今夏竣工、Sさんの現場での出来事。

「白い家にしたい。木がいっぱいの家は好きではありません。このような家は好きではないのです。(と、自邸に案内したときに言われた言葉がとても印象的だった。)」という建て主から。「白い家。には白い壁と白い木があっていいのです。白い家=木がない。のではないのです」と。私はとても落胆。それは1年以上もお付き合いしてきて、そんな根本的なことが理解できていなかったのか。設計者は建て主の用心棒。すまいをつくる上で絶対に失敗させませんよ。と豪語してきた自分が情けなくなった。

私は設計者の自分を前面に押し出すよりは、建て主の意向を最大限引き出すタイプ。(反論があれば大歓迎!)私は、Sさんの求める方向性を充分に理解していたはず。そうでなければ設計料をいただけない。私の趣味嗜好でデザインしてはいけないと思っている。にもかかわらず、私の判断にNGが出てしまった。建具は空間全体になじませて白いモノをデザインしていた。それが最終段階で建て主の意向と異なっていたらしい。困惑した。困惑している理由もお話しさせてもらった。その過程で、ラワン材の話が出た。私はラワン材は使いたくない。狂いにくい、素直。とても便利な材料で、高度成長期からずいぶん使われてきた。50年前からベニアといったらラワンベニアだった。しかし、そんな便利な材料なので商社はどんどん輸入した。仕入れ元は東南アジアだ。日本でのラワン材消費は東南アジアを枯れさせた。目がつんでいて狂いが少ないということは、数十年年月かけて木が育ってきたということ。簡単には再生できないのだ。だから商社の餌食にされているラワンではなく、再生速度が速い針葉樹を使いたいと思う。もちろん、そんなことは建て主にいちいち説明しない。なぜならば、建て主にとって本質ではないからだ。建て主は一生に2回から3回くらいしかすまいを造らない。私は年に5回くらいすまいを造っている。おそらく私が死ぬまで150件くらい。造る側のモラルなのだ。それは建て主に強要しない。強要しないがラワンは使わない。だから、ラワン材は現場にいれない。...なのだ...。

白い家の解釈違いのSさんから、「そういうポリシーを聞きたかったんです」と。とてもうれしかった。しかし、本質ではない。その意味は私の中に内在していることであり、それを前面にだすと「健康住宅です!」みたいに詐欺っぽくなるからやりたくない。あくまでも、私一個人の建築家としては、建て主の用心棒でありたいし、それを喜んでくれる建て主とともにすまいを造っていきたい。けっして「私はラワン材を使いません!」をスローガンにしたくない。しかし、使わない。これが、私なりのやり方なのかもしれない。

で、結局木がいっぱい見えてくる白いすまいになりそう。私自身の方向転換が少し遅かったのかもしれない。Sさんが住み始めて喜んでくれることを祈っているだけだ。少し、私の頭が固くなり始めていることを危惧しなければなるまい。

▼ コメント(4)

築45年の家住んでいます。サッシはラワンの木製サッシですが、経年変化で隙間だらけでしたので、アルミサッシと樹脂のサッシに変えました。ラワンの希少価値からすると早まってしまったのでしょうか?

高亀さま。コメントありがとうございます。
大丈夫です。早まってはいませんよ。
ラワン材は希少価値と言うよりも、今後は使わない道を選択しましょうということなのです。
今では、建材として伐ったあとは植林もしていくというのがモラルですが、かつては伐りっぱなしで山を痛めていくだけでしたので。

こんにちは。久しぶりにラワン材という名を耳にし検索してこちらのサイトを読みました。
築25年愛知県在住。キッチンハウスのキッチンに収まる包丁刺しの木の部分が磨り減り、同じものが作れないか・・・とお願いしたら、今はラワンがないので代わりにチーク材でどうかと言われ、懐かしいなあ、昔はよく耳にしたわ。当時、東南アジアの森林伐採の問題はよく耳にしていましたがラワン材の事だったのですね。今年一年は子どもも成長し家の修理の年ですが、メーカーが交換ですねって言っていた物も大工さんがどんどん直してくれています。修理して使えるのに買い替えや交換なんてもったいない・・・って。手間もかかるし儲けにもならないから業者はやりたがらないのでしょうが、我が家を直してくださっている人はあれこれと知恵を絞って直して下さっています。

すずさま。コメントありがとうございます。
良い方々にめぐまれて良かったですね。
手を入れながら長く使うは基本です。

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