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建築設計(特にすまいの設計)を本業としている私が何故、趣味のことをつらつらと書くのかといえば、何を考えているのかをライフスタイルを通じて理解頂ければとの思いからである。デザインを本業としているから毎日デザインのことばかり考えているかといえばそうではない。しかし、くうねるあそぶ+仕事全般は建築デザインの視点に立脚し思考していることは間違いない。この記事はそんな私のあそびごとの一部を切りとって、私のライフスタイルを暴露してしまおうという試みなのである。


SV-9Tの製作は2005.09.12午後〜09.13明け方にかけて行われた。

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このSV-9Tという真空管アンプは小粒ながらかなりの実力を備えた役者だ。はじめて音を聴いたのは、今年の春。このアンプキットを企画・販売している『ザ・キット屋』さんのデモンストレーション会場。プリアンプを物色するために神田のデモ会場に出かけた。30人ほど入る会場の最後列で、いろいろな組み合わせを幾通りとなく聴いていた。一瞬『ん?』と私の耳をつかんだのがこのSV-9Tだった。その音は、試聴している人々の頭をするりとすり抜け芯のあるさわやかな音を最後尾まで軽々と伝えたのだ。浸透力のあるクリアな音というか。一緒に鎮座している9Tよりも高額なパワーアンプではなく小さな9Tがとても印象に残ったのだ。


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次の出会いは決定的だった。「Mac用にアルティック403Aを仕込む」にも書いたように、乗鞍のペンションの中で鳴っている音が庭にも芯を持って漂い出てきていたのだからおそれいった。その音を聴いてからは、いつかはきっとと心の中に芽生えていった。建築空間も一緒で、人それぞれ感覚や好みは異なるものの『ん?』とか『えっ!』と思わせる空間はチカラがあるモノである。理屈ではない部分で人を惹きつけるチカラがみなぎっている。


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その音のチカラの相棒(アルティックのヴィンテージスピーカー403A)は運良く私と出会い米松の箱に入れられて9Tを待っていた。余談だが、この30年ほど前のアルティックの403Aなるスピーカーもかなりの実力者。しかし、1975年当時の定価は6700円/本。高額だから良いというモノではないといういい見本。今では、中古ながらオークションで1万円/ペア〜3万円/ペアで取引されている。私はこのあたりに惚れている。建築の世界でも銘木や値段が張るから良いといった素材の選び方はもう古い。自分らしく暮らせるならば世間体は気にしない。家族にフィットする本物の素材が一番良いのだ。


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【製作のポイント】
私の場合、製作をはじめたら出来るだけ集中力が切れないうちに作り上げたいと思っている。そのためには、梱包を開けたらまず各パーツ、種類と数量を全て確認する。部品がないと気づいたらそこから先には進めないからだ。また、パーツを一度頭にタタキ入れておくことは製作開始してからスムースに進めるために肝要だ。


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昨日、都内に仕事の都合もあり神田で開催されていた『真空管オーディオフェア』をのぞいた。心なしか昨年よりもにぎわっているように感じた。秋葉原界隈をうろついているAボーイに比べて、年齢層はかなり高い。40代〜70代。私のように子供の頃かじっていて最近火がついた人も多いのかもしれない。『キット屋(サンバレー)』さんのブースを覗くと「素人でもつくれますか?」「マニュアル通りにつくれば大丈夫ですよ!」といったやりとりが聞こえてきた。ものをつくるのが好きで、根気と情熱があれば制覇出来ると思う。しかしながら、好きじゃないとできないことは確か。


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【製作のポイント】
やはり、マニュアルはしっかり読むことが大切。思いこまないこと。ゆっくり確実に。私は右の写真の真空管ソケットを裏側から挿入してしまった。指定のボルトナットではどうにも短い。試行錯誤していて、ふとマニュアルに目をやると表側から装着しボルトナットで締めることに気がつく。やれやれ。ゆっくり確実に。丁寧に書かれたマニュアルは丁寧に読み込むべし。


