■ 概要
所在地/神奈川県平塚市
主要用途/専用住宅
家族構成/大人一人
■ 設計
佐山建築研究所
担当 佐山 希人 鈴木 香住
■ 施工
成幸建設(株) 宮原成幸 清水雅志 上嶋貴之
■ 工程
設計期間 2009年4月〜2010年1月
工事期間 2010年2月〜2010年6月
■ 設計趣旨
「リフォームもやりますか?」と連絡があったのが、3〜4年ぐらい前だっただろうか。「もちろんやります」と伝えていた。それから1年くらい経過し「実際に現場を見て欲しい」と再度連絡がある。その間、いろいろな検討をしていたようだ。売りにも出していたらしい。様々な選択肢の中から我々に検討を依頼してきた内容は、「減築リフォーム」だった。20年以上前に中古で購入したというそのすまいは、購入当時すでに5〜6坪ほど増築されていたという。今では家族構成が変わったので、その昔増築された部分を撤去してオリジナルに戻し、リフォームしたいということだった。現況の躯体を確認すると痛んでいる部分はあまりないが、やはり30年前の建築は現在の法規に合うものではなく、構造的な補強をしていかなければ安心して暮らしてゆけないのも事実だった。
まずは、依頼内容の減築案と新築案の概算を提案した。ざっくり、減築:新築=3:4(例えば、750万円と1000万円)。建築は壊すのもお金がかかり、新築するのとリフォームするのとほとんど変わらない場合もある。構造補強を真剣に検討するとほとんどの壁をとり去り、骨組みにして躯体の痛みを改修し、もう一度壁を張るという工程になる。そういうレベルまでやると新築と変わらないか、それ以上になることもあり得る。それでも残したい建物かどうかを依頼主に見極めてもらうことが必要だった。また、融資を受けて実施する場合、その融資が財産となるか否か。リフォームはやはり築30年のすまいを立派に改修しても一般的に不動産的財産価値は上がらない。それに比べて新築であれば25年の償却期間中は通貨的財産価値はある。なにか事情があり売却する場合は、リフォームでは「土地代のみ」、新築の場合は「土地代+建物分」。同じ融資額を受けていても大きな差が出る。おのずと結論は出た。
依頼主は小さくシンプルに暮らしてゆくことを望まれた。それにエネルギーロスの少ない暮らしを目指してプランを積み重ねていった。温暖化防止を真剣に考えなければならない。プランの工夫で少しでもエアコンを使わずに夏を暮らせないか。無駄にエネルギーを使うことなく暮らしを成立させられないか。この計画では、実際の開口部(窓)の大きさよりも大きな開口を窓の外側に配置しメガホン状の開口部としている。このことにより、微風でも蟻地獄的に風を集め、実際の窓の大きさよりも多くの風を絡め取ることを目論んだ。そのことにより、内部空間に常時微風が舞い、エアコンのない暮らしが成立させられないかという試みである。今までの建て主からも「やっぱりエアコンは必要ありませんでした」と言われることが多いが、さらなるバージョンアップの試みなのである。
記 2011.02.13 佐山 希人
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平塚。風の建築[No.54]PDF
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