071214_header.jpg

完成済み現場、現在工事中現場、これから工事予定の現場。それぞれの建て主の気持ちを刺激するつもりはない。が。あえて実務者レベルで共有した方がよいと思えることがわかったのでブログに忘備録。

ウルトラナッター(耐震ナッター)。現在のカタログ寸法表示に間違いが発覚した。ある現場で、梁を緊結する羽子板ボルトのナット締め残りの山が無いことに建て主の用心棒が気がついた。この方は鉄板地下室で有名な私もお世話になったスリーユーの東方さん。鉄骨関係では、ボルトにナットを締め込んだ後、ボルトの残りが3山残るのが必須。国土交通省営繕部の現場管理指針(通称みどりぼん)にも明記されている。さて、木造の、かつ梁を緊結する羽子板ボルトの締め残りについて基準はあるのか。設計監理者として途方に暮れた。通常の座金+スプリングワッシャー+ナットの場合は、目視検査で3山残っているかどうかはチェックする。上棟時は仮締めの場合が多いので、チェック時期は上棟後室内の壁を張る直前に目視確認をする。(そういえば、スリーユーの鉄板地下では高力ボルトの締め忘れがないかを確認するために指定強度まで締め付けられた後、赤ペンキを塗るように現場指導していた...。今度からそういうように羽子板ボルトであっても現場管理していこうか)その東方さんから指摘を受けた後、現場からの報告を待っていた。手刻みではない場合、羽子板ボルトの穴あけ加工までプレカット工場で加工する。そのプレカット工場からの報告によると、一般的な座金スプリングワッシャナットで施工する場合とウルトラナッターで施工する場合どちらでも対応可能なような寸法で穴あけ加工していますという報告が工務店にあがったと報告がある。それではと。一般的な座金スプリングワッシャナットとウルトラナッターの寸法比較をしてみた。前者締め付け後合計17.5mm、後者17mm。オッケー。では何故現場でナット頭とボルト頭がつらいちになっていたのか。現場に電話を入れ現場に納入されているウルトラナッターを採寸してもらう。19.5mmありますとの返事。メーカーに電話をし事情を調査依頼。するとカタログ表記と実物に誤差があったらしい。カタログ表記は17mm実物は19.5mm。とても細かい話だが、これで良いのかと頭を抱えてしまう。そこで、金物メーカーに詰問。ウルトラナッターは3山出ていなくても良いのか。カタログ表記が間違っていたために現場では3山残らない施工になってしまっている。見解を教えてくれ。回答は「現在カタログを作り直しています」「3山が基本ですが、鉛直方向つまり地震力を軸力で耐えなければならない部分についてのみです。土台を緊結する場合は3山です。しかし、梁の転び止めとして使う横方向の羽子板ボルトの場合は締め残り山の関係法令基準がありません」「ウルトラナッターは材が痩せたときに自動締め付け機能が働くので、KD材(乾燥材)であっても1mmは木痩せするので安全側に働きそのうち山が出てきます」「これは木造住宅接合金物協会も同じ見解です」と。メーカーとしては単なるカタログ表記間違いで済ませてしまいたいというのが垣間見える。また、現場サイドからの報告書では、ウルトラナッターの特殊な構造ゆえ、ボルトとナットがつらいちの場合でもナットカバーの中に3山残るようになっているので問題なしという回答がある。私が調べた他のメーカーでもつらいちでなんら問題ありませんという回答があった。念のために木造住宅接合金物協会に電話を入れるとやはりそれらの情報は正しい回答ですということだった。(メーカーを養護しているんじゃなかろうなと疑うも穏便に...)

しかし、今でもこのウルトラナッターは17mm厚でネットで寸法表記されている。実質的に羽子板ボルトで梁の緊結をする場合はそうそう問題にならないだろうが、地震力を負担する鉛直方向で使用する場合は問題ないのだろうか。ウルトラナッターはナットのカゴの中で3山残る構造になっているから大丈夫なのか。それともやはり3山残さなければならないのか。曖昧な点が残った。やはりもう少し追求してみた方がよいだろう。金物協会ぐるみで吉兆のようなことになっていなければよいが。


●2007.12.13(木)

ずいぶん以前から使っているシンプルな北欧木製ドアの問屋が営業に。電話では知っているからわざわざ営業に来ることはないよというもアポを承認。この問屋。北海道本社の問屋。やはり道産子の私としては相手をしてあげたくなってしまう。薪ストーブ打ち合わせ室に通すと私の事務所にはない分厚いカタログを取り出し。他にもあります。と数種類のパンフレットを広げる。8種類くらいのパンフの説明を聞く。函館出身で釧路で育ったらしい。歯切れの良い営業が続く。そのなかでも採用するかもなと思ったのは、深夜電力で稼働する基礎暖房。べた基礎の上に電熱線を敷き込み深夜電力でコントロールするらしい。冬至かつ神奈川県における24時間の温熱シミュレーションを各物件ごとにやってくれるなら検討しても良いと伝える。頭を抱えて帰って行く。

●2007.12.12(水)

