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2007.07.03。前夜の深酒&深仕事がたたり朝もうろうとしていた。これ幸いにかねてから気になっていた横須賀美術館を訪問することに。昼飯を横須賀魚市場横の定食屋ですませ、一路走水の先へ。その途中、馬堀海岸の岸壁工事が終わっていて一切釣りができなくなっていた。サラリーマンの頃、今から20年も前、よくそこに通っていた。私を黒鯛釣りにはめてくれた先輩に連れられていき、私は釣れなくて先輩だけが黒鯛を釣り上げたのだ。それからもうその世界にはまっていき、一人でもよく都内から車を走らせて通った場所だった。黒鯛は釣れなくても、メバル、カサゴ、海たなご。外道はよく釣れた。その馬堀海岸の釣り場はなくなっていた。

馬堀海岸を過ぎ、走水のボート屋はどうなったかなと気にしながら走りすぎるといきなり右手に横須賀美術館が現れた。おおお。いきなりの出現。それも芝生の向こうにガラスに包まれた白いインナーが妙に見るものを惹きつけた。それに気をとられながらも、駐車場への誘導は確かなもので、サインに導かれるまま、館内パーキングへ吸い込まれていった。これは車で来た訪問者への配慮は行き届いていたということだ。なかなかそうはいかない。「キレのあるデザインなのか」とぶつぶつ想いにふけながら車を止める。車を止め、美術館入り口へ向かう。その動線は、『B2駐車場』→『エレベーターで1Fへ』→『ガラス越しのレストラン前(オープンカフェ)』→『ミュージアムショップ』→『吹き抜けブリッジ(これが揺れる揺れる)』→『インフォメーション』ここまでの動線は気持ちよい。味気ない駐車場からいきなりインフォメーションに行くのではなく、シークエンスが楽しめるのだ。強制動線なのでそこまでの道のりは長いが、散歩がてらに来たものにとっては悪くはない。しかし、最後のブリッジが揺れるのは印象良くない。4Mほどある吹き抜けに渡されたそのブリッジを通らなければ美術館に入れない。我々は2.5人で渡ったが、30人ぐらい一度に渡るとどうなっちゃうんだろう。確かにブリッジは薄かった。「キレのあるデザイン」になっていた。

ひととおり内部建築を体験して屋上に出た。建築の屋根もすべてガラスでできているその屋上は初めての経験。屋上すべてにグレーチングが敷き詰められ歩くのに勇気がいった。入り口脇の小さなサインに『細い靴底を履いている方は注意してください』とあるが、スリップオンを履いている私でさえグレーチングを支えている鉄骨梁を探しながら歩かなければならなかった。「これがキレのある建築なのか...」と思いながら歩いていた。途中、ドブ付け(亜鉛メッキ)のフラットバーでできた手すりを掴む。ちょっと、検事の仕草。揺すってみた。アールでつながっていくその屋上手すりは、ちょっと揺すっただけで全体がぐわんぐわんと揺れ動く。「勇気あるなあ」と設計者に感動。この美術館を設計したYさんは私がサラリーマン時代から知っていた日本を代表する建築家。葉山にできた神奈川近代美術館別館とはまるで「でき」が違う。その「でき」とは。好きか嫌いかは別にして、建築家個人の選択眼がはっきりと見えてくるか見えないかということ。できが良すぎると設計に参加する個人のキャラクターが見えてこない。設計者のキャラクターがはっきり見えてくる建築は玄人目には「でき」が良いとおもってしまう。横須賀美術館はYさんのこだわる部分とこだわらない部分がはっきり感じられて、これぞ人間が造る建築なんだなあと思わされた。「キレのある建築とは、設計者の感性があらわになった建築なんだ」とあらたに認識させられた。しかし、美術館を出るときもまだ昨夜の深酒が抜け切れていなかったのは私しか知らない。

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●2007.06.28(木)

座間のS邸。3社コンペで結論が出ない。1社は価格的に論外で落ちた。あとの2社はどっちとも言えない。初めて見積もり依頼したD社の現場を建て主と一緒に見てから最終決定することに。D社から連絡が来て日取りが決まる。


●2007.06.29(金)

品川のF邸。今日が土地決済の予定。何も連絡がないので無事に済むのだろうと思いにふける。土地を買うというのは一生に何回もないこと。土地契約の時はFさんとほとんど初対面だったが用心棒としてそばにいた。プロの私がいるだけでその場の空気が変わるというもの。一日連絡がなかったのでほっと胸をなでおろす。N邸のプラン整備に時間をついやす。


●2007.06.30(土)

前夜から我が事務所のマックが全員言うことを聞かない。きっかけは相棒のマックからメーカーのPDF書類を私にメールしたことがきっかけだ。それ以来、すべてのイーサネットでつながっている機能が破綻した。夜を徹して、回復させるも回復する気配なし。気を取り直し、明け方から復帰を目指す。いったんマックの機嫌が直り、打ち合わせ予定の模型用型紙だけはプリントできた。模型を造りながら横目でマックの回復作業。しかし、打ち合わせようの資料はなかなかプリントできない。朝からあわてふためく一日が始まる。


●2007.07.01(日)

