「よし!家を建てよう」と思うきっかけは人それぞれである。私の場合10年ほど前にさかのぼるが、いずれ老いる両親の面倒を見なければならず、故郷を捨てた私を頼りに上京してきているので、近い将来住むところくらいは確保しなければというのがきっかけのひとつだった。それと、家賃を払い続けるよりはいずれ資産になる方がお金の使い方としては良いのではないか。前者は目的を果たしているが、後者はどうなるかわからない。

ごくごく一般的なきっかけで最も多いのは、子育て期にある御家族の場合は集合住宅での上下隣人との音の問題。気兼ねしないで子どもをのびのび育てたいということ。集合住宅(マンションやアパート)の場合、分譲ではそこそこ考慮されているが、賃貸では経済効率優先なので音の問題は解決されていない場合が多い。回転率が高くなるので大家に有利という設計か。
次には、子育てが終わり家族構成の変化に対応して生活をプログラムしなおす際、住まいもそれに合わせて建て替えようというケース。その後の生活を積極的にとらえていくケースだ。

私のところに設計相談あるいは設計依頼いただける方々のお話しを聞いているとそれらに加えて特徴的なことがいくつかある。私の指向性なので当然といえば当然だが。
ひとつは、「木をつかった住まいにしたい」ということ。最近では木に見えるイミテーション『木(もく)』が多い。狂わない・手入れが簡単・安いということなし。のようにみえる。が、生きている木の持つ本来の姿はそこにない。本来の姿とは育った年月以上に建材になっても生き続ける姿である。年月と共に色を変え味を変え家族のプロセスを刻み込む生き物としての姿だ。ニセ者はキズをつければベニアが出てくるか、見にくく正体がばれるだけである。建材になってからも人間の一生よりももっと長生きする木が大好きではあるが、デザイン的には「演歌くさく」ならないようにしなければならない。こびるようなくねった銘木は気持ち悪いだけだ。
次に、「エネルギーを最小限に夏涼しく、冬あたたかい家にしたい」ということ。それが直接的な家を建てるきっかけになることは少ないが、どうせ建てるのならそうしたいという方が多い。この先、化石エネルギーがどんどんなくなり、自然エネルギーあるいは再生可能なエネルギーに頼らざるをえない時代に向けて最小単位の『家』でできることを模索していく必要があろう。大切なテーマだ。

昨日、昨年一昨年お引き渡しした2件の住まいを見学させてもらった。これから住まいを計画される二組の御家族と一緒におじゃまさせてもらったのだ。葉山でも朝の気温は氷点下となった寒い日だったが、計画通り陽が差すと太陽光のダイレクトゲイン(直接熱取得)が効いていた。午後遅くおじゃました横浜の住まいでは1階の室内気温が22℃になっており、2階ではさらに温度が上がり暑いくらいだった。設備による温度操作は簡単だがコストがかかる。太陽光のありがたみを再認識した。その住まいは建て替える前、冬の朝は室内気温は一桁だったという。それに比べて今はずいぶん楽になったと大正生まれのお父さんも喜んでくれている。以前、まだ独立して設計実績数も少なかった頃、『おおおばあちゃんが目の黒いうちはこのままで良いと言っているんだけど・・』という相談があって寒い冬にそのお宅におじゃました。寒いが見るとすぐに建て替えしなくてはならないこともないと思った。見る限りハードとしての形態は保っていたように見えた。OMソーラーに興味を持っていた熟年夫婦。もう少し私のカンがはたらいていれば、おおおばあちゃんを説得してもらいたかったのかもしれない。今は建て替える労力よりもそれを上まわる冬の暖かさを手に入れてもらえる自信と実績があるので説得出来たかもしれない。年老いてから寒い冬は応えるだろうに。そんなことを思いながら横浜をあとにした。

▼ コメント(2)

大正生まれのお父さんの娘です。
建て替え前に比べて、ずいぶんどころか、すごく
楽になったと申しております。
こんなに幸せで申し訳ないと、感謝してもしきれないほど
毎日が幸せだそうです。

去年、突然悪化した膝痛は今のところ出ていません。
一時止めていた卓球もまた行き始めました。

寒い時はどうしてもたくさん着こんで、背中丸めて
身体を固くして動かなくなりますが、今の家では
そういうこともないので、身体が楽なんだと思います。

秋から初冬にかけて少しでていた結露も今はありません。

妹も我が家に来ると、のんびりした気分になれて
とても癒されるそうです。

新しい家での初めての冬を快適に過ごしています。

膝痛、今年は出ていませんか!それは何よりうれしいです。
春呼も寒くなると股関節が痛いようですが、暖かいとそうでもないみたいです。やっぱり冷えるのは骨身に応えるのでしょうかね。
卓球復活出来て良かったです。いつまでも口も身体も達者なお父さんでいて欲しいです。

結露はないようで良かったですが、昨日湿度計を見ると25%くらいでしたのでちょっと乾燥気味かもしれませんね。お風呂にお湯を張って様子を見るのも手ですね。ビジネスホテルのように。うちは薪ストーブに寸胴をおいて適度に湿気を出しているので、常に40%くらいをキープしています。

>新しい家での初めての冬を快適に過ごしています。
「こんな言葉を聞けるのでこの仕事はやめられないです」とおとうさんにお伝え下さい。ありがとうございました。いろいろと。

▼ コメントする

▼ サイト内検索                複数キーワードは半角スペースを挿入

             
   

▼ 記事へのコメント

過去のコメント一覧を見る