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今年も早いものでひとつきが終わろうとしています。きりっとした寒い日が続いていますが、そんな寒い中ふたつの現場が上棟しました。ひとつは葉山。2008年1月24日。もうひとつは藤沢。2008年1月28日。まるで私にとってはふたごのような存在になりそうです。このすまいはもう一つふたごに感じる共通点があります。2006年12月23日、この二家族と一緒に山に入りシンボルツリーを選別伐採していたのです。一昨年暮れに山で伐り倒された杉は翌春に山から街におろされすまいの一員になるのを今か今かと待っていたはずです。プロジェクトの進行がほとんど同じペースで進行するというのはとても希なのですが、くしくもこのふたつのすまいはそれぞれのワインディングロードを経てほとんど同じ時期に上棟を迎えたのです。

上棟日はそのすまいにとっての誕生日に相当するといわれています。おそらく山で伐り倒されたシンボルツリーはそのすまいに使われる第1号の建材だったはずです。すまいをつくろうかとご家族で話し合いをされて、私との縁があって設計がはじまり、すまいづくりはその時点でスタートしていますが、実体のあるハードとしてのすまいのはじまりは山で伐り倒した時点でしょう。そこからいろいろなことが準備されおぎゃーと産まれるまでほぼすまいの全容は準備されて来ています。それが一気に建ちあがるのが上棟であり、すまいの誕生日なのです。そこから先はそれまで準備されてきた決まり事に従って完成まで進んでいくのです。

私の事務所兼自宅の誕生日は、1997年9月6日。今でも覚えています。その上棟予定日には棟が上がらず柱をすべて建てた状態での上棟式でしたが、それに至るまでがとてつもないワインディングロードでしたので感慨深いものがありました。昨年の9月で満10歳を迎えています。人間でいうと何歳くらいに相当するのでしょうか。まだまだ青年であってほしいものです。木造建築は手を入れてメンテナンスしていってかなり永く生き続けることができます。伊勢神宮では20年に一度メンテナンスの手が入ります。いずれにしても愛着を持ってすまいと関わっていくことが肝要なのでしょう。


●2008年1月21日(月)

あるすまいの完了検査の申し込み。書類が届いたらしく申請書の補正の電話が入る。それにしても毎回毎回記入に関するルールが異なる。前回と同じように書き込んだ内容も訂正を求められる。担当者によって言うことが異なるのは困ったものだ。同じ機関への申請なのだから同じルールでやってもらいたい。

●2008年1月22日(火)

夜更けから雪になるらしい。わくわくする。最近葉山では雪がどかっと降って交通麻痺になることはほとんどない。10年ほど前は2〜3年に一度はあったように思うが。温暖化の影響なのか。いよいよ個別に環境負荷のないくらしを実践していかなければならない。具体的にはどうしていこうか。できることからやるしかない。まずはエネルギーの無駄使いをすこしずつ減らそうか。

●2008年1月23日(水)

現在計画中のすまい。構造の考え方を横浜の確認検査機関へ打診に行く。昨年大改正された建築基準法。どこに申請しても統一見解になることは良いことだと前向きに考えていたが、確認審査をする機関で微妙に見解が異なる。構造計算適合性判定(いわゆる適判)に行くかどうかのボーダーラインは担当者あるいはその検査機関の判断によるところが大きい。当計画の構造家と打診に行くと、構造計算に使っている計算ソフト自体がその機関では審査が難しいという。都内の某複数の検査機関では問題ないらしい。なにやら話がおかしな方向に進んでいる。

●2008年1月24日(木)

葉山のすまいの上棟。午前中現場で様子を見守る。至近の一昨年完成したすまいの前に車を駐める。あいさつに行く。しばらくすると奥様が現場に来られ現場監督とも挨拶。ちょっと私に相談がありそうなのですまいにむかう。薪ストーブのことで相談を受ける。葉山では薪ストーブを使う方が多い。昼まっから焚いているのは私のところくらいらしい。しかし、夜になるとみなストーブに火を入れるらしい。私がお薦めする薪ストーブは、欧米の薪ストーブ排ガス規制をクリアした2次燃焼あるいは4次燃焼まで行う排気に気をつかった精鋭機器。周りの様子を見ていると、そういうクリーン排気ではない煙モクモクの薪ストーブもあるようだ。建て主や設計者の気遣いを伝えたいと思っているのだが。午後。AGCと打ち合わせ。AGC=旭硝子のこと。社名をすべてAGCに変更したという。

