060224_header.jpg

昨夜長いトンネルを抜け「中庭のある家」の実施設計が終わる。工事契約も無事に済み、心地よい疲労感からさっさと寝てしまう。その甲斐があってか早朝のトリノ五輪女子フィギュアに酔えた。荒川静香さんの金メダルは無欲の金だと瞬時に感じた。奇をてらうことなく美しく淡々と無心で滑っていると感じた。よどみなく流れるように踊る彼女の演技は美しいなあと見入ってしまった。するとなんと金メダル。手でわし掴みにいってとれるものではないのだなと痛感。


060224-2.jpg

日本の金メダルの余韻そのままに渋谷に向かう。私の好きな建築家・北山恒がデザインした映画館で、こけら落としの「マイ・アーキテクト」にありつく。道玄坂に入ったところで車をパーキングに沈め、歩く。円山町、湯気が立つようなカップルを尻目に足早に。ほどなく素っ気ない抑制のきいたファサードが出現。どこだろうかと思ったとたんあらわれた。サインがなくても彼の建築だとわかる。映画館のコンセプトはよく知らないが、ライフスタイルを提案しているらしい。どんと口を開いたその先にある入り口の軒下は2.2M。低い。映画を日常に。がコンセプトならば正解だ。敷居を低くするのが大切だ。入り口の軒先を低くすると敷居も低くなる。それにしても、平日の朝10:10映画を観るというのはなんともいえない贅沢だ。


060224.jpg

「マイ・アーキテクト」は建築家ルイス・カーンの映画。マニアックなものだ。突き抜ける建築家とはなんともわがままなものかと溜息。この映画はカーンが愛人に生ませた息子が撮っている。その息子がおやじってどんな奴だったんだろうという思いでつくられている。彼がこの世に生を受けたとき、カーンは母に「おまえも(みごもったの)か」といったという。彼には腹違いの兄弟があと二人。なんとも女にはだらしない建築家だったのか。それとも、すべてにおいて本質を突き詰めたのか。人間って面白くも悲しいものだと。73才、駅のトイレで死んでいたらしい。


060224-3.jpg

モーニング・ショーを終え表参道に向かう。カーナビにはある設計事務所をインプット。今月末から自分で設計した事務所兼住宅に引っ越すらしい。表参道ヒルズ、マイセンが目的なのだがどっちも混んでいたので、抑制のきいた新築事務所の前を通り過ぎ江東区へ向かう。ベルギー在住の日本人アーティストの個展に向かう。マイセンがダメだったので、以前このブログにコメントをもらった「とんかついもや」に。てんぷらいもやと同じ本質を極めた抑制のきいた店舗。ファサード&店内、デザインは全く同じ。メニューも単品。とんかつかヒレのみ。余計なものは一切ない。うまいとんかつを安くたっぷり食べてもらうにはこれが最善だろう。メニューを増やすとロスが大きくなる。それは価格にはね返る。単品勝負の店の鉄則だ。ラーメン屋はうまいラーメン一品あればよい。350円で。


060224-4.jpg

江東区のギャラリーは倉庫街にある。倉庫の一角をギャラリーにしているのだ。環境的にはおしゃれではないが本質を観るにはいい。街そのものがちゃらちゃらしていると作品もなんとなく浮かれて見えてくる。シブヤや青山よりも本音が息づく街だ。倉庫街は流通の裏方。気負う必要が全くない。淡々と日々の業務をこなしていく素直なエネルギーを感じる。倉庫5階のギャラリーをさっくりのぞく。テーマは「ヌード」。あの背中はカミさんの友人「しずか」ちゃんかと思い玄関を出た。正面はコンクリート工場。正直で奇をてらわない素直な機能美の建築があった。しばしみとれる。工場建築は私の大好物。こびない機能だけに突出した建築はいさぎよい。

早朝から「こびずに本質を見つめる」ことの大切さをエネルギーとしてもらうことができたいい一日だった。

▼ コメント(2)

実施設計完成おめでとうございます!
やりとげた後の爽やかさに、すがすがしい物をたくさん見れてよかったですね。
円山町の新しい映画館とは、移動したユーロスペースですか?

ありがとうございます!とりあえず、一区切りです。
映画館はQ-AXというところです。
http://www.q-ax.com/
浜野安宏プロデュースです。
レイトショーもあるのでいかがですか。面白かったです。

▼ コメントする

▼ サイト内検索                複数キーワードは半角スペースを挿入

             
   

▼ 記事へのコメント