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このSV-9Tの名前の起源は「キュート」にあるという。完成品の小さな姿からは想像出来ないほどの配線が内蔵に詰まっている。左の写真はまだまだ序の口で、乗鞍のペンションオーナーが言っていた「もう二度とつくりたくないよ9T」と笑っていた顔がふとよぎる。たしかに、小さな躯体。太い指では最後までたどり着けるかどうか。この9Tはプリント基板を使っていない。プリント基板はいたって簡単にハンダ付けが出来る。しかし、全て手配線はかなり骨が折れるが完成した時の達成感は全く次元が違う。越えなければならないハードルが高ければ高いほど、完成したときの喜びは大きいのだ。これはものづくりの基本。建築も全く同じ。


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私は機能美が本来の美しい姿だと信じている。人間が造り出すものの形は本来の機能を発揮するためにデザインされているべきだ。自然界はそのシンプルな原理原則ですべてがデザインされている。無駄などかけらもない。特に動物植物は、全て生きるための必然の姿としてデザインされている。


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真空管アンプの魅力ってなんだろう。考えてみた。本来の目的である音を増幅するということに関しては、電気に関しては全く無知な私に語る資格はないだろう。また、30年ほどオーディオを中断していた門前の小僧である私が言及することでもない。しかし、その魅力はなんだろう。単純に音だけのことをさらりと言うと人の声を中心とした帯域の音が生々しくきこえること。機械が出す音ではなくまるでそこにいるかのようなというか。


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私なりの視点では「真空管を換えると音が変わる」ということ。私はこのことに食いついたようだ。(オーディオ熱復活に書いている)トランジスタのアンプでは体験出来ない楽しみがあるのだ。時間と経験を重ねていくことで、自分好みの音を探っていく。趣味の世界では、時間を楽しむという視点がある。建築デザインの上でも、「経年変化が美しく」を心がけている。熟していく姿を美しくしたいとデザインする。ガーデニングも種を植えて、肥料をやり、水をやる。時間を楽しむ世界だ。真空管も時間を楽しむ世界がそこにある。手にしたときが一番性能が良いのではなく手塩にかけて自分の音にしていく。そんな楽しみ方ができるのが真空管アンプなのだ。ましてや、キットで製作したとなるとある意味楽しみの変数がぐっと増すのも事実。


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次なる魅力は真空管の中の灯り。これは薪ストーブに通ずるとても魅力的なもの。すまいの照明は白熱灯が良い。縄文時代からホンの100年くらい前まで夜の食事と日中の慰労は焚き火が担当。薪ストーブや囲炉裏の炎、真空管の赤い灯り。縄文時代の焚き火と同じ。あのガラスの中で何故音楽が増幅されるのか、電気音痴にはすこぶる不思議。理屈はわからなくても赤い灯りを見ていると思いはつきない。


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【製作のポイント】
コンデンサーのビタミンQ。足の長さをあまり短くしない方がよい。上記の写真では躯体に平行につけていたのだが、その後の配線&ハンダを実行すると自然と左の写真のように斜めになる。あまり短くしてしまうとビタミンQ以降の仕事がやりにくい。それと、裏蓋側から出る配線は、写真のように裏蓋、本体ともに裏返して作業出来るように長さを決めると後々仕事がしやすい。完成後、中を見るときも大変重宝する。


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【製作のポイント】
マニュアルにあるとおり各部の電圧をチェックする。チェック後、問題がなかったので真空管を挿入してスイッチオン。今回は、今まで4台ほどつくってきたおかげか、一発で成功。めでたしめでたしと相成った。しかし、完成後しばらくしてスピーカーをつなぎ換える際、プラス側とマイナス側がわからなくなってしまった。この本体にはどこにも表示がない。マニュアルがあればすぐにわかるだろうが、しまい込んでしまった場合は裏蓋をはずすことになる。上記の写真にあるように下がマイナス上がプラス。覚えておいてもすぐに忘れてしまう。


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通電、音だしと問題が無かったので、もう一度開腹。美しくきちんと整理するために各配線をまとめる。うちのばあちゃんは昔よく言っていた。いつ死んでも良いように、つぎはぎだらけのぼろは着てても清潔な下着を着けておくように。見えないところに神経を使うのは、一番のおしゃれだ。見てくれだけがよくたって中がぐちゃぐちゃじゃ。粋じゃない。見えないところに神経を使うのは建築も同じ。見えるところはシンプルにかつ機能美が一番粋。


