは、またひと味違うんでしょうねえ。私の方もSV501SEが昨年末に到着しているのですが、まだ開封もしていません。とりかかるのに、ちょっと気合いが必要なんです。

大沢さん、こんばんわ。

気合いが入るまで時間かかりますよね。
気持ちよくわかります。
熟成するまで楽しむことですね。時間を。
3488の製作記を書くまでも時間がかかります。
でも、書きますよ〜。そのうち。

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