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すまいをつくるとき、それぞれの仕事分担と責任範囲がある。設計者(建築家)と施工者が分かれている場合は明確に役割分担がある。設計施工が同じ会社の場合はその責任範囲が曖昧になる。とはいえ、どっちの責任であっても同じ会社にその責任を問えばいいので建て主にとっては都合がよいこともある。しかし、設計者と施工者が同じ組織に属している設計施工の業者の場合、その責任を曖昧にすることができる。結果、設計施工業者の都合が良いように建て主にとってわからないようにうやむやにすることもできるのだ。

上の写真は我が家の隣接地の工事現場。建築家と施工業者の現場だ。建築家は住宅設計では名前の売れた東京のA先生。施工業者は茅ヶ崎のK工務店。私が見ていてずさんと言うしかない。地鎮祭が執り行われたのは昨年春。その年の秋には竣工と建て主が挨拶に来た。実際の着工はなんと今年になってから。2月に入ってやっと始まった土工事は2月半ばで工事が止まったまま。雨が多い今年の2月。よく見ていると、土を止めている矢板がはらんできているのも気になるが、問題なのはオープンカットのままの土壁。もし近所の子供達が敷地内にふざけて入って土壁に触れたら一瞬で崩れてくる。人は腰まで土に埋まったら死んでしまうという。道路には立ち入り禁止のバリケードも柵も何もない。現場状況を確認しに施工業者が見に来ている様子もない。さらには建築確認表示板も設置されていない。事故が起きてしまったときにはどこに連絡すればいいのかさえも明らかにされていない。なんたるずさんさ。

この施工業者はかつて一度仕事をしたことがある。記憶では現場監督が現場を監理していないという記憶しかない。下請け業者を手配するだけの手配師でしかない記憶がある。技術者としての最善の方法を進んでいく現場に合わせて行使していくという気配はまったくなかった。隣地の現場はまだ現場監督がついていない。営業が建築家と現場で2〜3度打ち合わせしているだけだ。現場の怖さを知らない営業マンが仕切っているだけなのだ。通常、私が設計者として参加している現場の場合、このようなことには絶対しない。想定される事故や起こりうる問題に関しては、技術者として設計者として施工業者に指示を出す。それが建築家の当たり前の仕事。

今回私の立場は本格的に建築に詳しいやっかいな隣地の地主でしかない。引き続き毎日現場が動いていくのであれば、それほど気にならないが、オープンカットのまま放置されて2週間以上が経つ。事故が起こる前に、私が動こうかどうしようか。このままではいろんな意味で、迷惑を被るのは建て主であるのは見えている。あってはならない事故があったらその責任はどこに行くのだろう。まずは、施工管理責任は当然施工業者だろう。その管理を怠った建築家にもあるだろう。その両者に発注した建て主にもっとも重い責任が降りかかってくるのではなかろうか。現場に無頓着な建築家と無責任な施工業者を選んだ建て主に最後にとばっちりがいくのである。隣地のプロジェクト。誰もが結果を想定できる重大な現実を、関係者の誰もが感じていない。

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