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2005.06.15、刈谷市の真空管オーディオ通信販売専門店「ザ・キット屋」さんに真空管アンプの比較試聴に行く。以前当サイトの『オーディオ熱復活!』でも紹介させてもらった店主大橋さんのお店だ。真空管プリアンプのグレードアップを1年以上も前からたくらんでいた。

現在私のジャズを浴びるシステムは、入り口から順に

ジャズ&オーディオが再燃した昨年当初、上記システムでスピーカーだけがタンノイ(スターリング)だった。パワーアンプが8W(片ch)だったこともあり、プリアンプのボリュームを11:30程度まであげると歪んでしまった。歪んでしまうほどボリュームを上げても、ジャズを浴びるには物足りない。そこであこがれのあのアルティックA7ならば、パワーアンプが8W/chでも高能率なのでジャズを浴びることができるのではと思い始めた。タイミング良く「ザ・キット屋」さんの店主日記でも、A7の良さがつづれられていた。(2004.05.04『A7+91Bの艶っぽさ』) いろいろな条件が重なり、いてもたってもいられなくなって、気がつくとネットオークションでアルティックA7を落札してしまっていた。

手に入れたA7は、828C(SPボックス),416-8B(ウーハー),511B(ホーン),802-8G(ドライバー),N-1201-8A(ネットワーク)。型番から探ると、1978年〜1980年に発売されたA7-Xのようだ。25年以上を経て、まだまだ現役バリバリのライオンが我が家にやってきた。うれしくなって大橋さんに「いいよ〜。SV-501SE(8W/ch)でもバッチリ、音浴びることできます!」とメールを送ってしまった。


kit3.JPGしばらくは、それで問題なくどっぷりとジャズを浴びていた。『夢は喰えば喰うほど大きくなる』とは、よく言ったもの。次はプリのバージョンアップへと道楽は泥沼に。


2004年9月、神田まで真空管オーディオフェアに出かけた。プリアンプSV-722のマッキントッシュタイプからマランツタイプへと切り替わった瞬間、『音際のシズル感』がぐっと高まったように感じた。サックスのすすり泣く、音ともいえないかすれた息づかいが手に取るように見えた。

2005年6月、再度神田まで「ザ・キット屋」さんの単独試聴会に出かけた。プリアンプSV-722マランツタイプ+SV310の組み合わせに変わったとたん、スタディオレコーディングのソースが、ライブ録音に変わったのかと思うくらいに、音の生々しさが一気に増加した。こうなると、やはりその真偽を確かめなければなるまい。6月いっぱいで「ザ・キット屋」さんに現存するアルティックA7がお嫁に行くという。できるだけこちらに近いシステムで、プリアンプだけを聞きくらべたい。それも、耳にたこができているお気に入りのソースで。今週初めに、ぽっかりと時間が取れることになり大橋さんに無理やりお願いして押しかけることが決まった。決戦は、2時間一本勝負。


事前にメールでこちらの主旨をお伝えしておいた。

【試聴コンセプト】
ライブの雰囲気を自分の部屋に
(現状ではなんとなく霧がかかったような感じ)

【ソース別のチェックピンポイント】(すべてアナログ盤)

●ソース1:Village Vanguard Vol.2 / ザ・グレイト・ジャズ・トリオ (A-1)

・クラブの雰囲気が一番出ている機種はどれか
・ファースト・テーマ途中の『ダッダッ・ダッダッ』のスピード感と力強さが一番出ている機種はどれか
・テーマが終わり、ウォーキングベースが始まったとき一番ベースの音が締まっている機種はどれか
・ピアノソロ途中の、シンバルが一番ビビッドな機種はどれか
・ピアノソロ途中の、ドラムの『カン!』というバスタムのリムをたたく音が一番リアルな機種はどれか
・ベースソロ途中の、バスドラが一番艶めかしい機種はどれか
・ドラムソロ2コーラス目、バスタムのリムをたたく音が一番リアルな機種はどれか

●ソース2:Star Dust / ライオネル・ハンプトン(A-1)

