110215-00.jpg

先週、神奈川県隣接の某温泉地へ現場調査に行きました。一月末、はじめてお逢いした建て主候補のWさんに現地を見て欲しいと依頼されました。その計画地は、温泉付き分譲地で終の棲家にどうぞとうたっている大型分譲地でした。もうすでに、ほぼ販売され尽くしているようで、かろうじて運良く購入できたとお話しされておりました。Wさんは、いずれ近い将来やってくるという東海地震の対策として免震あるいは制震構造を望まれていました。これまでの経験から、免震・制震構造が得意なS氏を構造設計者とし、現調はS氏と同行することにしました。

少し早めに到着し私だけで現地の下見をしました。海を望む眺望は抜けが良く気持ちの良い場所でした。北傾斜の斜面は25度程度あり、スキーに例えると中級者以上でなければ足がすくむような場所でもありました。その土地に至る道すがら、アクロバット飛行でもしているような住宅やスキーの滑降中のような住宅も見られ東海地震が来たらどうするのだろうと他人事ながら心配になりました。やがて、S氏と合流し現地踏査が始まりました。傾斜地の中に入り周到に見て回りました。すると計画地の中央部に間知石で土を止めているかなり古い工作物がありました。S氏がこの土地は昔谷戸だったと気付きました。私も同感で、両サイドの隣地はこの計画地よりも少し盛り上がっており隣地は「馬の背」状になっていました。Wさんは現地の営業マンは2〜3M掘ると地山が出てくるので地盤は問題ありませんと太鼓判を押していたとお話しされていました。しかし、事前に送ってもらった地盤調査書によると支持地盤まで6〜7Mあり、話が違うと感じていました。見る限り、隣地は馬の背状なので支持地盤までは深くなさそうです。Wさんの建築予定地だけが、旧谷戸ライン上であり支持地盤も深いのだとわかりました。構造設計者のSさんは。、谷戸に盛り土した土地は地震で崩落する危険性が大きいと言い、Wさんには買い換えるように進言した方がよいとの一点張りでした。

現場調査から3日後、私とS氏はWさんご夫婦に調査結果を率直にお伝えしました。『たまたまWさんが購入された場所が旧谷戸ライン上にあるので隣地よりも基礎形状と補強方法にコストがかかります。できれば、他の場所に計画した方が...』 調査結果を聞いてご夫婦で再度どうするかを検討するということで終わりました。翌日、S氏から連絡があり伝えておきたいことを言い忘れたので、Wさんに機会があったらお伝えくださいという電話でした。その内容は「中越地震の後、応急危険度判定士として新潟の高町団地に行き経験したことは、盛り土の土地は地震で崩落するということ。経験を持って断言できるので是非説明してください。」と。

私なりに少し高町団地のことを調べてみました。「中越地震 高町団地」と検索すると教訓がたくさんでてきました。谷埋め型の盛り土で、旧地盤の傾斜20度以上、深度5M以上では要警戒であるという記事もありました。まさにWさんの土地はこれに該当するのではないかと察しました。これから、宅地を購入される方は、できるだけ盛り土宅地は避けた方がよいと思われます。高町団地は宅地完成後30年近く経過しています。30年以上経っていても問題なかったから大丈夫という訳でもありません。S氏がさかんに盛り土は危険と言っていた意味がよくわかりました。


関連記事

<高町団地>長岡市東山沿いの山の頂上部を削って造成された、約30ヘクタール、541区画。1977年に県が 開発許可し、84年に完成。約1800人が住む。中越地震で外周道路4カ所が崩落するなど大きな地盤災害に見舞われ、一時は全世帯に避難勧告が発令され た。家屋の応急危険度判定で「危険」81戸、宅地の危険度判定で「危険」75宅地に及んだ。
新潟日報「中越地震」より引用

横浜市宅地造成規制法

毎日新聞  備える:地震被害/1 盛り土崩落恐れ、全国1000カ所



▼ コメント(4)

私のコメントばかりですいません(^_^; 、ほぼ地元なものですからつい…
高町団地では、中越地震時いくつかの家が土地ごと崩落しました。かなりショッキングな風景でした。高町団地に限らず、長岡駅から見て高町団地の方角の町の家は平地でも全壊が多かったと記憶しています。新幹線が脱線したのもその方です。M7の震源地である山古志村のある方角です。私の家の近くの国道でも、50年以上前に土を盛って作った部分が中越地震で十数メートルに渡って片側車線が崩落しました。すぐ近くを通る上越線もレールの下に敷いてある砂利とその下の盛り土が崩れ、レールが宙ぶらりんになりました。人間の作った土地は何年たっても固まるものではないんだなと感じました。

Bantouさん、何度でもコメントしてください。
なんどでもコメントはいるとうれしいです。

ところで、貴重なコメントコメントありがとうございました。
Bantouさんのところは実害はなかったのですか?
いずれくるくると言われている巨大地震。
自然の前にはなすすべはないのでしょうが、盛り土は避けるくらいはできそうです。
あるサイトでは、「過去の地震の教訓がまったく生かされていない」ということが書かれていました。
まさか自分のところには…という対岸の火事的な感覚があるのでしょう。
「人工の盛り土は避ける」教訓ですね。

ぺしゃんこになった家をみるにつけ、「日本はひろいのになんでこの場所に大地震が」というのが当時の心境でした。中越地震がくるまでははっきり言って他人事だったと思います。
震度6強と弱では大きな差があり、震度6強になると、盛った土でなくても、山の様々なところで地すべりが発生します。
大地震がくると上下水道がアウトになるので、こちらの様なド田舎はまだしも、都会ではトイレが大変だと思います。住民が避難して空き家を狙った「火事場泥棒」や、ボランティアを装った泥棒もでて治安も悪くなります。
私の家はなんとか住める状態でした。障子戸を閉めても上の方が1センチほどの隙間のある所もまだありますが(笑)。 中越地震でひびの入った壁をなおし、翌年の中越沖地震でまたひびが入りましたが、余り人目につかないところということでそのままにしてあります(笑)  中越地震以来、東京に行った時など、町を歩くと地震目線で見てしまい、「大地震来た時どうなるんだろう?」と思う街並みがあります。

Bantouさんも、かなり被害に遭われたのですね。
生きていて良かったですね。(笑・汗

今回私が遭遇したケースでは、いろいろな思いがあって選んだ土地であろうし、決めるときもいろいろなケースを想定して選んだのだろうと土地を買う側になっても考えました。
ですので、土地の条件は悪く基礎や地盤補強にコストがかかりますが建て主に「やるんだ!」という強い思いがあれば徹底的にきちんとした設計をしますよと伝えました。
が、マイナス面をきちんと受け止めていただいたので、再検討しますということになりました。

良かったのか悪かったのか。自問自答しています。
この結果は、巨大地震が来てはじめて出るのだとも思っています。

>「大地震来た時どうなるんだろう?」と思う街並みがあります。

同感です。

▼ コメントする

▼ サイト内検索                複数キーワードは半角スペースを挿入

             
   

▼ 記事へのコメント

過去のコメント一覧を見る