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某公共施設で目が点になる。スロープの終点が階段に。さぞ設計者は身分を明かしたくないだろう。議論の末に起きてしまった妥協の産物なのか。おそらく設計者はそのケンケンがくがくのプロセスにおいて最良の選択をした結果だろうが。最悪の事態であることは確かだ。プロセスはどうあれ結果を最優先していくことに勇気を持たなければなるまい。

実際一軒のすまいであっても建ちあげるまで選択肢は多い。施主の意向、予算、敷地条件、私の信条、などなど。それらは多岐にわたり矛盾もはらんでいる。設計をはじめるにあたりまず建て主が何を望んでいるかを注意深く聴く。そして現地を体感する。建て主による一品生産はそれが建ちあがるその場所固有のものでもある。そして私が設計を担当することにより、さらに固有性が高まっていく。最後は実際に形にする施工担当の個性も加わり現実の形として世に出てくる。そのプロセスでどのような顛末があろうともあの設計は私ではありませんと言わざるをえない状況をつくってはならない。

昨日、ハンドルを握っていて目を疑った。10年ほど前に私が参加したローコストハウス。外壁にメンテナンスの手が加えられたのだろう。落ち着いた色から目の覚めるような原色に変貌していた。一人歩きをはじめて10年。もはや私が口出しすることではない。が。心中おだやかではない。


●2008.03.22(土)

大学の恩師ご夫妻に一日お付き合いいただく。神奈川県内5物件に意見をもらう。すでにお住まいになっている建て主にも協力いただく。やはりすでに生活をはじめている空間を体験するのが良いと意見をもらう。それは設計者の意図と現実生活のミスマッチ具合が露出しているからだろう。私も興味深い。その家人にふさわしいであろう空間のありかたをもっと考えていく次なるステップにさせてもらう。それにしても、恩師。真空管に興味を持たれていることに軽く驚く。

●2008.03.23(日)

昨日、計画中の基本設計案にも意見をもらう。コンセプトをもっと明確に形にした方が良いと解釈する。建て主と設計チームが築いてきたことを大切にしながら「もっと」をにらむ。思考が止まらなくなり手が止まる。一日最後の詰めの作業を予定していたが現地に行く。もう一度、現場の空気を吸い、反芻する。敷地の高低差を測量しながら最終形に思いを巡らせる。帰る途中。以前から気になっていたスーパー地下の激込み回転鮨。遅い昼飯。混んでいる理由が判明。

●2008.03.24(月)

走りながら「もっと」を目指そうと手を動かす。今週、各施工業者に合い見積もりをお願いする予定。予定ギリギリまでねばる。翌日引き渡し予定の現場が気になる。最後に残った外構工事。雨に降られて予定通りに終わらない。監督がつきっきりになり、他の現場に支障が出る。もっと私もフォローにまわらなければなるまい。

●2008.03.25(火)

午前中の引き渡し前に竣工写真を撮る。夜の空気を残したいので5:00に出る。目測を誤り、現場に着くと日の出前ながらすでに明るい。外構工事の足場が取れていないため内部の撮影に終始。ひとり黙々とこれから一人歩きする空間と対峙。静まりかえった空間に思いを馳せる。午後、別の現場で木工事内容確認打ち合わせ。FRP防水工事中。頭が痛くなる。揮発してしまえば問題ないが、施工者は大変だろう。

●2008.03.26(水)

商業施設の打ち合わせで都内。予定では午後真空管とコルビジェの情報交換。どうしてもとんぼ返りで基本設計をまとめなければならず順延願う。午後、横浜で高速を一時下車して「バーグ」でスタミナカレー大盛り。深夜までの作業に勢いをつける。それにしてもびっくりするほどの量に加齢を感じた。

●2008.03.27(木)

K社と合い見積もりの打ち合わせ。はじめての見積もり依頼。一昨年私の現場近くで良い仕事をしていたので気になっていた。私からメールを送り参加してもらう。今回は3社の競合と伝える。神奈川県内で設計事務所の仕事を好意的にきっちりしっかりやってくれる施工業者は限られてくる。表向きは設計事務所の仕事を得意としていますと言いながら裏では「儲からないからやりたくない」と言っている業者もいる。企業として適正な利益以上を儲けてもらっては困る。関係者全員が参加して良かったというプロジェクトに仕立てるのも設計者の仕事。

●2008.03.28(金)

午前S社。午後E社。見積もり打ち合わせ。E社は構造設計担当のN氏からのノミネート。はじめてお会いするがふたを開けると、もと同じ企業に所属していた。そのT社は業界ではトップ企業。バブル初期の勢いある社会情勢の中できつい仕事をしていたことに誇りを持つという。初対面ながら垣根のないコミュニケーション。その専務の父が創業者であり、住宅を創りたくて工務店を立ち上げたという。その際に巻き込まれT社から転身したと笑う。それにしても設計者の仕事ばかりでは儲からないんじゃないですかと水を向けると「儲けようと思わなければ、これほど面白い仕事はない」と言い切る。こんな施工業者はやはり数が少ない。

●2008.03.29(土)

宅急便が届く。さるこが試してみたいと取り寄せた。Qライトマルチ。すばらしい。単純に驚く。照明計画時できるだけ人感センサータイプを選択したいが価格がネック。どうしても使用箇所を抑え気味。このQライトマルチ。デザインはまったくだめだめだが、価格が魅力。3000円強で既存の裸電球がセンサーライトに早変わり。消し忘れが多かった場所に付けると俄然威力を発揮。これに少しデザイン的な処理をすると使えるのではないか。Co2削減にも役立ちそう。

●2008.03.30(日)

さくら見物と行楽をかねて後輩のオープンハウスに出向く。フェリーに乗る直前雨が降り出す。先週プロから意見をもらうと元気が出るのを実感。前向きに行くためには意見を言うことも肝心だろう。S氏は10期くらい下だろうから30代半ばか。なかなかうまいなと思った。私には選択しないであろう結果が多く勉強になる。最近「痛い」「寒い」「泣く」「腐る」「醜くなる」ことにつながるデザインは選択しないが、それらを克服してもうひと皮むけて良い空間をつくりたいと再認識。(けっして彼の空間がそうなると言っている訳ではありません。誤解無きように。)

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