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Macのとなりに並ぶ面々。一番奥が、5年連れ添ったBoseMM-2(先月北海道に嫁つぐ)。右はMac専用の真空管プリアンプTU-875。真ん中が、今回製作SV-9T。左が昨年春製作SV-501SE。SV-9Tはアルティック403A+Mac専任と思っていたのだが、さすが実力者。A7の担当もしっかりこなし、現在はA7とMacを行ったり来たり。滑らかに音場が広がる300Bシングルと中低域をぐりぐり制動する9Tのプッシュプル。A7でその時欲しい音に合わせて9Tが移動。この9T、実は大変な人気者らしくサブシステムとして愛している方が多いらしい。キット屋倶楽部でも、かなりの方が所有しているのがわかる。また、2005年09月29日(木曜日)の店主日記では売り上げが突出しているとも。やはり、価格と実力がうれしいミスマッチをしているからなのか。


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インターネットに通じている方ならば、最近ソースに困ることはないと実感しているはず。私のお気に入りは、iTuneのネットラジオ。それも「Forever Cool」。一日中、BGMにふさわしいJazzが流れている。昔、オーディオ少年だった頃は毎月のお小遣いと相談しながらレコードを仕入れていたのだが、今では毎日無料でJazzやクラシックをききながす。この貴重な現代ソースをほおっておく手はないのだ。


製作後、一ヶ月ほど経ってやっと9Tの居場所が落ち着いた。Mac(iTune)→オーディオインターフェイスケーブル(USB→ピンケーブル)→真空管プリアンプTU-875→真空管パワーアンプSV-9T→アルティック403Aで仕事場のBGMを担当。やはり当初の目的通りの配置に納まった。
天井にセットされた自作のアルティックオリジナルサイズ復元ボックスからは、常に心地よい音楽が流れている。BGMなので音量はかなり控えめ。音量を絞っても、まるでそこで演奏しているかのような生々しさはまったく衰えない。このシステムは、当分の間、仕事場のBGMとしての座は揺るがないだろう。

現時点での、SV-501とSV-9TのA7での比較。
501はスピーカーの外にまでふわっと広がるゆったりとした音場形成が得意。
9Tはぎゅっと音を凝縮しぐりぐりとスピーカーを制動する。
両者はけっして足して二で割っても良い結果は生まれないだろう。
それくらい違うよい性格をそれぞれに持っていると感じている。
BGMとしては501の方が得意かもしれない。さわやかに軽々とと言う意味では。
両雄とも、これから先、長く音の友として私の傍らにいることは間違いないだろう。

▼ コメント(14)

う〜ん。。。。うなっちゃいますねぇ。
真空管オーディオってやっぱいいよなぁ。腹にずんとくる音がいい。
なんだか、肉体を貫通していく力を感じますね。
早くNJQのレコードもっていかないとなぁ〜(くそ〜ぜんぜん暇がね〜><
といっても、goronさんも忙しいだろうから、いけそうな時間ができたら連絡しますね。そんときには、またよろしくです〜

>肉体を貫通していく力

このあたりの感覚は薪ストーブと一緒ですね。薪ストーブは遠赤外線が皮膚を貫通して分子をふるわせてからだを暖めるんですよ。単なる熱が皮膚に温度を加えるのではないんですよ。
もしかして、真空管もあのあかい火が音にチカラを与えるんですかねえ。でも、音そのものはスピーカーから出てくるんだけど。(笑
なんともいえないチカラがありますね。真空管からの音。
時間が取れたら、またレコード持ってきて下さい。

近いうちに行こうとおもってます。
しかし、真空管の力は、本当に計り知れない。
メサブギーというギターアンプの真空管ものはもう、手に入らないけど、一番よい暖まり方をしているときの音といったら、これはもう最高の代物でした。
あんなアンプをひとつほしいなぁ〜
思いっきりならしてみたいものです。
おいらの、フェンダーがストレートのケーブルだけでどこまで鳴ってくれるのかが聞いてみたい。
銀座山野とか、渋谷YAMAHAにはもしかしたら中古品で出回ってる情報くらい持ってるかも知れないなぁ〜
あと、イギリスのクラウンというメーカーのアンプ。
オレンジもあったな。