・モノラル盤にもかかわらず、ライブの雰囲気を一番出す機種はどれか
・ベースソロで、奏者の追従する声が一番聞き取りやすい機種はどれか
・ヴィブラフォンソロで、ヴィブラフォンの音が耳に痛くない機種はどれか
・ヴィブラフォンソロ途中の『エ゛ヘヘ』が一番いやらしく聞こえる機種はどれか
・ヴィブラフォンソロ途中からのバックサポートが一番、暖かく(優しく)感じる機種はどれか
・ステージの床を足でリズムをとる様子が一番自然に聞こえる機種はどれか

●ソース3:ブランデンブルグ協奏曲(5番第1) / コレギウム・アウレウム

・弦楽器低音部隊の奥行き感が一番感じられる機種はどれか
・同じ音量で、高音が一番うるさくない機種はどれか
・チェンバロソロが始まった時、低音部が一番すっきり聞こえる機種はどれか
・チェンバロソロが終わる時、先行する弦楽器低音部隊の音が明瞭に締まって聞こえる機種はどれか

※この主旨で自分の耳を頼りに見極めたいので、SV-722(マランツタイプ、マッキンタイプ)SV-310の3機種を私に隠して試聴させていただければ幸いです。


結論は、大橋さんが2005.06.15の店主日記で的確に表現されているので割愛する。
試聴室で私がメモした感想は以下のとおり。
(断っておきますが、これはあくまでも私感ということで。)

ソース1:プリ(1)

  • 全体に甘いけど、低音が出ているような
  • チェックピンポイントは可もなく不可もなく

ソース1:プリ(2)

  • 音が(1)に比べてクリアになったような
  • ピアノが前にでてきたか?
  • ピアノの左手がわかる
  • シャープになるが低音が出ていないような
  • チェックピンポイントの『スピード感』が出た
  • チェックピンポイントのドラムの『カン!』がいい

ソース1:プリ(3)

  • 音の粒子がプリ(1)、(2)に比べ格段と大きくなったように感じる
  • 低音が出ている
  • バスドラの存在感がある
  • 拍手の音が生々しい
  • プリ(2)に比べて全体的にしまりが足りないような
  • チェックピンポイントは全体的に好き。中でも、シンバルがヴィヴィッド

ソース2:プリ(4)(プリ4って何?と思いつつ試聴。試聴機種は3機種だったはず)

  • 音の粒が大きく、ライブ会場にぐいっ!と引きずり込まれる感じ(好感)
  • 奏者の熱気がぐんぐん伝わる
  • チェックピンポイントのヴィヴラフォンが痛くない
  • チェックピンポイントの『エ゛ヘヘ』に奥行きがでた
  • チェックピンポイントのベースソロの声が少し聞き取りにくい
  • ひとことで言うと『ソウルフル』
  • 曲が終わる前に『美味しいですねえ』と大橋さんに声をかけてしまった

※プリを確認すると、SV-722(マッキンフォノ)→RecOut→SV-310とのこと。

ソース2:プリ(5)

※プリはSV-722(マランツフォノ)→RecOut→SV-310と事前にわかった上で試聴

  • やはり、音の粒が大きい
  • しかし、俄然、解像度が上がる
  • 会場の雰囲気が良く出ているが良い意味で理性的(熱くない)
  • チェックピンポイントの『エ゛ヘヘ』がとてもいやらしく艶めかしい
  • ひとことで言うと『熱きインテリジェンス』
  • 聞き終わる前にトータルプリシステムの値段が頭をよぎる(笑)

