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土地を探すところからお手伝いすることがある。今も数家族の方々から相談されている。できるだけ、私見は避けて、プロから見た客観的なアドバイスをするように心がけている。日当たり、湿気、風のながれ、塩害、地盤、近隣、アクセス、臭い、音、高圧線、都市計画、近隣の将来計画、坪単価、天候による変化、まわりの住民...。チェック項目は限りない。全てに高得点がつく物件は当たり前だが、良い値になる。どの条件に絞り込み、他は割り切るか。この塩梅が肝心。しかし、それは私の役目ではない。あくまでも、建て主御家族の判断だ。プロとしては、悪い点があればしっかり伝える。それでも良しとして割り切ることができれば問題ない。土地との縁組み成立である。

私自身を振り返ってみると、やはり同じ。今から15年ほど前。葉山に越してきた頃。ローンの返済が毎月の家賃と同じ程度で借金ができることを前提に土地探しをはじめた。結果3年かかった。条件は優先順位の高い順に「海が見える」「普通の人は買わない(ということは安い。プラン次第でどうにでもなるので)」「両親との2世帯住居に耐えること」この3点を基準に探しまくった。知り合いの不動産屋に片っ端から声を掛ける。情報の間口は広いほどよい。分譲地のすみっこに変形土地があれば開発業者に問い合わせる。自分で住みたい場所に更地があれば、持ち主を調べ手紙を送る。できることは何でもやった。ある日、新聞に「海一望(しかし、車は入りません)」とのオリコミ。早速、不動産屋さんに問い合わせ現地を見る。畑だ。畑に立つと海が見えた。そばの山を登る。2階レベル、3階レベルとヘビが出そうな山を一心不乱に登る。確かに海一望だった。もう心は決まった。相棒に意見を求めるとそれまで候補に挙がってきた数々の土地よりも現実的だと言う。車は入らないとオリコミにあったが、軽トラは入ると確信。その足で、不動産屋に500万値引きの指し値をする。2〜3日経って帰ってきた返事は「地主は400万の値引きならオッケーだと言っている」。即断した。3年もかかってあれやこれやで探してきた土地だったが、あっけなく3日ほどで縁組み成立。そんなものだろう。土地との出会いは「縁」によるところが大きい。先に葉山で家を建てた知り合いに聞くと「もう3年くらい前から売りに出ていたよ」という。その頃出逢っていたならば、地主も指し値に応じなかったかもしれない。しびれを切らしていたタイミングに私と出会ったのだ。その友人、「へええ。こんなに良い景色だったんだ。私もここにすれば良かった」と真顔。

土地探しはあせってもしょうがない。いろいろ時期的な条件はあるが、タイミングである。本当に「縁」がある土地は、土地の方からすり寄ってくるもの。それを待つしかないのだ。「果報は寝て待て」である。


●2006.11.03(金)

終日、土地探しのお手伝い。午前中、建て主がコンタクトを取っていた不動産屋と一緒に数物件見て歩く。帯に短し、タスキに長し。私が今まで探したことのない価格帯だったので、知らない物件がぞろぞろ出てくる。そのなかに私が紹介しようとしていた土地があったので同行の担当者にそれとなく伝える。私は土地探しのお手伝いをしても、手数料、キックバック、袖の下なんかをもらうわけではないので、様子を見る。その担当者が一生懸命お客様のためにやってくれるのであればそれはそれで良いのだ。戻ると御殿場の業者から見積もりが届いていた。基本設計図面を送ってから一ヶ月なしのつぶて。やっと来た見積もりは「この仕事はやりたくありません」とあぶり出ていた。ふざけるな!と言いたくなるくらい高いのだ。建て主に伝えると納得。その条件付き土地をキャンセルするという。正解。

●2006.11.04(土)

新品のチャイルドシートに赤子を乗せ母子ともに退院。おそるおそるハンドルを握る。手に汗を握るとはこのこと。途中で軽トラに乗り換え、我が家に無事到着。これから私ももう一皮むけてがんばらねば。先日、新聞で日本が人口減少に転じはじめたとあった。「人口から読む日本の歴史」が紹介されていた。早速、amazonにひとっ走りしてもらう。まだ、読み始めたばかりだが、日本は過去1万年ほどの間に2度人口減少したことがあるらしい。今回は3度目。それぞれ、社会システムに大きな原因があるという。その時期とすまいのあり方に相関関係があるかどうかを調べてみたい。今の向かわなければならないすまいの方向のヒントが見つかるかもしれないからだ。病院に迎えに行く直前、病院前に「ヤングいこいの場」を発見。その看板の下では老婆がイスに座っていた。子供は地域で育てていた時代に生まれた人だろう。核家族の現代、もう一度見直さなければならない社会システム。時間のない両親だけではなく、時間のある人が地域でよってたかって子供を見ていく。大切な成熟期の社会システムではなかろうか。

