3社の設計コンペをお客様が企画された。環境建築を望まれたお客様は自らのネットワークで設計者3名を選択された。我々はある工務店の推薦で出会うことになる。生粋の湘南育ちの奥様は、やはり「湘南の建築家・佐賀さん」の白い開放的なすまいを気に入られていた。佐賀さんについては雑誌でしか知らないけれど、サーファー兼建築家という特異なライフスタイルで私も存じあげていた。そして、60にしてサーフィン中に行方不明になり亡くなったらしい。本望だったのだろうか。そこまではわからない。
設計コンペは、建築条件付きながら設計者はご自由にという工務店がついていた。我々は、建築条件付きでもかまわない。設計者として、建て主の用心棒として機能するのであれば設計する土俵を選ぶつもりはないとお伝えする。結果。プロポーザル資料を提出したところ我々に依頼することを建て主は決断された。3社に設計コンペを依頼する経緯の中で『建築条件付きの物件はおことわり...』という設計事務所もあったらしい。『建て主の用心棒として機能するならば、建築条件付きはなんら問題ない』という姿勢が建て主の信頼を得たのだろうと思う。
設計が始まり、条件付きの工務店と見積もりのやりとりが始まった。建て売り専門の建設会社。見積もり依頼の時点で泣きが入る。担当者が訳のわからない言い訳をはじめる。『会社の利益を優先することだけが会社のためにならない。そういうことを上司が認めてくれない。私も以前のゼネコンで設計事務所の物件を担当していたことがあります。。。』結局。責任者と話し、建築条件をはずすことで合意。(してやったり。これが我々の大きな仕事なのである)その後、湘南台は庭である成幸建設に見積もりを依頼し無事に完成に至る。
建て主は、大屋根デザインとこれからの地球環境を考慮することを念頭にできる限り資源を無駄にしない建築のあり方を求められた。夏涼しくて冬暖かいことはあたりまえとして、限られた予算のなかでエネルギーロスを少なくしたいと望まれた。湘南建築家の佐賀さんスタイル。エコロジースタイル。それと私の新しい領域である白い家。それらを練りに練り込んで、このすまいは建て主に寄り添った独自のスタイルで完成したのである。私にとっては、モクモク(木木)しくない人間らしい棲み家の第一歩になる。
■ 物件概要 |
設計 :(株)生活空間研究所 一級建築士事務所 佐山希人 鈴木香住
構造 :地上2階木造軸組構造
設計期間:2005.10〜2006.02
施工期間:2006.03〜2006.08
施工 :成幸建設(株) 宮原成幸 加藤光治
● デザインコンセプト |
『離れのある白い家』
● このすまいの特徴 |
母屋と離れが囲む中庭、イゼナ(深夜電力利用蓄熱床暖房)、深夜電力利用蓄熱暖房器
●2007.12.21(金)
いろいろな思いが重なりやっとこのすまいを紹介することができた。
じつは先週やっと1年点検ならぬ1年半点検に行くことができた。
『すばらしい』のひとこと。
湿気がなく風通しが良いのだろう。
まったく汚れていない。
熟していくのと汚れていくのはまるで違う。
汚れていって欲しくない。私は。
汚れない設計に腐心した私の努力は報われたようだ。
建て主も喜んでいてくれて、快適に暮らしていますとお褒めをいただいた。
竣工当初撮影できなかった中庭の写真がやっと撮れた。
一年半かかって気になっていた湘南台のすまいを掲載することができてホッとしている。
10年たった後、『いい家だなあ』と思えるような設計をこのまま続けていきたい。
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