※この日の試聴システム
 DL103(カートリッジ)→『試聴プリ』→SV-501SE(パワーアンプ)→earlyA7

※プリ(1)〜SV-722(マッキン)
 プリ(2)〜SV-722(マランツ)
 プリ(3)〜SV-722(マッキンフォノ)→RecOut→SV-310(→SV-501SEへ)
 プリ(4)〜SV-722(マッキンフォノ)→RecOut→SV-310(→SV-501SEへ)
 プリ(5)〜SV-722(マランツフォノ)→RecOut→SV-310(→SV-501SEへ)


kit2.JPG


試聴が終わり、大橋さんにオーディオって死ぬまでの楽しみですから、焦らなくても良いと思いますよと心を見透かされる。(笑)この時点で、試聴開始から約1時間経過。ほぼ、方針は見えたので、残りのソースは聞くのを中止。真空管はまったくの素人なので、日頃の疑問をぶつける。的確に答えてくれる。(すべて、目から鱗状態)

  • Q:今日のプリの違いは?
  • A:プリそのものの違いと言うより、フォノEQの違いが一番大きく支配しているね。一番ゲインが大きいから。
  • A:SV-722のREC OUTから音を出して、トランスを挟むと(4)(5)に近くなるよ。


  • Q:真空管のエージングって、どうするんですか?
  • A:整流管アンプの場合は整流管を抜いて電源を立ち上げておけばヒータのエージングが出来ます。ダイオード整流のアンプの場合は小音量で20時間〜30時間ならし運転をすると良いでしょう


  • Q:SV-310を使わずに、SV-722(マランツ)で音の重心を下げる方法は?
  • A:12AX7をムラードのCV4004に変えるとぐっと重心が下がるよ。
  • Q:それって、一本いくらくらいの玉ですか?
  • A:相場的には1.5万円くらいです。(げっ!)
  • Q:何本必要ですか?
  • A:6本(げげっ!)
  • A:フォノだけなら3本ですけどね


試聴もさることながら、話の内容すべてが興味深くとても良い体験。残り時間も少なくなり、プッシュプルのパワーアンプを聞かせてもらう。感想は、全体的に音の余裕が出て、奥行き感が増したような感じ。しかし、ドラムが少し湿ったように聞こえ、SV-501SEの乾いたドラムの方が好きだと感じる。(ほっ、と胸をなで下ろす(笑))予定時間が終了し、後ろ髪を引かれつつ、しっかり段ボールひとつを後部座席に乗せてもらい大橋さんと握手をして別れた。


kit1.JPG追加資料:「ザ・キット屋」さん試聴室空間メモ
●奥行き×間口×天井高さ=5.6M×4.5M×2.7M
●内部表面積=104.94M2
●吸音部面積=94.26M2(オーディオラック以外はすべて吸音効果のある素材)
●吸音率=89.82%

※単純な良否は言及できないが少々デッド気味。ちなみにオーディオルームの吸音率はクラシックで17%、ジャズで28%が聞きやすいとされている。(石井伸一郎さんの簡略理論) この試聴室、純粋に機器を単純比較するには良いのかもしれない。はたして、我が家のライブハウスでは、持ち帰ったプリがどのように聞こえるか。キットを組み立て、エージングした後、またレポートしたいと思う。

試聴に使ったソース

B000056UXNアット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード Vol.2
ザ・グレイト・ジャズ・トリオ(p/ハンクジョーンズ、b/ロン・カーター、dr/トニー・ウィリアムス
ユニバーサルクラシック 2003-04-23

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B00008KKTGスターダスト
ライオネル・ハンプトン ウィリー・スミス チャーリー・シェイヴァース スラム・スチュワート
ユニバーサルクラシック 2003-04-23

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▼ コメント(2)

ぬお〜すごいシステムだ!w
ぜひとも、コルトレーンのインプレッションを聞きたいものです。
コルトレーンとエリックドルフィーが狂って吹いてるのを聞きたい^^
最近すっかり大人しくなってアートペッパー熱が再開したと思ったら、ウェスに移って、結局落ち着いたのは、NJQ(ニューヨークジャズカルテット)なんです。(あんまり知られていないかも
ローランドハナ(p)、フランクウェス(sax)のカップリングです。
よかったら、今度もっていきますw

我がライブハウスへ、ソース持参で是非!
アナログどころでは、ジミヘン、グランドファンク、リトルフィート、パブロクルーズ、トム・ウエィツなんてのもお待ちしております。(爆)

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