●2006.11.05(日)

打ち合わせ2件。新築に関するアンケートをヒアリング。コミュニケーションが始まったばかりなので、ご希望をひととおり聞くだけではなかなか真意がつかめない。アンケートの内容を手がかりにひとつひとつお話しを聞く。何故、私とお見合いをしたかったのか。すまいに対する思いの重点はどこらへんにあるのか。じっくりお聞きする。少しだけ建て主に近づく。夕方、リフォームを希望されているお宅に向かう。家にあがるとゴールデンレトリバーがいた。吠えるので、手を口に持って行き、私のズボンを嗅がせる。バーニーズの春呼の臭いがするはずだ。落ち着く。戻ると御殿場から「キャンセルした」とメール。工務店は簡単に了承したという。やはり、やりたくなかったのだ。がつんと抗議したかったけどこれにて一件落着。建て主も喜んでいる。これでいいのだ。

●2006.11.06(月)

なかなかテンションが下がらない。岡山から義母が応援にくる。これで、少しは仕事に没頭できるか。先日、一緒に土地を見た不動産屋の担当者から封書が届く。中を見ると、先週金曜日に見た土地の詳細資料が入っている。送り状に「プランを作成してください」とある。建て主に確認すると、頼んだ覚えはないと。どうやら営業マンの先走りらしい。「怒」。具体的に検討したいと伝えたならまだわかる。もう一押しするためにプランをつくって具体的にイメージして欲しいとのこと。一生懸命なのはわかるが、相手の心理をくみ取るのも営業の重要な仕事。先を急ぎすぎる担当者に抗議。これも営利が絡まない用心棒としての仕事。さんざん、電話でディベート。最後には理解してもらうが、営業のやり方が悪い。あれだとお客さんが怖がってしまうだろうに。

●2006.11.07(火)

役場にもろもろの手続き。戸籍係に行くと福祉課と連動していて、いろいろな手続きが一気に片づく。それにしても、以前よりサービスが行き届くようになっただろうか。対応がすこぶる良い。もらった書類のなかに「葉山町ではチャイルドシートを貸し出しています」とある。もっと、早く知っていれば良かった。無料でレンタルできて、不要になるまで更新できるらしい。大きな企業のない葉山は行政サービスに大きな期待はしていなかった。しかし、まんざらそうでもないらしい。もう少し、町を活用することに期待しても良さそうだ。

●2006.11.08(水)

葉山堀内の現場にて。3層吹き抜けに面した窓の掃除について検討。2階までの吹き抜けであれば最悪ハシゴで上がれば手が届く。年に1回ダスキンに来てもらって掃除をしてもらうでも良い。しかし、3層目の窓はダスキンでも困るだろう。キャットウォークを検討。家の中に光を取り込むためのハイサイドライト。光を遮らないようにキャットウォークは最小限にしたい。(あっ。そういえば、手が届かない場所であれば汚れることもあまりないのか...。建て主はたばこも吸わないし...。5年に1回くらいダスキンに決死の覚悟でやってもらえば良いのかもしれない...。)次の打ち合わせで建て主に相談してみよう。なんとも、光を遮る物はつけたくないのだ。悩ましい。

●2006.11.09(木)

前回書いた英国製深夜電力利用蓄熱式暖房機クレダ故障の顛末を読んで、さらに2件のお客様からSOSのメール。一件は同じくダイヤルが操作不能。一件は機器そのものが作動しないらしい。早速手配する。我が家のクレダは大丈夫らしい。やはりモノによって当たりはずれがあるのだろうか。今回も使い方の問題でなければ、無償修理を断固として主張予定。古民家移築の大概算をある工務店に依頼。場所が北関東なので、OMソーラーネットワークをたぐりメールで依頼。快く相談に乗ってくれた。うまく流れていくと良いのだが。

●2006.11.10(金)

以前、私のブログを読んで自作スピーカーの寸法を教えて欲しいというメールがあった。アルティック403A用のやつ。やっと組み上げるまでできましたとメールがきた。で、吸音材は何を使っていますかという問い合わせ。私はサーモウールを使っている。サーモウールはちょっと高いがロックウールやグラスウールと違って、大工さんに優しい。ちくちくしないのだ。なので、大工さんもしっかり隅々まで入れることができて施工性が良い。結果、断熱性能も良くなるという寸法だ。吸音性能はどうかわからないが、前にペンションでオーディオ合宿をやったときにそこのオーナーが造っているスピーカーにサーモウールが使われていた。私はそれを真似しているに過ぎない。吸音性能は、断熱材の重さに比例している。そういう視点では、セルロースファイバーに軍配が上がるが古新聞を砕いてスピーカーに入れるわけにはいかない。私は軟式テニスボールも中に入れている。良い感じで低音をしめてくれると信じている。

