■ ハイブリッドであるべきだ

FMから流れてくるロックに耳が止まった。なんというか、懐かしく、反逆の香り、勢いの良さ、民族音楽的な味付け、70年代の臭い。気になっていた。タイトルは「カントリー・ガール」だとわかる。調べるとプライマル・スクリームというバンド。２０年以上続けているロックバンドらしい。なぜか、曲調にそそられる。ローリングストーンズが若返ったようなこぎみよさとどろくささが同居。古ければよいと言うものでもない。正当派であることと時代性が必要条件だろう。懐かしいだけでは意味がない。

■　Primal Scream／Country Girl

■　Riot City Blues
	プライマル・スクリーム

最近、住宅デザインの狂乱ぶりに疑問を感じる。しっとりと落ち着いた街並みというよりは博覧会に近い。どこにデザインの根源があるのだろう。地域固有の空気はどこへ行ったのだろう。地方へ行くと開発から逃れた街の空気には個性を感じることが多い。特に農村・漁村の風景には独特の雰囲気がある。列車に乗ると独特の風景から都市部の駅に近づくと個性が無くなる。そして、駅を離れるとまた地域特有の風景が広がる。都市デザインはほとんど似たり寄ったり。都市近郊部では田舎であっても新住民が流入、あるいはハウスメーカーが強いところは地域特有の個性が失われてゆく。

かつての葉山は漁村農村という歴史に別荘文化が加わった。戦前、現在ほど建材の流通が発達していなかったこともあり外国人建築家が設計する別荘も周囲の家屋になじんでいた。材料が葉山で手に入るものを中心に構成されていたからだ。おそらく意識的に街の空気を壊さないといった建築家暗黙のルールもあったのではないか。

以前、私がここで書いた建築家吉田五十八のコメントがもう一度ひっかかる。

昭和１２年３月１３日、報知新聞に掲載の「吉田五十八の言葉」 「いったい日本の建築というものは、日本人の国民性やら気候、風土、生活の様式やらその他到底限られた言葉などでは表現しきれない複雑なあらゆる条件に従って、二千年、三千年の経験が次第に発達させてきた技術、様式なんだ。それが近年いかに新しい文明を取り入れて、従って新しい建築の手法が紹介されたからと言いって、直ぐ気候も風土も住む人の気質も違う日本に向くかどうか、大いに疑問ではあるまいか。大いに研究する必要はあろうが、ともかく日本の建築が三千年の経験の所産ならば、研究するといったって所詮徹底的にできるかどうかは疑問だ。」 「一例をあげるならば、近年の新しい建築には塗料を施したものがはなはだ少なくない。ところが、日本にもうるしがあり丹がありその他いくらも固有の塗料がありながら、三千年来白木の家に住んでいる。もし、塗料を施した家が近年の生活にふさわしそうだと思うならば、この事実をもういっぺん慎重に検討してみるのが本当であるまいか。」 『建築家、吉田五十八』砂川幸雄著より

プライマル・スクリームがシンプルなロックンロールの楽しさ、こぎみよさ、勢いを感じさせてくれたように、建築にも本来のチカラがあるはずだ。一瞬、その群を見たときに「ああ、葉山だ」とホッとするような個を造っていきたい。それは、単なる懐古趣味ではなく、光と風にあふれた都市住宅とのハイブリッドをめざすことでもある。