■ 概要
所在地/神奈川県三浦郡葉山町
主要用途/専用住宅
家族構成/夫婦+子供二人
■ 設計
旧:生活空間研究所
担当 佐山希人 鈴木香住
■ 施工
成幸建設(株) 宮原成幸 監督 岩田健一
■ 工程
設計期間 2007年2月〜2007年10月
工事期間 2007年11月〜2008年4月
■ 設計趣旨
敷地は相模湾葉山森戸海岸から東に300Mほど離れた住宅街に位置し、森戸海岸へ注ぐ森戸川に面した自然豊かな場所にある。ここにはもともと平屋の大きなお屋敷があった。由緒ある歴史を刻んだ土地建物が解体され、新しい歴史が始まろうとしているその場所にすまいは計画された。五つほどに解体された土地の中でも最奥に位置し、森戸川の川面を伝う自然風をもっとも感じることができ、四季を日常に取り込むにはもっともふさわしい場所であった。
計画当初、自然に寄り添う暮らしを望まれた建て主が用意したイメージ写真に森の中にたたずむすまいの写真があった。風雪とともに熟しつつある「杉の縦板張り」だった。葉山の古い小径にみられる昔ながらのすまいに共通するもので、葉山にあってもミスマッチしないと確信し、そのイメージを大切にふくらませることとした。しかし、計画地は第1種中高層地域かつ住宅密集地である。森の中の一軒家、あるいはのどかな漁村の外皮そのままでは無防備すぎる。色、形はそのモチーフを生かしながらも素材には耐火性能を持たせることにした。
また、建て主は大きく見えないすまいを望まれた。そのためには平屋がふさわしいが、物理的に平屋では生活必要面積を確保できない。下屋を張り出した一部2階もままならない。層2階的なボリュームとならざるを得ない。そのため各階の高さは極力抑え、太陽光を取り込む南に面した吹き抜け以外は天井高さ2.2mとし建物の高さを抑えつつも豊かな暮らしが展開できるように計画した。そのためファサードには低いところに軒先を設け、威圧感が無く控えめに感じるデザインをくわえた。それは玄関庇であり、薪の雨除け庇である。その庇はモダンなものとせず、もともとそこにあったお屋敷のデザインや古くから葉山にあるデザインを採用した。できるかぎり昔からそこに佇んでいたような空気感を出したかったからである。
さらに自然と寄り添う暮らしはイメージだけではなく、実生活においても具体的に展開することを望まれた。中でも、薪ストーブの導入は強く希望された。暖を採るだけではなく、キッチンストーブとしても活用したいという。住宅街での薪ストーブ導入には細心の注意を払う。ひとつは煙突の見え方。気を遣わなければならないと予測される方面からの見え方である。冬の風向つまり北風が多い冬、どの方向に煙がたなびくのかを予測する。幸い、この敷地は南側に森戸川が位置し、正しく北風が吹けば薪ストーブの煙は川に沿って流れていくだろうと想定できた。しかし、こればっかりは自然相手。天候次第。想定外のことも多い。留意しすぎるに超したことはない。一方、近隣への心配りは人為的なこと。薪ストーブ導入の際はできる限り視線はパノラミックに向けて留意しておきたい。
さわやかな春の緑。川面を渡る夏の涼風。色づく山の秋の気配。薪ストーブの美味しい音。五感での四季を感じる舞台は整った。内外と一体になれるすまいは豊かな生活を支える大きな器となることを狙っている。かつ家族の歴史とともに熟成することを望んでいる。
(株)佐山建築研究所 佐山 記
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「葉山。木・風・四季を楽しむ家」
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