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先日、ある企業のトップとお会いした。社員のレベルアップ。底上げを狙ってオフィスを改善したいらしい。かなりその視点で視察や研究をしていると感じた。話の合間合間にため息が漏れる。いろいろそうとう疲れているらしい。申し訳ないが、寅さんのたこ社長を思い出した。社長の思いと社員の思い。なかなか合致しないのが世のつれ。社長と社員の求めるものが異なるからだ。

「IT関連の社員は自分のデスクに向かって黙々ですか?」
「いやいや、社内で社外で何が起こっているのかを共有した方が良いのでパーテーションなんか全くなく、みな他の社員や出来事に首をつっこみわいわいがやがやですよ〜」
「ほ〜...」
「でも、佐山さんも新しいことや世の中の出来事を吸収していかなければならないから大変ですよね〜」
「そうでもないですよ。私の仕事のスキルアップは自分の生活を豊かにすることにつきます」
「へぇ...芸術って、いいですねえ」
「建築設計って芸術ではないんですよ。依頼者があってはじめて成立するのが建築設計。依頼者がいなくてもできるのが芸術。デザインは芸術ではないんです」

これを言った後、はたと気がついた。『じゃあ。建て売りは芸術じゃないか!』生活者からの依頼ではなく、そこにすまう家族を勝手に想像してデザインする。そこには設計者の思いが充満する。しかし、世の中の建て売りはほとんど悲しいものになっている。何故か。買ってほしいという下心が見え見えだから。あなたにもあなたにもそうそこのあなたにもぴったんこでしょ?と言いたげなものに成り下がっているから。本来は建て売るんだから、現在の社会に対してここ一番の改善策であるべきで。親殺しとか子殺しとか、いじめとか自殺とか、なんとかかんとか...。そこまで行かなくても売る側の『俺が住むんだったらこんな家だ!』みたいな意気込みがにじみ出ていないと本気で買う側は、張りぼてを見抜いてしまうだろうに。しかし、現実はそうではない。建売業者の儲けの温床にしかなっていない。


●2007.01.26(金)

私の母親の誕生日。この日を正確に覚えるのに46年かかった。今年はじめてちゃんと思い出した。午前中、近所で土地探しをしているNさんと売り地にいく。約200坪くらいの旧家が分譲地になるらしい。また、屋敷林が消える。時代の流れとはいえ、どんどん緑が減っていくのは心が痛む。私に、建て主にできることがあれば積極的にやっていきたいとおもうのだが。その後午後から夜更けまで、翌日の打ち合わせの資料整理と模型作成。ずいぶんとコミュニケーションを重ねてきたのでプランはさくさく。デザインもほぼ見えてきた。かゆいところのデザインはあとのお楽しみにしてざっくりと方針を固めてゆく。


●2007.01.27(土)

真冬のはずなのに暖かい。地球温暖化を実感する。しかしながら、薪の消費量は例年通りのような気がする。午前中、昨年末完成した堀内のすまいにお邪魔する。1ヶ月ほど生活した上での細かい不具合をお聞きする。年末仕入れた薪をそれ用にデザインした場所にしっかり積んでいる。うらやましい。日当たりも良く、今シーズンでも使えそうな感じ。午後、藤沢へ。あまりの天気の良さにハンドルを握りながら、まぶたが閉じる。プランの説明はほどほどに。すまいの計画をはじめるきっかけやその後の経緯をお聞きする。あたりまえだが。人それぞれ。私が加わることで、生活がステップアップしてほしいとねがうばかり。


●2007.01.28(日)

旧同僚、旧先輩のご家族が来葉。何度も夜の町やキャンプに行き、大酒を酌み交わした仲間。同僚は最近畑を借りて野菜を作っているという。たくわんと白菜の漬け物を持参。先輩は父親の介護に土日は専念すると宣言。仕事三昧と自分の思うままの生活にピリオドを打つという。みな、いろいろな事情でステップアップしているらしい。しかし、二人の奥方は終始淡々と冷静にしていた。呑みすぎたからなのかもしれない。日が暮れて夕方がやがやと帰って行く。息抜きの一日。


●2007.01.29(月)

来シーズンの薪の仕入れ。鎌倉の堆肥センターへ。先週、藤沢片瀬の打ち合わせのついでに行ったのだが、出物はまるでなし。しかし、その後、一色のお客様から「佐山さん、ありましたよ〜」と土曜日電話をもらっていたので、そそくさと仕入れに行く。到着すると、遠目にケヤキが!さっさと手続きを済ませて薪場へと乗り込む。量は少ないが手頃な丸太がそこそこ。昔は、なんでもかんでも薪になりそうなものは持ち帰ってきたのだが、最近は『運びやすい。割りやすい。香りの良い広葉樹だけ』と贅沢になってきているのだ。私がせっせと丸太の山を攻めているとさるこは堆肥になりかけている宝の山を見つけたようだ。さくらの枝だ。燃やせば3日ほどで終わってしまいそうな量だが、それはサクラ。ごちそうだ。それを掘り起こしている我々をみて堆肥センターの人が声をかけてきた。「見つけたね!(ニヤリ」「はい〜」

●2007.01.30(火)