液状化する地盤での免震構造はハードルが高いというS先生から。免震構造でない場合は今までお付き合いのある構造家と...。というアドバイス。6/20の建築基準法大改正でお付き合いしていた構造設計者からは木造以外は対応しかねますと言われていた。ならば、いっしょに組んで世に問うしっかりとした良いものをつくろう。かつ。私の考える建築にさらなるパワーを注ぎ込んでくれる構造家をさがすことにした。出身大学のネットワークを使わない手はない。いろいろたぐり寄せ、意匠の私と同じ土俵で良いものを世の中にという構造家を探り当てた。午前中。彼に会いに行く。私のプランを見て、乗り気がない。私はコルビジェのサボア邸をイメージしていた。技術だけを模索するのであれば私ではないという。ではこの足で他の構造家のところに行くので紹介してくれと言うとたくさん紹介してくれた。RCが特異なAバーデンさん...それは同じ大学の後輩の配慮だ。帰り間際、このプロジェクトは「20〜30年で更新していかなければならない木造建築や他の建築に対して意義を唱えたい。100年持つ構造体とぐずぐずでも良い気ままに更新できる軽い構造体を組み合わせて世に問いたいんだよな...」と言うと俄然目の色が変わった。彼は手が動くことで頭も動いていくらしい。手を動かしながら頭も動かしていた。彼の本を勧められ買おうと思っていたので即買い。事務所の全員笑いが走る。その後も二人でエスキスをしながら、大いなる可能性を感じて事務所を出る。
午後、私の大学恩師の初見先生から、薪ストーブを導入したいという方がいるので伝授するようにというお達しがあったので世田谷に向かう。イチゴショートと紅茶をいただきながら、お二人がいるとまるで薪ストーブを使っているような香りが漂いますねと談笑されながら、初見先生の学友(S大学の建築学科教授です。緊張しました)にできる限りの薪ストーブの心得を伝授。薪置き場があるかどうかを中庭をチェックするとかわいらしい落葉樹を発見。赤い実を付けている。問うと。姫リンゴだそう。しゅっと伸びていて赤い実を付けている。聞くと春に白い花を付け秋に赤い実を付ける。中庭にシンボルツリーを探していたので脳内に記録する。実りの多い一日。最後の打ち合わせ。品川の現場に寄り、現場をチェック。1月末竣工に向けて職人さんたちに気合いを入れてもらおうとお茶を差し入れ。現場は急ピッチで進められ良い感じ。

●2007.12.011(火)

薪ストーブのガラスが割れたんですけど大丈夫ですか?と連絡があったので販売元から専用ガラスを仕入れていた。薪ストーブは煙突に抜けていく気流(ドラフト)が発生するので、薪ストーブから室内に火の粉が出てくることはない。なので、そのままお使いいただいても大丈夫ですけど気持ち悪いので取り替えることにしましょうということにしていた。ガラスも入荷したので取り替えに行く。30cm角程度の耐熱ガラスで12000円。上代は1.3倍。ちょっと高いな。嗜好品は原価うんぬんではないのだなと建て主に替わって納得する。最近の原油高で薪ストーブは嗜好品ではなく、実用品になる可能性もある。世の中。はやりものだった環境志向も現実のものとなる可能性を帯びてきた。温暖化傾向なので、寒さの心配よりは夏の暑さを危惧する傾向があるが、暑くなっても寒くなっても自分の裁量で生き抜く知恵を持つことが大切では無かろうか。薪ストーブを使いこなしていると少なくとも冬の寒さだけでもしのぐ知恵を授かることができる。すまいづくりを通じてそれを伝授している意義は自分なりに評価したい。

▼ コメント(4)

お久しぶりです。
ボルト 3山というのは
機械屋さんでも同じで
私自身その根拠は 聞いたことはありません。

装置架台の構造用部材に使用する
ハイテンションボルトでも
3山残す様にしています。
1山では少なく、3山以上では多すぎる。
何故でしょうね?

誤報満載承知でネットをぱらぱらしていると、
こんな記述がありました。
「ボルトやねじとナットやねじ穴の喰い付きが良くなるように3山程度先細りのテーパーがかかっているものがあり、テーパーがかかった部分には正確に力が伝わらないため3山程度は残す必要がある」
真偽は別にして、納得できる気もしますね。
しかし、手元にある建築用のボルトの先にはテーパーがかかっていないんですよね。これが。

ところで、VPmini300Mark?昨日届きました。
501との聞き比べが楽しみです。
やっぱり真空管は冬が良いですね。

JISのネジのハンドブックを見ると、
例えば六角ボルトJIS B 1180では、
ボルト先端の不完全ネジ部は2P以下と
規定されています。
と言うことは、ネジの締めのこりは3P無ければ
完全に締め付けられないのでしょうね。

他の種類のネジもピッチの取り方等差はありますが
同様に、先端は不完全ネジ部の規定が有るみたいです。


そうですね、真空管の暖かさが、心身にしみますね。
特に、845は暖かそうですね。

あけましておめでとうございます。
濱さん、ことしもよろしくお願いします。

ハンドブック情報ありがとうございました。
少しずつ、3山の謎が解けてきました。

机の横のBGM用アンプも衣替えしました。
冬は発熱量の多いVP-3488があったかくて良いです。
夏はもっぱらSV-9Tでいっています。

▼ コメントする

▼ サイト内検索                複数キーワードは半角スペースを挿入

             
   

▼ 記事へのコメント

過去のコメント一覧を見る