合い見積もりで検討中のD社の現場をSご夫婦と見に行く。そのとある建築家の現場は「キレのあるデザイン」で満ちていた。私は存じ上げない建築家の作品。湿気の多いその現場でシングルガラスが悲鳴揚げていた。断熱性は高くないその現場で北側に面したシングルガラスが涙を流していたのだ。左官仕事の多い内部空間なので現場途中は結露が発生することが多い。そのためだろうと同業者としてひいき目に見るが冬は大変なことになるだろうと思いやられる。木造の躯体ということなので寿命は推して知るべしである。しかしながら、その施工者の器用な現場さばきを目の当たりにし、現場を見た一同心が動く。


●2007.07.02(月)

昨日、現場見学の工程を終えた相棒は現場の塗料にやられたようである。気持ち悪い気持ち悪いと終日こぼしていた。建築家、施工者、やはり気を遣うところを間違えると「キレが悪いことになる」と痛感。なんとなく気になり、D社の施工を経験したことのある知り合いの設計者をたぐり寄せる。Yさんから話が聞けた。以前、ある施工会社に『ほんとうに設計図通りにつくるよ!』と脅されたことがある。まだ、私が若いときだ。本音でそりゃあこわいことだと恥ずかしいが思った。建築が好きで関わる人間がみな知恵を出し合い良い建築ができてゆくと思っていた時期。言うとおりにはできるよと言われてたじろいだことがあるのだ。今ではそういうこともなくなったが、昨日の現場を見てそれを思い出した。建築家の言うとおりに造りますよ。だって建築家がそれを指示したんでしょう。ある意味それで良いのだが、施工者のモラルと誠意は設計者と違うところにあると思うのだ。YさんはD社はそれすらできなかったと。もっと私も切磋琢磨しないといけないなと反芻。でも、小一時間現場にいて誰かが気持ち悪くなるような現場は図面で指示しない。それは私のにとって「キレのある建築」なのだ。


●2007.07.03(火)

葉山D邸現場。杭工事が終わり基礎工事も終わって現場は小康状態。コンクリートが打ち終わった後は雨がよろしい。大学生の時に、乾燥状態でコンクリートを放置するのと水の中で放置するのは強度に違いが出るのを目の当たりにした。水中養生が断然強くなるのだ。この現場は、7/10に上棟予定。それまではたっぷり雨が降ってコンクリートに力を与えてほしい。勝手な希望だが上棟3日前から雨がやみそれから1ヶ月は雨が降らないことを祈るのだ。こんな都合の良いことにはならないだろうけど、そうなってほしいと神頼みするのも設計者の仕事なのである。


●2007.07.04(水)

座間S邸。結果。合い見積もりのD社には丁寧にお断りを入れた。価格的には若干高かったものの、そうそうたる建築家の現場を器用に造りあげてゆくことに私自身興味を持っていたからだ。しかし、建築好きな連中が集まって、より良い建築を造ろうとする姿勢はS建設に軍配があがったのだ。純粋に良い住まいを造ろうとする、そして真摯に一期一会のお客様に対応しようという気持ちがちょっとだけ上回ったような気がしたのだ。D社は、今後また機会があれば是非ご一緒してみたいという会社さんではある。申し訳ありませんでした。


●2007.07.05(木)

いろいろな想いが交錯する中、えいやと薪を調達に行く。鎌倉堆肥センター。最近は丸太が少ない。昨年末に行ったときも2〜3年前とはずいぶん丸太の量が減っている。軽トラで現地に行き、台貫にのる。「丸太あるかな〜」とお姉さん。「無かったら帰るから〜」と私。丸太置き場に行くと手頃なさくらとクヌギがある。少ないなあと思いながらもトラロープで縛らなくてもいいかなと思える量を軽トラに乗せ再度台貫へ。「340kg。オッケーです〜(にっこり」と。以前は「540kg。気をつけてね〜。(怒!」だったんですけどね。薪の量が少ないことが幸いして、積載重量オーバーにならない。


●2007.07.06(金)

葉山N邸基本設計真っ最中。昨日運んできた丸太は、私のオヤジが薪にしてくれる。本来は私の健康維持のために私がやると決めているのだが、父がせっせとやってくれるので気持ちよく任せている。75歳になる父が張り切ってやってくれることもあり、それに甘んじていることもあり、『ありがとう』とさりげなく言えるようにもなった。今日父から『電動薪割り機の油圧ポンプの具合が悪そうだ』と相談がある。オイルが切れかかっているらしい。調べると『油圧作動油。#22』というのが必要らしい。その電動薪割り機についていた取説を紛失してしまい販売元に問い合わせるとそれを使ってくださいとのこと。それにはガソリンスタンドで購入してくださいとあったのだが、『油圧作動油。#22』なんて常備していないらしい。工業用オイルですね。それは注文になります。とだけ。それでガソリンスタンドで注文すると20L缶で14400円という。早速ネットで調べると9975円/20Lというのでそこに注文。油圧オイルはお金で買えるが、父の体力はお金で買えない。まだまだ、現役でがんばってほしい。私もそれに甘えるだけ甘えたい。(しかし。父が造る我が家のガーデンはキレが悪すぎる。廃品を使い回しているので、富良野の黒板五郎がつくったようなたたずまいになっているのだ。それにもめげず花たちはきれいに咲き誇っているので。とおりがかりの人は皆ほめていくんだけど...。ディテールは...黒板五郎。でも。父の存在はありがたいです。

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