先週初め、イゼナの番頭さんである椎名さんと小一時間話をする機会があった。千葉北部に通勤し、近くに自宅を構える青年である。
イゼナとは、床下に水を蓄えて深夜電力を使って適正水温にし、その水の持つ蓄熱能力、温度伝達能力を活用した床暖房方式である。それは電気パネルや温水パネルを使ったヒートオンしているときのみ暖かい暖房方式ではなく、蓄熱体を体内に持ち冬期間通じて適正室内温度を余剰電力を使って保とうとするシステム。そこで生活する人にとって、体にも財布にもやさしい暖房システムだ。10年以上前から私はその思想を気に入っているので何度か採用している。予算の関係や思想に理解いただけなく不採用になったケースはあるものの、採用したすまいではいたって好評である。
そこの番頭さんが横須賀まで使用説明に行く機会があるので、是非当事務所に立ち寄りたいというので、ご案内した。その日は、薪ストーブを本格的に運転開始した日だった。今年は、2012年11月19日から薪ストーブ運転開始である。社交辞令的、業務連絡的な話が一通りすんだところでこの先我々はどういう方向に向かって設計していかなけばならないのかねと振ってみた。彼は大学で建築環境を設備的な視点で学んだある意味その道のプロだった。住んでいるところも千葉県北部、扱っているエネルギー源も電力、環境的な視点で仕事をしている。関東で2011.03.11を経験し、様々な問題を抱えつつ、いかんともしがたい現実と仕事の上でチャレンジしていかなければならない今後のあり方。重いテーマにゆっくりと会話を重ねた。「薪ストーブ暖かいですね」「エネルギー分散は今後考えるべき方向性でしょうね」と私。また、床下に蓄熱材として蓄えている水を有事の時に使えるようにバージョンアップしてゆきたいとも。復旧したときには、再稼働可能なようにバージョンアップするのだという。2011.03.11以降、見なければいけないことが確実に増えた。
彼の住んでいるところも、まだらに線量が高いところがあるらしい。そんな決して好条件とは言えない場所でローンが始まったばかりの重荷を背負って生きていくのだという。どこに行っても、被爆する可能性がある今の日本。腹をくくって生きてゆくのが良いか、今だからこそを大切にして動くのが良いのか。人それぞれであり、どれも正解はないのだと思う。動くか動かないか。どちらにしても、今後どのような方法を想定外の有事に備えていくか、それも建築をつくっていく側として何を考えて生きてゆくか。きちんとまっすぐ前を見なければならない。
テーマは幅広い
・地震で死なない
・津波を現実的なこととして
・放射性物質をとどめない
・エネルギー分散
・500mlのペットボトルひとつでつなげる命がある
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建築デザインのテーマとして重要であると背筋を伸ばさなければなるまい。
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