うちのオーディオ専科300Bプッシュプルの出力トランスはフェンダー社の出力トランスを巻いていたアメリカのトランスメーカー製なんですよ。
もう今はありませんが。
これが濃い音!貴重品で手放せません。こんな音の真空管アンプはもう専科にもありませんです。

塾長さん、KOBAさん、こんにちわ。
最近、ハードオフに行くとマーシャルのギターアンプがおいているお店が多いですねえ。私もバンドやってた頃には憧れたギターアンプです。まだ、エフェクトなんかがあまり無い頃、ジミーペイジがアンプの前に行ってぎゅい〜〜〜んとハウらせたりしてるのかなあなんて雑誌の写真を見て想像していました。
今でも、ギターアンプは真空管が良い味出しているようですねえ。

ん〜〜ん。楽器やりたくなってきた。やるんならウッドベースやりたいです。そしたら、アンプいらないですね。(爆

ジミー繋がりでジミヘン ビデオを見ると大きなPASPの前でギュイ?ンやっていましたネ
もうオーディオうんぬんを超えた魂の叫び!

マイルスはジミヘンとプロジェクトをやる予定だったそうですね。もうすこしで実現というときに、ジミヘンが逝ってしまったみたいです。
どんな感じになったのかなあ。

ビッチェズブリューをもっとくだけた感じにしたような でしょうか。
今日はマグネパンにスペクトラル、マイクロメガといったハイエンド
をお使いの方が東京から来られました。
思いの外WE JBLがよく鳴って、501SEも気に入っておられたようです。

 ごろんさん ゆうじです。SV9Tの記事興味深く拝見させていただきました。やはり、何か一筋通っているような気がします。真空管のあの赤い灯火なんとも言えない情緒があります。今、真空官CDに苦戦していますが、SV9Tやプリ、さらにはパワーアンプまで進んでいきたいと思っています。とにかく、私も音楽が大好きです。

ゆうじさん、こんにちわ。話が全然違いますが、黒佐藤ってそちらでも手に入りにくいんでしょうか。私も音楽好きですが、お酒も大好きなのです。

ごろんさん 返事が遅れてすみません。ほとんど無理かなというところです。市内には2軒販売するところがありますが、毎日顔を出さないと手にはいらないようです。
白は、たまたま加世田市に良く行く(月1回程度)酒店でみつけました。ただ、噂によりますと、県外用には「佐藤の黒」、県内用には「黒さつま」として売っているようです。
鹿児島の山形屋デパートに突然店頭に並べられることがあるようですが、いかんせん、職場が離れているので寄れない状態です。
ちなみに、真空管のCDがやっと完成しました。

>県内用には「黒さつま」

貴重な情報ありがとうございます!

真空管のCDPはどうですか?私もCDはそれで聞いております。
粉っぽくないような……。気のせいでしょうけど。(笑

あの真空管の灯りのせいでしょうか、デジタルで聞くよりも本当に良く聞こえます。耳のせいでしょうか。・・・・
黒さつまですが、酒店のお兄さんに聞いたら製造過程は同じ???
どういうこと。私も薩摩半島の鹿児島市ですが、森伊蔵、村尾、魔王とかお店で、見ることはありません。どういう訳かネットではたくさん出ているようですが。西酒造の「宝山」系なら種類によっては、手に入り安くなりました。また、伊佐美が抱き併せて3本程度で販売されていることはありますよ。最も私は、ほとんど自宅では飲みません。おつきあいで飲みます。

>耳のせいでしょうか。・・・・
耳のせいですね。耳が良いからだと(笑

実は、黒佐藤、白佐藤、森伊蔵、村尾、魔王どれも飲んだことあるんです。
福岡の住宅を設計しているときに、建て主のお客さんが打ち合わせで行くと必ずいろんな焼酎を飲ませてくれました。それ以来、ずっと芋なんです。その時は、芋の旨さがよくわからず、いろんなブランドを飲ませてもらってたんですが、もったいないことをしました。
そのお客さんは、自分で発売日や抽選日に蔵元にいって購入すると言ってました。そのかたもそうとうに好きな方でした。

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