朝から掃除。我が棟の8坪3層=24坪を掃除機。床のぞうきんがけ。来客がある日は掃除から始まる。一週間に2度くらい来客があるとちょうど良い。家の中がすっきりする。ぞうきんがけは「オレンジエックス」。これをバケツにキャップ一杯入れどしどし床を拭いてゆく。拭いてもとれない生活感で黒くなった床でもぷ〜んとオレンジの良い香りがして心地よい。薪ストーブにかけた寸胴にハーブエキスをちょいと入れると完成。犬猫がいる我が家でもさっぱりと獣臭が消える。午後一、来客があり、冒頭のITオフィスと社長の新居の話に花が咲く。夕方。上大岡のヨドバシカメラへ。特売のDVDプレイヤーが入荷したと連絡が入る。うちの両親への金婚式のお祝い。思えば、銀婚式はおろか、還暦など、一切気にかけていなかった。気にすることもできないくらい自分に一生懸命だった時期だった。はっと気がついて、正月に『ところで結婚何年目?』と聞いたのがことの始まり。『還暦のときもなんにもしてもらっていませんね!』と言われて、すまなかったなあという思いで一杯に。おやじは「ターシャ・チューダー」が好きという。1915年生まれの女性。ガーデンや住まいのことに楽しみを見つけるすてきな女性。おふくろは石原裕次郎で決まり。DVDをアマゾンに注文。元気で長生きしてほしい。


●2007.01.31(水)

早いもので、正月から1ヶ月が過ぎる。最近は、9:00~17:00に仕事を集中させる。約25年前サラリーマンになった頃、『家族で晩ご飯を食べない』ことに驚いた。昼は別にして、朝と夜。これはやはり家族とともにご飯を食べるものと思っていた。大学を卒業して、一部上場企業に就職するとみな夜更けまで働いていた。一度、夜は家族とご飯を食べないんですか?と先輩に聞いたことがある。何いってんだおまえ!みたいにあしらわれた。その後、そんな企業戦士の生活に慣れてしまい私も家族と夕ご飯を食べないことが当たり前になってしまった。しかし、それではいかん!と思い、昨年末から17:00には仕事を終え、きちんと人間らしい時間に夕飯をみんなで食べるようにしたのだ。簡単に10Kg体重が落ちた。まずは効果があったらしい。


●2007.02.01(木)

朝、4:00から仕事。夜はめっきり仕事が手に着かなくなった。それも晩ご飯を食べると仕事モードが終了してしまうから。以前は、晩ご飯は食べずに夜の夜中まで仕事をしていた。その習慣は良くないので、晩ご飯を食べて仕事は終了。忙しいときは朝早く起きてやることにした。なかなか良い。朝新聞が配達される前に起きて仕事をするのは気持ちよい。夜更かしするより何故か心地よい。早起きは三文の得というのが何となくわかる。始業開始のチャイムが鳴る9:00にはその日の大半の仕事ができている。なんと気持ちの良いことか。しかし、毎日これができるかというと不思議とできないのだ。土曜日に打ち合わせをするプランの見通しがつく。


●2007.02.02(金)

終日、明日の打ち合わせプランを練る。方針は見えても、細かいところが気にかかる。時間が許す限りスタディを繰り返す。30坪の土地の住まい方は車の置き方で全てが支配される。庭がほしいとなれば塾考が必須。陽当たり、庭との関係、車の置き方、燐家との関係。30坪の土地にスキ無く思いを詰め込む。依頼者ご家族に説明すること説明しないことぎっしり詰め込んで打ち合わせに備える。あえて説明しないこととは、この1軒のすまいをつくることによって私が発信する社会的意義のこと。それを声高々に建て主に説明することはしない。それよりも伝えなくてはならないコンセプトは山ほどあるからだ。午後、我が事務所兼自宅前の更地に建設予定の建て主があいさつに。『この海が見える眺望を遮らないようにしたいと思います。ご近所つきあいを大切にしたいから』と。仕事柄、近隣からの苦情はあたりまえ。そんな私なので『海が見えなくなるような...』とは口が裂けても言えない。いつも苦労しているからそんなことでご近所つきあいを台無しにしたくないのだ。幸い先方から気遣っている様子が聞けたのでほっとする。それに加えて担当する建築家は私も好きだったAさんということが判明。もう75歳になったらしい。打ち放しと木造の混構造の作品はよく知っている。パットサイデリアでなくてこれまたほっとする。工事が始まるのが楽しみだ。


●2007.02.03(土)

朝一。葉山のリフォーム現場K邸へ。寒い。やっと冬らしくなってきた。築40年のK邸はさぞ寒かろう。なんとか冬暖かく夏涼しいすまいにリフォームしなくては。と駆けつけると日当たりの良いその現場は結構暖かかった。太陽の恵みは地球に公平に降り注いでいるようだ。陽当たりの悪い私のすまいは薪ストーブがなければやっていられない。屋根屋さん、牽き屋さん、大工さん、監督さんそれぞれ現場を確認し終了。午後、Nさんご夫婦と打ち合わせ。すまいへの思いはつきない。はじめてお会いしたときはお子さんたちは4歳と2歳。そろそろ6歳と4歳になるという。時の流れは早いもの。すまいの建設予定地の確定はこれから。Nさんご家族らしいすばらしいすまいになるように力を注いでゆきたい。

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