●2008年1月25日(金)

完了検査。車の交通量が多く現場に予定時間ちょうどに着くともう検査は終わっており検査員はいなかった。立ち会った監督がサインをして無事に終了したという。その後、設計者の検査を行い是正箇所を指示して完成を待つ。葉山に戻り、計画案のスタディ。AGCとの打ち合わせをもとにデザイン調整。コンセプトを明快にするために粘る。温暖化を見据えて「風をつかむ」デザイン。

●2008年1月26日(土)

「風をつかむ」プラン打ち合わせ。計画当初から大げさに見えないすまいにしたいと依頼されていた。少々見え方が大きくなるイメージを持たれたようだ。加えて、ゾーニングに関してあらたな与件が加わる。もう一度全体像を見直そう。基本計画の時点で何度も練り直すのは大切なこと。依頼主の与件・イメージと設計者の提案のすりあわせは何度も行うことでシンプルにすまいかたが見えてくる。すまいをどのようにデザインするかということはそこにすまう家族のライフスタイルをどこまで理解できるかということ。一般解はない。葉山に戻り、久しぶりに地下に潜りJAZZを浴びる。先週数年ぶりで買った新品のLP3枚。一枚だけ聴く。もったいなくて一気に聴けない。オマー・ハキムのドラムは新鮮。ハンク・ジョーンズとしばらくトリオをやって欲しい。

●2008年1月27日(日)

かねてから時間を探していた真空管アンプの組み立て。午前中しかける。午後。サラリーマン時代の戦友がたくあんを持って来葉。市民農園を借り自分でつくった大根をマンションの軒下に干し自分で漬けたという。やるとなったらとことんやるのが彼の流儀。ラッピングに鈴木がデザインしたロゴシールが貼られている。知人にくばるらしい。
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●2008年1月28日(月)

藤沢のすまいの上棟予定日。前日夜更け。建て主から一枚の写真がメールで届く。基礎のレベルモルタルが一部剥離していた。写真を見てその場で飛んでいきたかったが酒気帯びはまずい。関係者に上棟は延びる可能性もあるとのメールを一斉配信し朝を待つ。5時に飛び起きハンドルを握る。まだ暗い中手探りで基礎をまさぐる。明るくなるのと現場責任者の到来を待つ。7時頃からバラバラ集まり、8時に工務店の知恵袋責任者も到着。上棟予定なので職人さんも大勢集まる。職人さん達を待たせ私と知恵袋責任者と協議。結果問題なしと判断し、8:30建て主にも説明し建て方開始。一斉に職人さん達が動き出す。夕刻無事上棟。関係者全員で誕生日のお祝いをする。

●2008年1月29日(火)

造りかけのアンプの制作続行。無事に真空管に火が灯る。今回製作したのは300Bという真空管2個を使ったシングルアンプ( VP-mini300MkII )。同じ真空管を使うアンプをもう一台愛用している。(SV-501SE)それと電気的な回路が全く違うので同じ真空管を使っていても出てくる音はまるで違うという。見た目は同じように見えても性能は全く違う「在来軸組工法」と「枠組壁工法」ほどの違いはあるのだろうか。早速比較。前者は演奏者がそこに居るかのように音像としてくっきりと浮かび上がるタイプ。後者を聴くとステージの余韻も表現するかのごとく音の空間性に優れているようだ。比較してはじめてわかった。私はステージのかぶりつきで飛び散る汗も一緒に浴びたいと思っていたのだが、どうやらアリーナ中間で全体の余韻も含めて聴くのが好きなようだ。これは歳を重ねたことによる変化なのかもしれない。

●2008年1月30日(水)

大げさに見えないすまいの佇まい。頭の中でぐるぐるまわる。神奈川建築コンクールに入選したすまいもデザイン条件にそのキーワードがあった。先週上棟した葉山のすまいもそのキーワードを提示されていた。大きく見えないデザイン。色・フォルム・素材。それらの組み合わせ如何で無限大に選択肢はある。もう少し家族のライフスタイルを読み解く必要がありそうだ。私が依頼主になりきる努力をしばらくしてみよう。

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