●2006.11.11(土)

葉山一色の現場で打ち合わせ。板塀と植栽計画の最終打ち合わせ。植栽を植えるのにだれかいい人知りませんかというので私の父を紹介。元プロ。某巨大コンツェルン迎賓館の庭師を永年勤め上げてきた。今は職業ガーディナーはやっていないが現役バリバリ。自分の家のまわりを毎日毎日せっせといじっている。たまあにこちらが仕事を依頼すると喜んで引き受けてくれる。人件費はシルバー人材センターと同じ8000円/日。今回の仕事は二日で終わるという。材料費込みで17000円。激安。長生きして欲しいものだ。私にすまいの設計を依頼すると激安でガーディナーがついてきます。

●2006.11.12(日)

そろそろ、寒さが感じられてきた。薪ストーブを焚こうかどうか迷う。ヘタに焚くと熱くて仕方がない。去年は、11/14頃だったように記憶。まだ、もう少し待つことにする。そういえば、春に焚かなくなって以来、掃除をしていなかった。ストーブ庫内は焚かなくなってからそのまんま。見ると灰がたまっていた。うちはシングル煙突なので1年で煙突にススがたまる。1階レベルで外に煙突を出しているので掃除は簡単だ。外に出て、掃除口をあけ、下からがんがん煙突を叩く。すると、がさがさとススが落ちてくる。ひとしきり叩いて落ちてこなくなれば終了。あとは室内部分の煙突のススを取り、庫内を掃除して終了。ざっと、1〜2時間。2重煙突を使っていれば、ほとんど掃除をしなくても大丈夫。2〜3年に1回、ブラシを使って内部をこするだけで良い。そろそろ、掃除をしなくては。

●2006.11.13(月)

岡山の義母が帰る間際まで仕事をしてくれた。ロジェールのコンロを磨きながら、「こういうモノはやはり10年が寿命かな」と。そうですねえと言いながら、我が家も10年経っていたことに気づく。このコンロは薄さが決め手で採用した。4つ口で、3cmの厚さ。6年ほどで着火しなくなったが、チャッカマン利用で生きながらえている。手の込んだ造りになっていないので、10年経っても現役バリバリだ。「いいホーローじゃなあ」と言い残し、義母は岡山に帰っていった。そういえば、10年で工務店の瑕疵保証期間が切れる。切れる前にいろいろと点検してもらおうと思っていた。まあ、何かあるとすっ飛んできてくれる監督なので今後も大丈夫だろう。私も10年と言わず、私が設計したお客さんに何かあればすっ飛んでいくように心がけなければならない。その積み重ねが安心感を造り上げるのだ。私の家を造ってくれた監督さんはそういう人だ。

▼ コメント(3)

お久しぶりです。
こちらに来て、蒔ストーブは特別なものじゃなくなりました。

1000円/坪 とかいう話はゴロゴロしているのですが?(笑)
更地も空き地もいっぱいあるし、減反やら人手不足やら
高齢やらで手に余して眠っている田んぼもいっぱい。
住む者もおらずどんどん劣化していくけれど、壊すのにもお金がかかるから
仕方なくたまに手を入れてただ残しているボロ家。
みなホントは手放したいのに、先祖代々守られてきた土地を
自分の代で無くすのは世間体もプライドも許さない・・・。
ありそでなさそな田舎の土地との出会い。果報は寝て待て?

っていうかさるこはんっ!ままままさか!そうでしたのん?
おめでとうございます??
水臭いは?くねくね。

そっちは本格的だから、薪ストーブだけでは大変かもしれませんね。
主暖房はしっかり別の物を入れておいて、薪ストーブはサブシステムにした方が、日々快適かもしれません。

果報は寝て待て。もあるし、積極的に動くのもあり。
ここなら住んでも良いかなあと思う場所は地主さんに相談してみると結構話が進むかも。
それも土地が呼んでいることなのかもしれませんねえ。

GOOD LUCK!

mieさん、こんにちは
今年は携帯薪ストーブは使えそうにないです。
そうなんですの、産んじゃったんですよ〜
10/29に、人間♀「さくら」を産みました。
無事産まれるまではなかなかおおっぴらにできなくてね〜
そのうちご挨拶に伺いますわ。今後ともよろしくね〜

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